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■佐藤泰子展 (2016年10月31日~11月5日、札幌)

2016年11月05日 01時01分11秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 札幌のベテラン画家、佐藤泰子さんは2009年、札幌時計台ギャラリーで2階の全3室を用いた大規模な回顧展を開き、1961年以降の作品を展示した。
 今回の個展は、その続編に当たるもので、2009年ごろから最新作まで36点を展示している。
 前回の回顧展で展示されていた油彩は一点もなくなり、すべてがパステル画だ。
 ただし、一般的な「パステル画」という語から連想させる画風とは異なり、重なり合った色と色が堅牢なマチエールを見せる抽象画となっている。



 「天空に舞うさくらさくら B」「天空に舞うさくらさくら C」

 ちなみに、冒頭画像のいちばん左は 「つり上げられるさくら finish」。

 佐藤泰子さんの絵画を、たとえば「豊かな詩情」というような文学的な修辞でわかってしまうようなふりはいけないのだと思う。
 そこには、何よりも造形の言語と哲学が働いているはずなのだ。
 にもかかわらず、その底には詩情が感じられる。それは避けようがない。
 これまで何度も書いてきたが、彼女の絵は、光を見た後で閉じたまぶたの裏側に見える茫漠たる斑点に似ている。
 移ろっていく、漠たる光の斑点は、元をただせば、画家が目撃した桜の木だったり、肉親の姿だったり、具体的なもののはずだ。
 それが抽象化に伴い、個別性が取り払われ、光の洪水のなかで普遍性を獲得していく。

 だから、彼女の絵の前に立ち、ふっとよみがえる記憶やわき上がってくる感情があるのだとしたら、それは普遍性を持ちながらも、同時に個人個人に特有のものでもあるのだ。そういう共通性に根ざす絵画の世界。それこそが、すぐれた抽象画のもたらすものではないだろうか。


「天空に舞うさくらさくら B」「天空に舞うさくらさくら C」

 「ヤナイさん、もうあたし、80歳よ。ここもなくなっちゃうし、寂しいね。天井が高くて、何点か飾れば映える、そんなギャラリー、中心部にできないかしら。ヤナイさん、つくってよ」
 そう言って、佐藤泰子さんは笑っていた。


 比較的新しい作品はB室に並んでいたので、これまで紹介した画像もB室のもの。

 最後に、A室に展示された、M120号を2枚つなげた大作「さくらさくらfinish」をアップしておく。

 ふいの閃きのような世界がそこに広がっている。





2016年10月31日(月)~11月5日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー (中央区北1西3)




関連ファイルへのリンク
佐藤泰子展―小品 愛しきものたち (2014)
【告知】佐藤泰子展 finish さくらさくら 波立つ (2013)
【告知】佐藤泰子展 finishさくらさくら 海へ“旅立つ” (2011年5月)

佐藤泰子自選展 ■続き (2009年5月)
自由美術北海道グループ展(2008年7月)
自由美術/北海道グループ展(2007年)
佐藤泰子さくらさくら展(2006年)
佐藤泰子展(2005年)

佐藤泰子展(2003年)
自由美術北海道展(2003年)
佐藤泰子展 さくらさくら(2002年)
自由美術北海道展(2001年)=画像なし


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