生物学者のジャン・シッパー氏は、ジャガーが写っていないかと期待しつつ、コスタリカのタラマンカ山脈に仕掛けたカメラトラップ(自動撮影装置)の粗い写真を調べていた。(参考記事:「中南米に残るジャガー信仰、人をのみ込む秘薬」、「ジャガーがワニをとらえた決定的瞬間、15秒の早業」)
しかし、ジャガーではない動物が写っていて仰天した。それはずんぐりした小型の希少肉食動物で、コスタリカに生息していることすら知られていないものだった。
その動物、ヤブイヌ(Speothos venaticus)の写真がパナマより北で撮影されたのは初めてだ。また、海抜約1500メートルと、ヤブイヌの目撃例の中では最も標高が高い場所でもあった。
米国のフェニックス動物園で自然保護の研究をしているシッパー氏は、「何かとても珍しいものを見つけたいとずっと頑張ってきたので、ついに写真を撮れたときは、まるでお祭り騒ぎでした」と言う。
ヤブイヌはイエネコほどの大きさで、ブラジル南部からパナマにかけての森林に生息している。コスタリカでも目撃情報はあったものの、生息が確認できるほどはっきりとしたものではなかったという。(参考記事:「アマゾンの希少動物――ヤブイヌ」)
今回のカメラトラップから得られたデータは、ヤブイヌの謎を解明する助けとなるはずだ。ヤブイヌは夜行性であり、追跡したり写真に収めたりするのは非常に難しい。
「この地域には12年間カメラを仕掛けていますが、ヤブイヌの姿をとらえたのはこれが初めてです」
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