6月日銀短観で景況感改善が中小まで浸透、価格上昇広がる

6月日銀短観で景況感改善が中小まで浸透、価格上昇広がる
7月1日、日銀が発表した6月日銀短観では、企業の景況感の改善が大企業から中堅・中小企業、製造・非製造業まで広がった。都内で2010年11月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した6月日銀短観では、企業の景況感の改善が大企業から中堅・中小企業、製造・非製造業まで広がった。設備や雇用の過剰感が解消に向かい、特に雇用は大企業でも先行き、リーマン・ショック前以来の不足超過に転じる見通しとなった。
事業計画の前提となる為替レートにようやく円安傾向が織り込まれて13年度に1ドル90円台となり、大企業製造業の回復を牽引したほか、内需も好調だ。こうした背景から物価は上昇傾向を強め、円安によるコスト増や需給の引き締まりから販売価格の上昇傾向がいっそう強まり、素材業種では上昇超過に転じている。
・マインド改善が中小まで浸透、為替前提1ドル91円が寄与
業況判断DIは、大企業製造業で12ポイントの2桁改善となり、プラス4となった。先行きもさらに6ポイント改善の見通し。同非製造業でも6ポイント改善し、DIはプラス12と高水準。中堅・中小企業も、製造・非製造業ともに底堅い改善を見せた。特に中小製造業は、16業種中全業種が改善し、景気回復は中小企業にも浸透してきている。
背景には、国内・海外需要ともに改善し、売り上げ・経常利益が大きく上方修正されたことがある。特に為替レートの前提が13年度に1ドル91円台となり、3月調査の85円台から大幅に円安方向となったことから、製造業を中心に利益が大きく改善した。大企業製造業の経常利益は前回から18%もの大幅上方修正となった。
・物価上昇傾向強まる、素材の販売価格がついに上昇超過へ
需要の回復とともに、物価上昇傾向が強まっていることが鮮明となった。製品やサービスの需給判断は製造業、非製造業ともに大きく需要超過方向に動いた。この結果、在庫水準は不足超過傾向を強めており、こうした需給の引き締まりが製品価格の上昇判断を押し上げている。
円安によるコスト増加で仕入れ価格判断は上昇傾向を強めており、これを価格転嫁する動きが素材業種を中心に強まり、ついに素材業種の価格判断は今回「上昇超過」に転じた。このため、加工業種や非製造業でも販売価格が上昇方向に動き、非製造業では先行き「上昇超過」に、製造業でも先行きマイナス1となり、07─08年の世界的な資源価格高騰時以来の「上昇超過」に近づいている。
・設備投資計画の勢い、中小企業で強まる
13年度の設備投資計画は順調に上方された。特に中小製造業は06年度からの比較で最も高い伸びを示し、10.4%となった。大企業は全体で5.5%増と11、12年度を下回る伸びにとどまった。
景況感や収益が大きく改善していることに比べると、大企業の設備投資計画はさほど勢いづいていない。
(ロイター日本語ニュース 中川泉)

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