真嶋潤子とCEFR

中国語教育学会・高等学校中国語教育研究会 合同全国大会
2007年5月12日(土)於:関西大学・千里山キャンパス
 
到達度評価(CEFRとNS)-大阪外大の試み-
真嶋潤子
(大阪外国語大学准教授・日本語教育学)
 
【キーワード】
CEFR: Common European Framework of Reference for Languages (ヨーロッパ言語共通参照枠。CEFと略されることもある)
NS: National Standards (米国ナショナル・スタンダード/全国標準。外国語以外の教科でも設定されつつある。)
Can-do statements: 「〜できる」能力記述文。CEFRの柱の一つ。
CE: Council of Europe 欧州評議会 (ヨーロッパ地域の46カ国によって構成される国際機関で、民主主義と人権の保護のもとヨーロッパの文化的アイデンティティーと多様性の促進を目的としている。ヨーロッパの政治・経済・軍事の統合を目指すEU: European Union 欧州連合とは異なる組織である。日本も非欧州オブザーバーの立場で参加している。)
 
【本発表の内容構成】
0 はじめに
1 日本の一大学(大阪外大)における外国語教育の問題の所在
2 CEFRとは:その理念と概略
3 NSナショナル・スタンダードとの違い
4 到達度評価制度への取り組み
 (1)記述方法について
 (2)目標設定について
 (3)その他の問題について
5 現状と課題
6 おわりに
 
 
0 はじめに
 本発表の目的は、大阪外国語大学でここ数年取り組んできた言語教育改革「到達度評価制度の構築」を紹介し、日本の外国語教育の改善のための議論の材料としていただこうということである。大阪外大で行っている「到達度評価制度」にはCEFRというヨーロッパで育まれた枠組みを、日本の大学として初めて取り入れて「参照」することとし、全学的に取り組んできたのであるが、その経緯、現状と課題にも触れたい。
 
1 日本の一大学(大阪外大)における外国語教育の問題の所在
 創立85年を迎えた大阪外大という外国語教育をその根幹とすべき大学で、それでは外国語教育は完璧かというと、残念ながらさにあらず。大阪外大の問題点を暴露するのは内心忸怩たる思いもするが、学生のために行っている改革を説明するためには、まず現実を見つめるところから始めなければならない。また指摘する問題は、一人大阪外大にのみ特有の問題とも思えない。率直に問題を語るところから始めたい。
 当事者の学生の声に耳を傾けて問題点を列挙すると、「教授法」、「到達度目標」、「教員の態度」、「教員の言語能力」、「カリキュラム」、「教材」など言語教育にかかわる広い範囲に及び、また単純でない。これに学内の言語教育研究会での議論も踏まえると、以下のようにまとめることができる。
 
カリキュラムに改善の余地:学生のニーズに合っているか?
教育実践の目標が明確か?学生(あるいは社会)のニーズに合っているか?4年間あるいは卒業後を見通しているか?
False beginner 既習者の処遇の問題:クラスに実力の異なる学生が混在していることへの対応。特に1年生クラスに、既習者が入っていること。
教員の専門性:言語教育を専門としない教員、自分の専門分野を教えたい教員
教員間のコミュニケーション不足
 
 問題は個別的なものも、普遍的なものも絡まっており、一筋縄ではいかないが、こういう言語プログラムの問題について考える際には、まずコースデザインの原則に戻って考えるのが良いと考える。外国語教育学・日本語教育学の概論などでおなじみのフローチャートでおさらいをしておきたい。
 改善は、目標設定?カリキュラム開発?教材・教授法決定?教育実践?評価?反省/改善?目標設定見直し...というサイクルで廻るので、手始めに目標を設定あるいは確認するところから検討するというのが、鉄則であろう。
 そこでまず各言語プログラムがどのような到達度目標を立てて教育に当たっているのかを、全学的に把握することから始めた。H15(2003)年に、学内の全専攻語担当者により「語学教育プログラム素案」を提出してもらったところ、比較不能、内容不明の記載が主流であった。すなわち「1年生は初級、2年生は中級、3、4年生は上級を目指す」のような記載が多く、何が目指されているのか、具体的にはわからない。言語間の比較をすることもかなわない。大阪外大の中国語プログラムで言う「上級」と、スペイン語プログラムで、あるいはウルドゥー語プログラムで言うところの「上級」が同じである保証はどこにもない。

 この問題を打破するために、学内の研究会で議論を重ねた。アメリカで広まりつつあるナショナル・スタンダードNS(1999)も勉強したが、結論から言えば大阪外大の問題解決策とはなりにくいと判断した。タイミングよくヨーロッパで「共通性」「透明性」をうたっているCEFR(2001)が開発されたのでそれを研究し、参考することにして、具体的に25言語の担当者に「同じ言語」「同じ物差し」を使って到達度目標とする能力記述をしてもらってはどうかということになった。その方針を進めるにあたり、それが初めての試みであるため、理解が得られなかったり反発されることも予想されたので、学内の理解を得るためにいろいろな催しを行った。(学内説明会、情報共有/CEFR 理解のための報告会と講演会/シンポジウムなど、概略は[資料6]を参照願いたい。)


2 CEFRとは:その理念と概略
 CEFRは、ヨーロッパにおける過去数十年の研究の上に、2001年に欧州評議会Council of Europe 言語政策部門Language Policy Division が発表したもので、外国語教育のシラバス、カリキュラム、教科書、試験の作成、および学習者の能力評価時に共通の基準となるものである。そもそもが欧州域内の学術的・経済的人的交流を促進するため、言語能力比較を容易にしようということである。「私はドイツ語を6年やった」「私のドイツ語はレベル3である」「大学でドイツ語を専攻した」「私のドイツ語は上級である」といった比較不能な言語能力表現の状況への解決策として、長年の研究と議論がなされてきたものである。大阪外大での25言語がバラバラで、共通の土俵がないという問題に共通する出発点であり、共感した。
 CEFRについては、出版物もありCEの公式サイトにも情報があるが、本日の配布資料の『日欧国際シンポジウム報告書』を参照いただきたい。特に、CEFRの構築の元になった博士論文を書いたBrian North氏の論考と、CEの言語政策部門で活躍中のJohanna Panthier氏の論文は参考になるだろう。また論文では取り上げられなかったが、後のパネルディスカッションで説明された論点も多いので、そちらもご覧いただきたい。
 CEFRで採用されたのは、学習者の言語能力を「目標言語Target Language:TLで何ができるのか」について「〜できる」という能力記述文で全て書き表し、大きく6つのレベルに分けるという方法である。[資料2、3]


 CEFRは言語は何かをするために使うものだということ、行動中心主義に立っており、言語によってどんな課題の遂行が可能であるのかということに重きを置いている。そして言語学習というのは一生続くかもしれない長期的な営みであること、学習者自身が自律的に学習主体としての役割を果たす事を期待し、自律的学習者の育成にも重きを置いている。


 言語活動の広範囲に渡る領域を大きく4つ(公的領域、私的領域、職場、教育環境)にわけて、それぞれの領域で言語を使って何ができるのかを記述したものを6つの共通参照レベルと呼ぶ段階別に明記している。学習者一人一人は、それぞれの領域で異なった能力を持っているのが普通である。(その個人の横顔のイメージを利用したのが、ドイツ語の「プロフィーレ・ドイチュ」というデータベースである。)
 また学習者個人の生涯にわたる言語運用能力をヨーロッパのどこに住んでいても継続的に伸ばし、測定することができるよう、言語学習記録帳と訳されている「ヨーロッパ言語ポートフォリオELP」の活用を奨励している。(稿末関連サイト参照)これは個人的には、是非大阪外大の学生が、いや外国語を学ぶ人みんなが作って持つ価値があるのではないかと考えている。


 大阪外大の外国語教育を改善するために、CEFRは非常に魅力的に見えた。それは、個別言語をこえた「共通性」と「透明性」を打ち出し、「能力記述文」によって学習者の言語能力を記述して「共通参照レベル」で比較が可能であることと、普遍的な言語教育のありかたを考えるのに、非常に参考になると考えた。CEFR自体が柔軟であり、上から押し付けようとする姿勢を持たないことも賛同しやすいと思った。
 一方「能力記述文」は、従来「初級文法の習得」などと記述していたものも、具体的にその言語で何ができるのかを「〜ができる」という形で記載する。「1年生は初級」「2年生は中級」「3、4年生は上級」というわかったようで実はよくわからない言い方でなく、何ができるのかを具体的に言えば(例えば「特に努力なしにテレビ番組や映画を理解できる」(C1)と言えば)、かなり比較しやすくなる。その具体的な能力を表す表現を、各自の思いつきでなく、CEFRの枠組みを参照しながら記述してみたらどうなるだろうか。


 共通参照レベルについては、言語能力レベルをまず3つに大きくわけ、それぞれをまた2段階に区別して全部で6段階に分けている。「全体的な尺度」の例を見ると「なにができる」のかが記載されている。能力記述には54の項目が使われている(North 2007ほか)。この尺度は非常におおまかな部分であり、これ以外に6つの段階の中をまたさらに言語領域と4つの技能で分けて記述している。[資料3]


 大阪外大では、このCEFRの枠組を文字通り「参照」した到達度評価制度を構築することにした。その中長期的な構想としては、まず「到達度目標の設定と提示」を行い、それからそれに基づいて「カリキュラム編成・成績評価システムの確立」を行い、将来的には「標準テスト・検定試験の開発」までつなげられると良いと考えている。





3 NSナショナル・スタンダードとの違い
 大阪外大の言語教育改革を考えて、諸外国の先進的な取り組みを探している時に、アメリカの「ナショナル・スタンダード」にも出会った。これはK-16 (菅2004などではK-12であるが、2007年3月に米国訪問した際にはK-16と言うのが一般的になっているとの指摘を受けた。Prof. S. Magnan, UW, Madison との会話より。) の外国語教育の理念を示したもので、カリキュラムデザインの道具ではないが、指針とすべきものとして推進されている[資料8]
 グローバル化の進んだ現代社会において、「英語は世界語だ」とまで言われる中、アメリカにおける外国語学習の推進は国民の能力や教養を高めるのみならず、特に「9.11」以後の国家安全保障戦略としてもブッシュ大統領が特別予算をつけるほど、政治的にも重要なことだと認識されている(ブッシュ大統領演説2006年1月5日)。そんな中、幼稚園から大学まで(K−16)の教育全体を視野に入れて、外国語教育の標準・スタンダードを提示して底上げをしようという取り組みが、90年代後半から教育省の主導で、ACTFL(アメリカ外国語教育協議会)を中心として「ナショナル・スタンダード」として提案されてきたが、昨今はそれにいっそう拍車がかかっているようである。
 NSでは、外国語学習には5Cと呼ばれる5つの側面が大切だと説き、視野を広く持って外国語教育が孤立しないよう、他教科や異文化、学校と地域の統合、ということに目配りしているのが特徴である。5Cというのは、コミュニケーションCommunication, 文化Culture, 連結Connection, 比較Comparison, 地域社会Community(訳は菅 2004による)の5つのCで始まる概念である。これはアメリカのK-16で外国語教育を実施したり論じたりする際に、考慮に入れるべき方針、理念であるとされている。
 NSは、学習者の到達度を直接的に論じるものではないし、またその名前からも明らかなように、これまで全国各地でバラバラに、せいぜい州毎にしかまとまりがなかったものに、全国標準の指針を与えて、異言語・異文化に寛容でコミュニケーション能力のある米国市民の育成を目指そうとしている。
 この理念そのものには異論はないものの、これを大阪外大の言語教育改革のために活用するには少し無理があると考えた。というのも、当方では大学教育における外国語教育の改善が求められているので、アメリカのK-16の教育制度のために考案された理念を、そのまま借りて来ることには妥当性、説得力に欠けると判断した。つまりNSの核である5Cの理念が、大阪外大の25言語プログラムに現在不足しているものであると思えなかったのであるが、それは我々が「到達度評価」という学習者の言語能力のいわば縦の物差しを必要としていたからであろう。
 また2007年3月に米国へ視察調査研究に赴き、協定校3校の言語教育担当者と意見交換する機会があったが、米国大学が一枚岩でなく、様々な意見が聞かれた事は興味深かった。極端な意見としては、「NSは大学教育には何のインパクトもない。それにうちの学生は非常に優秀なので、そもそも「スタンダード 標準」であってはいけないので、関係がない。」(カリフォルニア大学バークレー校教員)というものや、「大学教員や院生向けに、昨年NSのワークショップを行って情報共有した。大統領がらみの予算は、少数言語を学ぶ学生への奨学金という形で大学へも来ている。また、Flagshipというプロジェクトに応募することを検討したが、K-16全体の取り組みが要求されるので、当地では高校までの外国語教育が十分でないので、応募は見送った。Flagshipはオレゴン州などが採択された。」(ウィスコンシン大学マディソン校教員)という具体的な話も聞けた。


4 到達度評価制度への取り組み
 次に大阪外大での取り組みの経緯を簡単に紹介しておく。[資料6]に、これまでの数年の経緯をまとめておいた。また[資料7]に挙げてある相関図であるが、文部科学省採択の「海外先進教育実践支援プログラム」を中心とした流れを示している。
 H17(2005)年度、この到達度目標制度の確立に向けて、学内説明会や日欧国際シンポジウムなどによって学内外へのCEFRについての情報を共有する試みを行った。またH18(2006)年3月のシンポジウムでは、CEFRの専門家5名をヨーロッパより招聘して、様々な角度からCEFRを論じ、理解しようとした。そのシンポジウムの公式報告書を今回特別に配布することになったので、利用していただければ幸いである。


 ここで「到達度評価制度」について我々がやろうとしたこととやろうとしていないことを確認しておきたい。大阪外大の言語教育改革で「やろうとしていないこと」は 「到達度目標を設定する際に必ずCEFRに則るべきだ」というような、上からの枠をはめることや「全言語の到達度をCEFRのこのレベルにしなければならないと決めて、全専攻語に押し付けること」である。第二言語習得研究(SLA)の知見からも、例えば学習者の母語(普通は日本語)と目標言語との距離によって、学習にかかる時間や労力が異なる事は理解できるので、全専攻語で1年後に同じ到達度に達しているというような考え方は受け入れられない。CEFRは「参照」できる道具として提示したもので、各専攻語はそれを「参照しない」選択肢もあると考えた。
 一方、「やろうとしたこと」は、「各専攻語のこれまでの教育実践を踏まえて、現実的な到達度目標をCEFRを利用しながら記述することで、全専攻語の目標を開示し議論の出発点とすること」である。そこで、25専攻語においてCEFRを参照しながら「到達度目標」の記載をすることを依頼した。その際の留意点と合意事項は次の通りである。
(1)記述方法について
 ・専攻語全体として4年間一貫の言語教育を考える
 ・学年ごとに到達度目標を設定する
 ・授業科目ごとでなく専攻語全体としての到達度を考える
 ・4技能別5項目の記載を原則とする: 〔理解すること(聞くこと+読むこと)+話すこと(やりとり+表現)+書くこと〕
 ・専攻語の固有の事情や特性を反映させた記述とする(文字習得に時間がかかるなど)
・ 「〜ができる」型(can-do statementを参照)の能力記述をする  (共通尺度の目安としてCEFRレベル表を参照する)
・単なる言語操作技術でなく、言語を使った活動を支える能力全般を考慮する
 (目標言語による口頭コミュニケーション能力ならびに文章読解や論文作成等も含めた様々な課題の遂行は、目標言語文化圏の社会・文化・歴史的知識を背景として初めて可能になるという理解。)


(2)目標設定について
1どのレベルで到達したと見るか: 一つのレベルにはかなりの適用範囲が含まれているのが現実で、通常60%をやや超えた達成度でも「可」で到達したと考える。
2到達目標の設定にかかわる理想と現実:教員の願望や対外的アピールのために高い理想型を設定することを戒めた。現在の条件下で考えられる達成実現性の枠内で、現在よりも改善されたレベルを考えるよう指示。(長期留学をしていない学生のうち比較的上位の学生が到達可能なレベルを設定するのが適切ではないかという示唆。)
(3)その他の問題について
3「理解・読む」の意味: 辞書の使用を最低限にとどめ、日本語訳を書き留めなくても読んで主な情報が読み取れる能力を意味することにした。
4留学終了者の対応: (例えばドイツ語専攻では現在1年間留学者数が、約50%に達するが、)帰国後の対応は現在のところシステム内に考えられていない。どう扱うかは今後の課題。

 以上の点に留意しつつ、H17(2005)年の夏に25専攻語の1、2年生のプログラムにおけるCEFRを参照した能力記述文が提出された。その直接的成果は以下の通りである。
・全ての専攻語から、到達度目標記述が提出された。 反対/反論はなかった。[資料4、5]
9つの専攻語の到達度目標にCEFRの共通レベルが利用されていた
全ての専攻語の到達度目標記述がCEFRの「〜できる」型の表現を利用していた


 しかしながら、一方で問題点・疑問点も出て来た。たとえば、ロシア語のみ全ての技能項目で1年次の目標をA2に、2年次の目標をB1に定めていたという結果になったが、ロシア語以外の1年次の到達度目標がA1で良いのかどうか、議論の余地ありとした。


 CEFRの受け止められ方をヨーロッパで調査したところでは、ヨーロッパ人にとって馴染みのない中国語などの言語の担当者から、「非ヨーロッパ語のことが考慮されていないので受け入れられない」といった声を聞くことがあった(真嶋 2005bほか)。これは、ヨーロッパ言語を母語とする学習者が例えば中国語を学ぶ際には、文字の学習に非常な労力と時間がかかるので、そういう特殊事情を勘案していないCEFRは使いたくないということであったようだ。しかし、学習者の母語と目標言語の距離(と言っておくが)によって、時間のかかり方が異なることは自明であるし、その場合は「書くこと」のA1レベルを細分化して時間をかけるなどして、現場に適した使い方をすればよいのではないかと理解できる。ヨーロッパの現場の教員には、「共通枠」と言われた時点で、「同じ時間でどの言語も同じ到達度に達する事を求められている」という誤解があったのではないかと推測している。幸い、本学ではどのレベルの会議や説明会においてもそのような議論は聞かれなかった。このことからCEFRの普遍性に、ひとまず理解と賛同が得られたと見て良いのではないかと思っている。


 到達度評価制度の結果としてH18年度から、学生に配布する「授業シラバス」にこの25言語到達度目標の一覧表が掲載された。同じものが、外大のHPにもアップされているので、「学生生活」のところから、だれでも簡単に見る事ができる(稿末URLリスト参照)。このように各専攻語の到達度目標を公開することで、得られた点や改善できた点がいくつかあるのでまとめておきたい。
「透明性」「共通性」「押しつけない」というCEFRの特徴をふまえた25専攻語間の共通基盤ができつつあること
社会的説明責任として、各専攻語で何を到達目標として教育しているのかを社会に説明することができたこと
自律的学習者の育成に貢献できること、すなわち学習者が自分の専攻語の到達目標を意識して学習できること、自分が目標言語で何ができて何ができないのかということに自覚的になることで、効率的な学習への動機づけにもなること。
25言語の到達度目標を見比べることで、日本語母語話者にとってどの言語が学びやすいのかといった言語間比較を行う資料となりうる。第二言語習得研究への貢献が可能になること。
付加的メリットとして、(全学調査ではないが)一部の外国人教師(目標言語母語話者)がCEFRに興味を持ち専攻語内のコミュニケーションが進んだという報告を受けている。
 自律的学習者ということをもう少し見てみると、実はこれには教育界におけるパラダイムシフトが絡んでいると考えられる。従来の教師は自分の興味関心を中心に教授内容を決めるという教師中心主義のアプローチを取る事が、意識するかしないかは別として、(特に大学では)一般的であったのに比して、学習者を生涯学んで行く主体として捉え、学習者自身が自分の学びに関して主体的になり、学校や教師はその学びの一部を支援するサポート役である(でしかない)という学習者中心主義という考え方である。
 もちろん大学という教育機関で、いくら学習者の主体的判断を尊重すると言っても、個々の学習者一人一人に個別のシラバスやカリキュラムを提供することは現実的ではないし、そもそも言語学習の素人である学習者の言いなりになるのは目指すところではない。そうではなく、学生の専攻語の中長期的な到達度目標をきちんと提示することは、自律的な学習者を育てることにもつながり、意味のあることだと考える。


5 現状と課題
 最後に今後の課題とまとめを述べておきたい。これから必要なのは、1)25専攻語で提示された目標が適切かどうかの議論と、必要に応じた改訂作業、2)その目標に学生が到達できたかどうかを調べる評価システムの開発、具体的には4技能のテストをどのようにするのか、現状を調査し、世界の言語教育機関の最新情報を共有して必要な改善を図って行かなくてはらないと考えている。
 実はH18(2006)年度の文科省「大学の国際化」プログラムの「海外先進教育実践支援」に採択された。それで去る2007年3月にはアメリカの協定校3校に、大阪外大の5言語(アラビア、ヒンディー、ロシア、中国、ペルシャ語)の教育に携わっている教員を中心としたチームを派遣して、評価・テスティングの調査研究にあたり、テスティングのサンプルを作成し試行するというプロジェクトで、私もコーディネーターとしてこの米国視察研究旅行に参加した。
 アメリカではNational Standardsも少しずつ影響をもってきているようであるが、アセスメントや評価ということが、しきりに言われるようになってきているようで、アメリカの大学も一枚岩ではなく賛否両論あるとは言え、調査に行くにはタイミングが良かったようである。まだ結論づけるには早いと考えるが、アメリカの大学で見たところでは、これまでの言語学的知識だけを問うような紙と鉛筆によるテスト一辺倒であったところから、目標言語を使って課題が達成されたかを見る「タスク(課題)に基づいた評価Task-oriented assessment」を行う試みが始まっていることが確認された。


6 おわりに
わが国では、明治以来の伝統的な語学教育と最近の30年間あまりの間に高まった異文化コミュニケーション能力の需要との間にずれが大きいように思われる。特に大学では、教養主義から実用主義まで様々な立場が併存している。その様子は、私の同僚がそう呼んだように、「棲み分け主義」とも「分裂割拠状態」とも呼べるかもしれない。
 しかし、現在では文科省も外国語/英語教育の指針に「コミュニケーション」ということばを盛り込むようになった。大阪外大の「中期目標」にも「複数の外国語についてのより高度な運用能力の育成を目指す(傍点筆者)」とある。
 とはいえ、伝統的な考えや言語教育観によって教育を受けて来た教員には、舵を切れと言っても、自分の専門領域が別にある場合は特に言語教育に多大の労力を裂くことは難しいので、それには取り組みやすいある種の支援が必要だろうと思う。教員の側にもこれまで言語プログラム改革のニーズはあったが、そのもやもやした「これではいけないのだが」という思いには具体的な形がなかった。そこに共通性、透明性のある形を与えたのがCEFR であったのではないだろうか。CEFRの枠組を参照して到達度目標を設定するところから始めるという今回の試みで、すべてが解決するわけではない。またCEFRでなくても良かったかもしれない。しかし、少なくともCEFR を利用した結果、それが大阪外大の教員に反発なく受け入れられたことは事実である。CEFR の枠組みや記述の仕方や、何より考え方が与えられたことは、言語教育に携わる教員には非常に有り難かったはずである。それは、私が初めてCEFRについて読んだときの印象と同じである。
 何かしなくてはいけないとは思うが、時間もないし、専門でもないし...と半ばあきらめ気味でたこつぼ化していた教員には、「ヨーロッパで広く受け入れられている」「最新の」枠組みが提供されたことは、大きな助けとなったと理解できる。
 また、大阪外大の教員のヨーロッパの協定校への追加派遣調査の報告書(2007)を見ていても、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学や、オランダのライデン大学などで、CEFRを取り入れた教育実践が着々と進行しているようである。そのようなヨーロッパの大学だけでなく、日本の大学で、CEFR を取り入れた取り組みが全学的に進められたという点からも、言語教育の改善の道具としてCEFRの果たすダイナミックな役割として見れば、大変意味のあることではないかと考えている。ヨーロッパの高等教育機関でも少しずつこれを教育現場に利用することを促進する動きが見られる中、ヨーロッパの動きとも連動しながら日本の外国語教育の改革に関わる機会を得られることを、大変幸運に思っている。
 またCEFRには、ヨーロッパ各国において異なる教育システムのもとで言語教育に携わる者が国境を越えて外国語教育に取り組むことを奨励する意味も含まれているが、この考え方・立場は一人ヨーロッパにのみ通用するものではないだろう。大阪外国語大学の25言語の教育に携わる教員をつなぐ事が、わずかながら可能になったし、大阪外大以外の教育機関と話をする際にも有効であるし、さらには日本だけでなく中国をはじめとするアジアの国々と、共通の物差しと枠組みに当てはめて話をすることができると思う。言語教育を語るための普遍性の高い道具として、大いに利用して行くことができるのではないかと考えている。




[資料1] 大阪外国語大学で提供している25の主専攻語一覧

日本語 中国語 朝鮮語 モンゴル語 インドネシア語
フィリピノ語 タイ語
ベトナム語
ビルマ語
アラビア語
ヒンディー語 ウルドゥー語
ペルシア語
 トルコ語 ロシア語
スワヒリ語 ハンガリー語
デンマーク語
スウェーデン語
ドイツ語
英語 フランス語
スペイン語
ポルトガル語
イタリア語


[資料2]   
共通参照レベル CEF『言語のためのヨーロッパ共通基準枠』


© 2003 ヨーロッパ日本語教師会(AJE)CEF プロジェクト委員会作成
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[資料3]
表1:共通参照レベル:全体的な尺度

熟達した使用者

C2 聞いたり,読んだりしたほぼ全てのものを容易に理解することができる.
いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ,根拠も論点もー貫した方法で再構成できる.自然に,流暢かつ正確に自己表現ができ,非常に複雑な状況でも細かい意味の違い,区別を表現できる.
C1  いろいろな種類の高度な内容?かなり長いテクストを理解することができ,含意を把擾できる.
言葉を探しているという印象を与えずに,流暢に,また自然に自己表現することができる.
社会的,学問的,職業上の目的に応じた,柔軟な,しかも効果的な言葉遣いができる.
複雑な話題について明確でしっかりとした構成の詳細なテクストをつくることができる.その際テクストを構成する字句や接続表現,結束表現の用法をマスターしていることが伺える.

 自立した使用者

B2  自分の専門分野の技術的な幾輪も含めて,抽象的かつ具体的な話題の複雑なテクストの主な内容を理解することができる.
お互いに緊張しないで母語話者とやり取りができるくらい流暢かつ自然である.
かなり広汎な範囲の話題について,明確で詳細なテクストをつくることができ,様々な選択肢について長所や短所を示しながら自己の視点を説明できる.
B1  仕事,学校,娯楽で普段出会うような身近な話題について,標準的な話し方であれば主要点を理解できる.
その言葉が話されている地域を旅行しているときに起こりそうな,大抵の事態に対処することができる.
身近で個人的にも関心のある話題について,単純な方法で結びつけられた,脈絡のあるテクストをつくることができる.経験,出来事,夢,希望,野心を説明し,意見や計画の理由,説明を短く述べることができる.

基礎段階の使用者 

A2  ごく基本的な個人的情報や家族情報,買い物,近所,仕事など,直接的関係がある領域に関する,よく使われる文や表現を理解できる.
簡単で日常的な範囲なら,身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる.
自分の背景や身の回りの状況や,直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる.
A1  具体的な欲求を満足させるための,よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し,用いることもできる.
自分や他人を紹介することができ,どこに住んでいるか,誰と知り合いか,持ち物などの個人的情報について,質問をしたり,答えたりできる.
もし,相手がゆっくり,はっきりと話して,助け船をだしてくれるなら簡単なやり取りをすることができる.



表2:共通参照レベル:例示的能力記述文
 
理解すること

話すこと 書くこと
  聞くこと 読むこと やりとり 表現 書くこと
C2  生であれ,放送されたものであれ,母語話者の速いスピードで話されても,その話し方の癖に慣れる時間の余裕があれば,どんな種類の話し言葉も難無く理解できる.

 抽象的で,構造的にも言語的にも複雑な,例えばマニュアルや専門的記事,文学作品のテクストなど,事実上あらゆる形式で書かれた言葉を容易に読むことができる.  慣用表現,口語体表現をよく知っていて,いかなる会話や議論でも努力しないで加わることができる.
自分を流暢に表現し,詳細に細かい意味のニュアンスを伝えることができる.
問題があっても,周りの人がそれにほとんど気がつかないほどに修正し,問題点をうまく繕うことができる 
 状況にあった文体で,はっきりとすらすらと流暢に記述や論述ができる.効果的な論理構成によって聞き手に重要点を把握させ,記憶にとどめさせることができる  明瞭な,流暢な文章を適切な文体で書くことができる.
効果的な論理構造で事情を説明し,その重要点を読み手に気付かせ,記憶に留めさせるように,複雑な内容の手紙,レポート,記事を書くことができる.
仕事や文学作品の概要や評を書くことができる.
C1   たとえ構成がはっきりしなくて,関係性が暗示されているに過ぎず,明示的でない場合でも,長い話が理解できる.
特別の努力なしにテレビ番組や映画を理解できる.
 長い複雑な事実に基づくテクストや文学テクストを,文体の違いを認識しながら理解できる.
自分の関連外の分野での専門的記事も長い技術的説明書も理解できる.
 言葉をことさら捜さずに流暢に自然に自己表現ができる.
社会上,仕事上の目的にあった言葉遣いが,意のままに効果的にできる.
自分の考えや意見を精確に表現でき,自分の発言を上手に他の話し手の発言にあわせることができる.
 複雑な話題を,派生的問題にも立ち入って,詳しく論ずることができ,一定の観点を展開しながら,適切な結論でまとめ上げることができる.  適当な長さでいくつかの視点を示して,明瞭な構成で自己表現ができる.
自分が重要だと思う点を強調しながら,手紙やエッセイ,レポートで複雑な主題を扱うことができる.
読者を念頭に置いて適切な文体を選択できる.
B2   長い会話や講義を理解することができる.
また,もし話題がある程度身近な範囲であれば,議論の流れが複雑であっても理解できる.
たいていのテレビのニュースや時事問題の番組もわかる.
標準語の映画なら大多数は理解できる.
 筆者の姿勢や視点が出ている現代の問題についての記事や報告を読める.
現代文学の散文は読むことができる.
 流暢に自然に会話をすることができ,母語話者と普通にやり取りができる.
身近なコンテクストの議論に積極的に参加し,自分の意見を説明し,弁明できる.
 自分の興味関心のある分野に関連する限り,幅広い話題について,明瞭で詳細な説明をすることができる.
時事問題について,いろいろな可能性の長所,短所を示して自己の見方を説明できる.
 興味関心のある分野内なら,幅広くいろいろな話題について,明瞭で詳細な説明文を書くことができる.
エッセイやレポートで情報を伝え,一定の視点に対する支持や反対の理由を書くことができる.
手紙の中で,事件や体験について自分にとっての意義を中心に書くことができる.
B1   仕事,学校,娯楽で普段出会うような身近な話題について,明瞭で標準的な話し方の会話なら要点を理解することができる.
話し方が比較的ゆっくり,はっきりとしているなら,時事問題や,個人的もしくは仕事上の話題についても,ラジオやテレビ番組の要点を理解することができる.
 非常によく使われる日常言語や,自分の仕事関連の言葉で書かれたテクストなら理解できる.
起こったこと,感情,希望が表現されている私信を理解できる.
 当該言語圏の旅行中に最も起こりやすい大抵の状況に対処することができる.
例えば,家族や趣味,仕事,旅行,最近の出来事など,日常生活に直接関係のあることや個人的な関心事について,準備なしで会話に入ることができる.
 簡単な方法で語句を繋いで,自分の経験や出来事,夢や希望,野心を語ることができる.
意見や計画に対する理由や説明を簡潔に示すことができる.
物語を語ったり,本や映画のあらすじを話し,またそれに対する感想・考えを表現できる.
 身近で個人的に関心のある話題について,つながりのあるテクストを書くことができる.私信で経験や印象を書くことができる.
A2   (ごく基本的な個人や家族の情報,買い物,近所,仕事などの)直接自分につながりのある領域で最も頻繁に使われる語彙や表現を理解することができる.
短い,はっきりとした簡単なメッセージやアナウンスの要点を聞き取れる.
 ごく短い簡単なテクストなら理解できる.
広告や内容紹介のパンフレット,メニュー,予定表のようなものの中から日常の単純な具体的に予測がつく情報を取り出すことができる.
簡単で短い個人的な手紙は理解できる.
 単純な日常の仕事の中で,情報の直接のやり取りが必要ならば,身近な話題や活動について話し合いができる.
通常は会話を続けて行くだけの理解力はないのだが,短い社交的なやり取りをすることはできる.
 家族,周囲の人々,居住条件,学歴,職歴を簡単な言葉で一連の語句や文を使って説明できる.  直接の必要のある領域での事柄なら簡単に短いメモやメッセージを書くことができる.
短い個人的な手紙なら書くことができる:例えば礼状など.
A1   はっきりとゆっくりと話してもらえれば,自分,家族,すぐ周りの具体的なものに関する聞き慣れた語やごく基本的な表現を聞き取れる.
 例えば,掲示やポスター,カタログの中のよく知っている名前,単語,単純な文を理解できる.
ごく短い簡単なテクストなら理解できる.
 相手がゆっくり話し,繰り返したり,言い換えたりしてくれて,また自分が言いたいことを表現するのに助け船をだしてくれるなら,簡単なやり取りをすることができる.
直接必要なことやごく身近な話題についての簡単な質問なら,聞いたり答えたりできる.
 どこに住んでいるか,また,知っている人たちについて,簡単な語句や文を使って表現できる.  新年の挨拶など短い簡単な葉書を書くことができる.
例えばホテルの宿帳に名前,国籍や住所いった個人のデータを書き込むことができる.



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[資料4] 「専攻語到達度目標記述表」 <ドイツ語コース>

           
  理解すること 話すこと    書くこと
   聞くこと 読むこと  やりとり(会話への参加)  表現(一人で行う報告や説明など)  書くこと 
4年生  B1 (注:1年間の留学者はC1に到達可能) B1   B1 B1   B1
3年生  A2+ ~B1  A2+ ~B1  A2+ ~B1  A2+ ~B1  A2+ ~B1 
2年生後半  <授業で>明瞭に話されるなら、授業に関係する課題や説明を理解できる.<ドイツで>・個人や家族の情報,買い物,近所,仕事などの直接自分につながりのある領域でよく使われる語彙や表現を理解することができる.・生のメッセージやアナウンスの要点を聞き取ることにはまだ困難が伴う.
(ほぼA2~A2+に対応.
 <授業で>・短い簡単なテクストならその場で理解できる.・辞書を用いて時間をかければ、やや複雑なテーマについての文章を理解できる.<ドイツで>・広告やパンフレット,メニュー,予定表のような具体的なテクストなら、その場で情報を取り出すことができる.・簡単で短い個人的な手紙や説明文を理解できる.(ほぼ A2~A2+に対応)  <授業で>日常生活についての身近な話題や活動、あるいは教科書の内容について教師のリードがあればなんとか会話ができる.<ドイツで>通常の会話を続けて行くだけの聴き取り力はまだないが,相手のリードによって日常生活の具体的なテーマや場面についてはやり取りをすることができる.(ほぼA2~A2+に対応) <授業・ドイツで>・家族,周囲の人々,居住条件,学歴,職歴などについて簡単な言葉で一連の語句や文を使って説明できる・十分準備時間があれば、関心を持つテーマについて短いプレゼンテーションを用意し行うことができる.(ほぼA2~A2+に対応)  <授業で>・簡単な内容については、文法的誤りやテクスト構造・表現上の不適切さは多少あっても、その場で簡単な報告を書くことができる.・十分時間をかければ、教科書やビデオの内容要約をすることができる.<ドイツで>簡単な事柄についての短いメモやメッセージ、あるいは礼状などの個人的な手紙を書くことができる.(ほぼA2~B1に対応)  
2年生前半   CEF/A2レベルに至る中間点  CEF/A2レベルに至る中間点  CEF/A2レベルに至る中間点  CEF/A2レベルに至る中間点  CEF/A2レベルに至る中間点
1年生後半   <授業で>明瞭にゆっくりと話されるなら,課題や説明を理解できる.<ドイツで>身の周りの具体的な事柄に関する基本的な語や表現、説明を聞き取れる.(ほぼCEF/A1レベルに対応)  <授業で>簡単な教科書のテクストを辞書の助けを借りて理解できる.<ドイツで>標示やポスター,カタログなどに書かれた、よく知られた名前や単語,単純な文などを理解できる.(ほぼCEF/A1レベルに対応)  <授業・ドイツで>教師がゆっくり話し,繰り返しや言い換えをし,また自分が表現するときに助けを出してくれるなら,必要に迫られた事柄やごく身近な話題についての簡単なやり取りをすることができる.(ほぼCEF/A1レベルに対応)  <授業・ドイツで> 自分の住んでいる所や町,知っている人たちについて,簡単な語句や文を使って説明できる.・大学生活や日常生活の大まかな事柄をなんとか伝えることができる.(ほぼCEF/A1レベルに対応)  <授業で> 休暇中の出来事や自分の趣味などに関して、十分の時間をかければ、文法的誤りは多くても、短い報告を書くことができる.(ほぼCEF/A1レベルに対応)
1年生前半  CEF/A1レベルに至る中間点  CEF/A1レベルに至る中間点  CEF/A1レベルに至る中間点  CEF/A1レベルに至る中間点  CEF/A1レベルに至る中間点





[資料5] 「専攻語到達度目標記述表」 <中国語コース>




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[資料6] 大阪外国語大学における言語教育改善の取り組み

年度(平成) 大学を取り巻く状況 大学内取り組み 大学内取り組み<言語教育関連> 文科省採択プロジェクト
-1999 (11)  米国NS発表    ▶▶学内「言語教育研究会」(学内特別研究費)   
2000 (12)      ▶▶学内特別経費プロジェクト「多文化共存時代の言語教育」   
2001 (13)   欧州CEFR発表   ▶▶学内特別経費プロジェクト「多文化共存時代の言語教育(2)」でCEFRを検討   ▶▶[海外研修(ドイツの高等教育機関における日本語教育の実情)]
2002(14)     ▶第1回FD(Faculty Development)合宿研修  ▶▶学内特別経費プロジェクト「多文化共存時代の言語教育(3)」でCEFRを検討   
 2003 (15)

  ▶法人化にむけた準備 ▶第2回FD合宿研修 ▶▶専攻語実習科目別の目標と内容調査「語学教育プログラム素案」  ▶▶海外研究動向調査「ドイツにおける言語教育とCEFR 」 
 2004 (16)  国立大学法人化 ▶8室設置:学生生活室、教育推進室、入試室、就職支援室、国際交流室、財務室、評価室、企画・広報室▶授業効果調査アンケート▶第3回FD研修▶GPA制度導入  ▶▶教育推進室語学教育ワーキンググループ設置▶▶語学教育WGで到達度目標の整備を検討▶▶「言語教育ワークショップ第1回: 言語教育と教師のプロフェッショナリティー」開催  ▶日本語日本文化教育センターCJLC主催「日欧国際シンポジウム」開催▶▶「16年度海外先進教育研究実践支援プログラム」英国、イタリア、ドイツの協定校へ教員3名派遣 
 2005 (17)  大阪大学との統合協議 ▶第4回FD研修▶セメスター制導入準備  ▶▶「到達度評価制度とその導入について」学内専攻語担当者説明会2回開催▶▶全25言語コースへので「到達度目標記述表」を作成▶▶「言語教育ワークショップ第2回: 外国語教育の到達度評価と大学間教育ネットワーク」開催▶▶学内特別研究「語学教育における到達度評価制度確立のための調査・研究」  ▶「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」として「異文化障壁を乗り越える対話と交渉能力の育成 —実践的eラーニング言語教育プログラムの展開—」▶▶「大学教育の国際化推進プログラム(海外先進教育研究実践支援)」として「国際標準・言語教育到達度評価制度の構築 —欧州協議会作成『言語共通参照枠CEF』を基にした到達度評価システムの開発-」▶▶国際シンポジウム「これからの外国語教育の方向性 —CEFRが拓く可能性を考える」@大阪国際会議場▶▶欧州の協定校へCEFR調査のため教員派遣事業(短期9名) 
 2006 (18)

    ▶▶学生用シラバスに「25専攻語1、2年次到達度目標一覧表」を掲載。またHPでも公開▶言語教育WGで、複数の言語コースの3、4年生用「到達度目標記述表」(サンプル)を作成   ▶▶「到達度記述表」のシラバスへの取り入れ⇨学生へ配布, 大学HPに掲載▶▶「海外先進教育実践支援プログラム」 5言語の担当者による米国協定校での調査 
 2007 (19)

 10月1日大阪大学との統合予定   ▶全専攻語の到達度目標の妥当性の検討▶到達度を評価するテストの検討▶「言語教育ワークショップ」開催(?)   



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[資料7]
(取り組みの相関図)




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[資料8] 外国語教育のための米国ナショナル・スタンダードの概略
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(出典:ACTFLサイト (http://www.actfl.org/i4a/pages/index.cfm?pageid=3392) 2007年4月5日現在)




[参考文献]
大阪外国語大学語学教育研究会(代表:友田舜三) 2000 『多文化共存時代の言語教育 平成11年度教育研究学内特別経費プロジェクト研究成果報告書』 大阪外国語大学
大阪外国語大学語学教育研究会(代表:真嶋潤子) 2001 『多文化共存時代の言語教育(2) 平成12年度教育研究学内特別経費プロジェクト研究成果報告書』 大阪外国語大学
大阪外国語大学語学教育研究会(代表:友田舜三) 2002 『多文化共存時代の言語教育(3) 平成13年度教育研究学内特別経費プロジェクト研究成果報告書』 大阪外国語大学
大阪外国語大学教育推進室語学教育ワーキンググループ(代表:真嶋潤子) 2005 『2004年度(平成16年度)学内特別研究費II活動成果報告書:語学教育における到達度評価策定のための基礎研究』 大阪外国語大学 
大阪外国語大学教育推進室語学教育ワーキンググループ(代表:林田理恵) 2006 『2005年度(平成17年度)学内特別研究費II活動成果報告書:語学教育における到達度評価制度確立のための調査・研究』 大阪外国語大学
大阪外国語大学国際シンポジウム実行委員会 2006 『文部科学省採択「平成17年度海外先進教育実践支援プロジェクト」 日欧国際シンポジウム:これからの外国語教育の方向性 —CEFRが拓く可能性を考える—』 シンポジウムパンフレット 大阪外国語大学
大阪外国語大学教育推進室(真嶋潤子・山崎直樹編) 2007『平成17年度文部科学省海外先進教育実践支援採択プロジェクト「国際標準・言語教育到達度評価制度の構築」成果報告書 I 日欧国際シンポジウム報告書:これからの外国語教育の方向性 —CEFRが拓く可能性を考える—』大阪外国語大学
大阪外国語大学教育推進室(真嶋潤子・山崎直樹編) 2007『平成17年度文部科学省海外先進教育実践支援採択プロジェクト「国際標準・言語教育到達度評価制度の構築」成果報告書 II 欧州高等教育機関の言語教育の現状』大阪外国語大学


菅 英昭 2004「アメリカにおけるK-12外国語教育の現状と展望」吉島茂、長谷川弘基編『外国語教育III −幼稚園・小学校篇−』朝日出版社 pp.85-97
国立国語研究所 2004 『世界の言語テストⅠ』 平成15年度「日本語教育の学習環境と学習手段に関する調査研究」報告書
真嶋潤子 2006 「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEF)と言語教育現場の関連づけの一研究 —ある日本語コースの質的研究—」 『ヨーロッパ日本語教育10 2005日本語教育シンポジウム 報告・発表論文集』 ヨーロッパ日本語教師会 pp.177-182
真嶋潤子 2005a 「ドイツ出張報告 —ドイツにおけるCEF導入状況に関する予備調査」『平成16年度学内特別研究費II活動成果報告書 —語学教育における到達度評価策定のための基礎研究』大阪外国語大学 教育推進室 語学教育ワーキンググループ pp.63-66
真嶋潤子 2005b 「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEF)受入状況の一研究 —ドイツの言語教育機関における聞き取り調査より—」『日本語講座年報2005』 大阪外国語大学日本語講座
ヨーロッパ日本語教師会(AJE)2005『日本語教育国別事情調査:ヨーロッパにおける日本語教育とCommon European Framework of Reference for Languages』 国際交流基金
吉島茂、大橋理枝(訳・編) 2004『外国語教育II – 外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠』朝日出版社
吉島茂、長谷川弘基編 2004『外国語教育III −幼稚園・小学校篇−』朝日出版社
Bausch, K-R., et al. (Eds.) 2003 Der Gemeinsame europäisch e Referenzrahmen für Sprachen in der Diskussion. Tübingen: Gunter Narr Verlag.
European Language Council (Ed.) 2002 European Language Portfolio – Higher Education. Berne: Editions scolaires du canton de Berne (BLMV).
Glaboniat, Manuela 2005 Profile Deutsch. Berlin: Langenscheidt.
National Standards in Foreign Language Education Project. 1999. Standards for Foreign Language Learning in the 21st Century. Lawrence, KS: Allen Press, Inc.
North, Brian 2000 The Development of a Common Framework Scale of Language Proficiency. NY: Peter Lang Publishing, Inc.
Schneider, G. & B. North. 2000 Fremdsprachen können – was heisst das? Zürich: Verlag Rüegger.






[関連URL] (2007年4月7日現在)
大阪外国語大学専攻語到達度目標一覧表
 (http://www.osaka-gaidai.ac.jp/%7Ekyoumu/LangSyl.pdf)
国際交流基金『ヨーロッパにおける日本語教育事情とCommon European Framework of Reference for Languages』 (http://www.jpf.go.jp/j/japan_j/publish/euro/index.html)
ELPヨーロッパ言語ポートフォリオに関する説明: CEのサイト (http://www.coe.int/t/dg4/portfolio/Default.asp?L=E&M=/main_pages/welcome.html)  国際交流基金の報告書(http://www.jpf.go.jp/j/japan_j/publish/euro/pdf/01-4.pdf)
CEFR関連:CEサイト (http://www.coe.int/t/dg4/linguistic/CADRE_EN.asp)
米国NS 関連:ACTFLサイト (http://www.actfl.org/i4a/pages/index.cfm?pageid=3392)
ブッシュ大統領の国家戦略としての外国語教育の促進に関するサイト:
(http://usinfo.state.gov/gi/Archive/2006/Jan/06-344515.html)
 ・North, Brian 2007 The CEFR Common Reference Levels: validated reference points and local strategies. “Policy Forum: CEFR and the development of language policies: challenges and responsibilities” organized by the Council of Europe Language Policy Division. (http://www.coe.int/t/dg4/linguistic/Progr_Forum07_Texts_EN.asp#TopOfPage)





言語政策(日本語教育者から見た異文化理解)

日本語教育者の男女比率