国選弁護に制限、「預貯金50万円以上なら私選を」

http://www.asahi.com/national/update/0728/TKY200607270747.html
http://megalodon.jp/?url=http://www.asahi.com/national/update/0728/TKY200607270747.html&date=20060728080042

 資力の乏しい容疑者に国が弁護人をつける「国選弁護」制度で、
法務省は「資力」の基準額を50万円にする方針を固めた。
現金や預貯金の合計が50万円以上になる場合、国選ではなく、
まずは私選弁護人を弁護士会に選任してもらうよう
申し出ることが本人に義務づけられる。関係者からは
「基準額が低く、制度からこぼれ落ちる人が多くなる」と
懸念する声もあがっている。


 容疑者国選弁護制度は、10月2日から施行される。
殺人や強盗など重い罪にあたる事件の容疑者が対象で、
3年後には窃盗、詐欺などにも拡大される。


 これまで国選弁護人がつくのは、起訴後の被告だけだった。
本人が「貧困その他」にあたると申告すれば、保有資産などを
問われずに、ほぼそのまま国選弁護を受けられた。
「資産のあるものは私選弁護人を依頼すべきだ」との意見が
あったため、04年の刑事訴訟法改正で容疑者国選弁護制度が
導入された際、資力を申告する制度も盛り込まれた。
50万円の新基準は今後、容疑者、被告ともに適用される。


 新制度では、国選弁護を求める容疑者は、
留置場や拘置所などで「資力申告書」に自分の資産を記載。
申告書を受け取った裁判所は、日本司法支援センターに
国選弁護人の指名を求め、選任する。資産が50万円を
超えた場合は私選弁護人と契約交渉するが、それができないと、
改めて国選弁護人の選任手続きに入る。


 資産の範囲について法務省は、手持ちの現金や預金のほか
小切手、郵便貯金などに限り、不動産や貴金属などは含めない意向。
虚偽申告すれば10万円以下の過料になる。


 基準額50万円の設定について、法務省は(1)平均世帯の
1カ月の必要生計費は約25万円(2)刑事事件を受任した
私選弁護人の平均着手金は約25万円――としたうえで、
「50万円以上あれば、私選弁護人に着手金を払ったうえで
ひとまず生活できる」と説明している。


 04年に全国の地裁で刑事裁判が終わった被告のうち
国選弁護人がついたのは約6万1000人。全体の約75%だった。
これらの人がどれだけの資産を持っていたのか、法務省
日本司法支援センターには資料がなく、「50万円」の新基準が
国選弁護の対象者の増減に、どう影響するのかは分からないという。


 国選弁護に詳しい関係者は「現行制度で国選弁護の
対象になった人が新制度では救われない例も出るのではないか。
格差社会が進み、なけなしの預貯金をはたいてしまえば
後の生活にも困る。扉は広く開けるべきだ」と語る。

これは問題ありですね。
現状の国選弁護人制度がいびつでない、といえば
ウソになりますが、それにしてもこれはひどい
まずは基準金額の50万円という額。

「50万円以上あれば、私選弁護人に着手金を払ったうえで
ひとまず生活できる」

とはいうものの、
着手金だけでは弁護士は雇い通せませんし、
一ヶ月で終わらない裁判も多いため「ひとまず生活できる」かどうかも疑わしいところ。


裁判というものは、訴えられる側に選択権はありません。
ある日突然、「お前は訴えられたから、近々裁判所に呼ぶぞ」といわれる。
どんな言いがかりで起こされた裁判でも、50万円以上持っていれば
自腹切って裁判に対応せよ、というのは暴論と言ってもいい気がします。
本来ならば、「言いがかりで訴えた」事実を訴えればいいのですが、
確か、訴訟の萎縮化を防ぐために、日本でその行為は禁じられていたはず。
そういう点を大いに考慮しなければならない気がします。


「資産が50万円を超えた場合は私選弁護人と契約交渉するが、
それができないと、改めて国選弁護人の選任手続きに入る。 」
という含みのある表現に期待するしかなさそうですが、
どうなることやら。いずれにせよ、問題点の多い制度変更である気がします。