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■唐神知江 おいしい画展 (2016年2月3~8日、札幌)

2016年02月08日 23時35分17秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 いろいろな絵画が存在する。だから「こんなものは絵画らしくない」「絵っぽくない」というような決め付けはしないでおきたい。
 とくに印象主義以降の絵画史は「こんなものは絵画らしくない」という謬見との闘争であったといっても過言ではあるまい。

 唐神知江のドローイングは、工芸に通じるような丁寧さをもって仕上げられた油絵とは対極に位置するように思われる。
 今回の個展は、喫茶店が会場とあって、ケーキセットやコーヒー、シュークリーム、アップルパイなどがモティーフだ。
 フェルトペンやクレヨンなどの画材で、ごく短時間で描く。かっちりと細部までにわたって完成をめざすのではなく、その時、その空間に応じた、一種のインプロビゼーションのような創作を意図しているようだ。

 写実の桎梏をまぬかれてからおよそ150年。
 かつてない自由を得たはずの絵画は、桎梏だったはずの写実に収斂しようとしているかのようにすら見える。
 絵画にはもっといろいろな可能性があるのではないか。
 唐神の方向性がその可能性かどうかは、正直言っていまの段階ではなんともいえない。

 しかし、線というものが、瞬時性の中に、そのときそのときの描き手の感情がこめられるものだとしたら、そしてそれは、シャッターを押す手では絶対に再現不可能な「ふるえ」であるとするならば、イメージのさまざまなタイプを写真が占めていくような現代にあって(それは合理性の勝利と軌を一にしているといっていい)、感情を反映する線とは、絵画に残された可能性であるといえるのではないだろうか。


 …むずかしい文章になってしまった。

 唐神さんは胆振管内洞爺湖町の出身。
 略歴にはロンドン芸術大学でペインティングを学んだ、とある。
 北海道に帰ってきてからは「生まれ出る悩み」絵画コンクールで入賞を果たし、個展を中心に活動している。
 最近は、フリーで額装を手がけている人に、額装について学んでいるとのことで、今回の個展でも、マット部分に着彩するなどの工夫を凝らした絵が並んでいた。

 右の画像、手前の絵は「えのき」。
 絵の具をぽとりぽとりと落としてできた突起がユニークだ。


2016年2月3日(水)~8日(月)午前10時~午後10時(土日月~午後7時、最終日展示~午後5時)
カフェ北都館ギャラリー(西区琴似1の3)




・地下鉄東西線「琴似駅」5番出口から約280メートル、徒歩4分
・JR「琴似駅」から約730メートル、徒歩10分

・中央バス、ジェイアール北海道バス「西区役所前」から約960メートル、徒歩13分


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