地球に似た7つの惑星の間を微生物が移動?

パンスペルミア説の可能性を科学者が計算、トラピスト1惑星系

2017.03.27
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惑星トラピスト1fの表面からの眺めの想像図。(ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECH)
惑星トラピスト1fの表面からの眺めの想像図。(ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECH)
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 地球外生命が見つかったら、科学に革命が起こるだろう。それが、1つの恒星のまわりを回る2つ(もしかしたら7つ)の惑星で見つかったとしたら、どんな騒ぎになるだろう?

 地球から約39光年の距離にある恒星トラピスト1の惑星系は、そんな可能性を秘めている。最新の研究によると、7つの惑星は主星のまわりに密集しているため、「生命の種」はその間を容易に跳ね回ることができるという。(参考記事:「【解説】地球に似た7惑星を発見、生命に理想的」

 この研究は、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのマナスビ・リンガム氏とエイブラハム・ローブ氏が3月15日付けで科学サイト「arXiv.org」に発表したもので、パンスペルミア説にもとづいている。この説は、太陽系の惑星の間で惑星の破片がやりとりされることがあるという事実を基礎にしている。近接する岩石惑星の間では実際にこのようなことが起きていて、地球上で発見された隕石の中には、小惑星の衝突により火星から吹き飛ばされた破片が宇宙空間を旅したのちに地球に落ちてきたものがある。

 パンスペルミア説はこれをさらに一歩進めて、生命はそうした破片にヒッチハイクして、惑星から惑星へと広がっていくと主張する。途方もない話に聞こえるかもしれないが、最近の研究からは、ある種の生物が惑星間の旅に近い条件に耐えられることが示されている。一部の科学者は、地球の生命の種は火星から来たのかもしれないとさえ主張している。(参考記事:「地球生命の火星由来説に2つの新根拠」

 トラピスト1惑星系では、7つの惑星のすべてが火星と地球の間の20分の1未満の距離にある。これだけ近いと、惑星間で生命の種が広まるのは容易そうに思われる。

トラピスト1の7つの惑星は赤く薄暗い主星のすぐ近くに集まっていて、表面には液体の水がある可能性が高い。(ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECH)
トラピスト1の7つの惑星は赤く薄暗い主星のすぐ近くに集まっていて、表面には液体の水がある可能性が高い。(ILLUSTRATION BY NASA/JPL-CALTECH)
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火星から地球に飛び移るより容易

 今回、リンガム氏とローブ氏は、その可能性を厳密に計算してみた。トラピスト1惑星系の1つの惑星から隣りの惑星までの移動に要する時間は、地球-火星間の100分の1未満であることが明らかになった。そうなると、生命が惑星間の厳しい旅に耐えられる可能性は格段に高くなる。また、1つの惑星から飛び出した破片が別の惑星に落下する可能性は約20倍も高いことがわかった。

 これらを考え合わせると、生命がトラピスト1の惑星から惑星へと飛び移る可能性は、火星から地球に飛び移るより数千倍も高いことになる。

 英バッキンガム大学のチャンドラ・ウィクラマシンゲ氏は、「トラピスト1のような惑星系で微生物のやりとりが起こるのは必然です」とさえ言う。

 幸い、トラピスト1の惑星にはどれも条件さえよければ生命が住める可能性がある。

 7つの惑星のうちの3つは、主星から受ける熱が、表面に液体の水が存在するのにちょうどよい量になる「ハビタブルゾーン」にある。それ以外の惑星もほどよい距離にあり、惑星内部の温度がちょうどよく、大気に包まれているなら、同じくらい温暖であるはずだ。

「もしかすると、私たちが予想もしなかったような条件下で暮らす生命体が見つかるかもしれません」とローブ氏。「だから面白いのです。あらゆる先入観を捨てて、トラピスト1の7つの惑星すべてを調べなければなりません」。(参考記事:「宇宙に生命を探せ!」

次ページ:過酷な旅に耐えられるか

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