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■第18回グループ環 展 (2017年6月6日~11日、札幌)

2017年06月11日 09時09分55秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 地域や会派を超えたベテラン具象画家による「グループ かん」展も今年で18回目を迎えます。
 今回から安達久美子さん(道展会員)が加わり計21人。これは、グループ環の歴史でも最多と思われます。女性4人は、間違いなく最多です(スタート当初は全員男性だった)。

 なお11日午後2時からギャラリートークが行われます。

 毎年のように書いていることですが、「考えさせられる現代アート」や「とっぴな作品」も筆者は好きですが、こういう「誰が見てもわかる絵画」というのも大事にしたいと思います。また、穏当な写実だけでなくて、いろいろな画風の絵が並んでいて、見比べる楽しさもあります。


 21人もいるので、足早に紹介させていただきます。
 画像に大小がありますが、順番も含めて、あまり深い意味はありません。

 また、特に記していない場合以外は油彩です。

 まず、冒頭画像の右端(手前)は猪狩肇基さんの「釣り人がいる」(F20)と「休息のとき」(F50)。
 猪狩さんは、白っぽい色調と、カンバスに筆を走らせるというよりも置いていくという技法のようで、やわらかな調子の画面を生みだしています。
 「休息のとき」のように、多くの人が画面に描かれている絵が多い作者だと思います。

 猪狩さんは1941年(昭和16年)樺太出身。道教大卒。札幌在住。道展会員。


 左は枝広健二さんの「雨のテラス」(左、F50)と「秋の日に」(F30)。
 枝広さんというと、ある情景の中の人物画が道展では多いという印象が筆者にはあるのですが、「雨のテラス」はめずらしく人物がいません。
 とはいえ、手前のテーブルといすには、雨が降りだすまでは誰かがすわっていたような気配がただよいます。
 ぬれて鈍く光りつつ木々を反射するテラス、そして雨にけぶる遠くの木立など、湿った大気の感じがよくつたわってきます。

 枝広さんは1947年岩見沢出身・在住。道展会員。



 雪解けのころの風景画をよくする池上啓一さんの「丘陵への道」(左)と「遠望・恵庭岳」。いずれもF30で、つながっている風景のようですが、別々に額装されています。
 左の絵の左下から、右の絵に向かって、斜めに走る線は崖でしょうか。画面をうまく引き締めており、右側の絵の下側から左の絵へと視線を奥に導く道路と、Xの形になって構図を安定させています。
 右の絵の山々の向こうには、題名のとおり、恵庭岳がぽこんと顔を出しています。前景の木々と、視線を往還させると、この絵のもつ豊かな奥行きが堪能できます。
 また池上さんはふだんから、差し色として紫を効果的に加えますが、今回は木立などあちこちに、ふんだんに紫が配され、そこだけは一般的な写実とは異なる不思議な雰囲気をかもし出しています。

 池上さんは1936年(昭和11年)樺太知取出身。札幌在住。道展会員。一水会でも会員でしたが2001年に退会。


 右端は、先日おなじ会場で個展を開いていた安達久美子さんの「夏」(F50)。
 森の中を流れる川の水面をいかに描写するかというところに、画家の眼目というか、こだわりを感じます。
 ほかに「川床」(F30)も出品。

 安達さんは札幌出身・在住。道展では昨年会員に推挙されました。一水会会友。


 そのおとなりは、藤井高志さんの「ラ・セーヌ」「ピエロの想い」。いずれもF20。
 藤井さんは、全道展の実力派メンバーでつくるグループ「櫂」の一員でもあり、「ラ・セーヌ」は、櫂の仲間たちとパリに旅した際の取材作と思います。
 たしかな描写力もさることながら、バックの白い処理が堅牢です。

 藤井さんは1953年、空知管内浦臼町(当時は浦臼村)晩生内おそ き ない出身、北広島在住。
 グループ環では唯一の全道展会員。蒼騎会会員。


 手前は佐藤順一さんの「漁船」(左)と「滞船」。いずれもF30。
 粘り気のある描写は、いかにも小樽派というおもむきですが、今回は両者とも早朝かあるいは夕暮れ時にスケッチしているのか、色合いがオレンジを帯びているのが特徴です。
 「漁船」のほうは、明暗も比較的くっきりと強調されています。

 佐藤順一さんは1931年(昭和6年)、後志管内岩内町生まれ。現在は札幌在住、道展会員。


 佐藤光子さんの「春の画室」(F50)は、イーゼルに据えた大きなカンバスに向かい合う女性がモチーフ。
 左側の窓から入るおだやかな光やゆれるカーテン、窓辺に置かれたチューリップといった道具立てが春を感じさせます。
 その右は「カフェのヒト」(F30)。

 佐藤光子さんはオホーツク管内興部町出身。北広島在住。新道展会員。


 となりは合田典史さんの「夏の終わりに」(F50)と「残雪」(F30)。
 大きな川でしょうか。中景に水が描かれて、明澄な色彩ともども、広がりのある気持ちのよい絵です。

 合田さんは1951年札幌出身・在住。新道展会員。


 左側は、岩佐淑子さんの「黙視」(F30、左)と「記憶の中」(P40)。水彩です。
 ひざをかかえて座る横向きの裸婦と、背中をこちらに向けて横たわる裸の人物(男性?)、そして石膏の頭部像や、シーツからにょきっと生える黒い手など、ふしぎな光景です。

 岩佐さんはオホーツク管内訓子府町出身。石狩在住。新道展会員。

 そのとなりは、昨年は不出品だった西澤宏生さん。
 いずれも「森」という題で、F30とF50です。
 ビリジヤンと青の背景に、裸婦が描かれていますが、いわゆる写実からますますはなれているようです。

 西澤さんは1933年(昭和8年)札幌出身・在住。新道展会員。


 右端に見える2点は、香取正人さんの「踏切」(F40)と「石狩浜・冬」(同)。 
 写実でありながらも、筆の運びにスピード感があり、ますます自在さ、闊達さを増しているようです。
 とりわけ「石狩浜・冬」は、単なる雪野原にさまざまな色が配されて、ユニークな一枚になっています。

 香取さんは1936年(昭和11年)札幌出身・在住。新道展会員。グループ環には、第1回から参加しています。


 コーナーの2点は、中村哲泰さん。いずれも「とどまることのない生命」と題されたF30号で、油絵の具とアクリル絵の具を併用しています。
 現実の風景というよりも、野に咲く花の数々を束ねて構成した絵で、草花の生命力を感じさせます。うまく形容できないのですが、きれいごとではない「生」の力というようなものに迫っています。

 中村さんは1940年(昭和15年)恵庭出身・在住。新道展と一水会の会員。


 右は水彩画家、小堀清純さんの「人形のある静物」(F25)。
 もう1点、「イタリア壺のある静物」(F40)を出品しています。これは、先ごろさいとうギャラリーで開かれたばかりの白日会北海道支部展に出品された「タイプライターのある静物」と同様、手前に斜めに物を配することで、画面奥への動きを導き出そうと試みています。
 小堀さんは1943年(昭和18年)夕張市真谷地出身、札幌在住。白日会会員、道彩会会員。


 左は平原郁子さん「冬の旅 それから」(F40)。
 平原さんも水彩です。
 青系の色で平坦に塗られた葉の描写は、なんだかステンシルのようで、おもしろい効果をあげています。
 もう1点、「さいた さいた」(F30)も出品。

 平原さんは樺太出身、石狩在住。新道展会員。


 そのとなりは中吉功さんの「雪舞うころ 八剣山」「山ふところへ 八剣山」。いずれもF30。
 ますます全体が青みを帯びて心象風景のようになっていますが、中吉さんは従来、都市や港をモチーフにすることがほとんどで、山はめずらしいと思います。
 八剣山は、札幌市南区にあり、比較的手軽に登山ができる山で、国道230号からよく見えるので親しまれています。最大の特徴である山頂のギザギザを、本来の土色でなく、青で描いてしまうあたりが、中吉さんらしいです。

 中吉さんは1933年(昭和8年)小樽出身、札幌在住。道展会員。
 香取さんと同様、グループ環には第1回から参加しています。


 右手は青野昌勝さんの「斜里岳(斜里町豊里)」(F30)と「コムケ湖(オホーツク紋別)」(F50)で、いずれもオホーツク地方の風景が画題です。
 コムケ湖は沿岸にある湖で、とりたててアクセントになるものがなく絵にしづらいと思うのですが、そういう茫漠とした風景にあえて挑んで、広大な感じを出そうとするのが青野さんらしいと思います。この絵は、緑のさまざまな諧調が帯のように描かれているのが特徴です。

 青野さんは1938年(昭和13年)根室出身。釧路を経て小中高は室蘭育ち。札幌在住で、道展会員。


 最後は北山寛一さんの「アッシジ風景」(F50)と「広場」(F30)。
 落ち着いた色調とたしかな描写力でイタリアの風景を描いています。

 北山さんは1947年、石狩管内新篠津村出身。現在は札幌在住。全道展会員でしたが現在は退会。道南の団体公募展、赤光社しゃっこうしゃの会員。


2017年6月6日(火)~11日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階)


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