2014.01.28

一人の学者裁判官が目撃した司法荒廃、崩壊の黙示録!『絶望の裁判所』著者・瀬木比呂志氏インタビュー

最高裁中枢を知る元エリート裁判官による衝撃の告発

--憲法で身分保障されている裁判官が、かくも出世に敏感とは驚きました。なぜなのでしょうか?

瀬木: まず、身分保障といいますが、新任裁判官の数は1つの期で昔は60名くら

『司法制度改革』導入の裏には、司法官僚による秘められた陰謀があったという

い、今は100名くらい、裁判官全体で現在3000名弱。それで、10年に1度の再任で毎年5名程度拒否される者が出て、事実上の強要に近い肩叩きも、少なくとも同じくらいはあるわけですから、この身分保障は、かなり危ういものになっています。つまり、1年間で10人くらいは裁判所を追われているわけですからね。大学、一般公務員はもちろん、大企業よりもはるかに危うい。ただ、やめても弁護士ができるというだけのことです。
 出世に敏感なのは、第3章にも書いたとおり、そのように条件付けられ、それが習い性になって、自分を客観的に見詰める目を失ってしまっているからで、これも、行政官僚や一部の企業と何ら変わりません。というより、先輩の元裁判官たちにも、「霞ヶ関や大企業よりもさらに陰湿なのではないか?」と言っている人はかなりいますね。

--現在は刑事系裁判官が枢要ポストの相当部分を占めているようですが、これに対して民事系裁判官の反発はないのですか?

瀬木: 潜在的な反発は、ないではないのでしょう。しかし、本に書いたとおり、かつて裁判官支配、統制の形を完成させたといわれる矢口洪一長官時代に比べても、面従腹背の人すら少なく、上に対して見境なく尻尾を振る人が多いという嘆かわしい状況ではありますね。
 また、これも本に書いていますが、刑事支配の一時期が重要ということではない。腐敗がはなはだしいからそのことを強調しましたが、やがてそれが終わっても、後に続くのは同様のメンタリティーの人たちなのであって、刑事支配の時代が終わったら何かが変わるという幻想を抱くべきではありません。現在の裁判所上層部は、矢口時代に比べても問題が大きく、それは刑事系に限ったことではないのです。

--第2章の最高裁判事の性格類型別分析が秀逸でした。詳しい説明はそれを読んでいただくとして、そのエッセンスを教えて下さいませんか?

瀬木: エッセンスと言われても難しいのですが(笑)・・・・・・。要するに、人間味のある人と怪物的な人が若干、ただし後者のほうが多い。残りの半分が純粋出世主義の俗物、半分が比較的知的だが本質的には型通りの官僚ということです。この二者の違いは、後者には少なくとも良心の片鱗はあるだろうということです。

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