小樽在住の画家、三宅悟さんが呼びかけて開かれたグループ展。
出品者は、小樽よりも札幌の方が多い。ジャンルも、日本画、油彩、インスタレーションなどバラエティーに富んでいる。
タイトルにあわせ、花を題材にした人もいれば、関係なく作品を出している人も多い。
三宅さんによると、もともとは札幌のギャラリーたぴおで3年間ほど行っていたグループ展が起源。その後、大同ギャラリーで1度開き、「もっと大きな会場で見たくなって」(三宅さん)、今回の開催となったという。知り合いに声をかけたら、快く出品を応諾してくれた人が多かったとのこと。
冒頭画像、いちばん奥に見える巨大なインスタレーションは、染色家の長谷川雅志さんによる「倒木更新」(左)と「實生」。
長谷川さんはこのほか「種霞」「赫」「連子」を出品。「種霞」「赫」は、彼にしてはめずらしく、鮮やかな色を織り交ぜている。
三宅さんの「朝の眺望」。F60号を2枚続けた大作。
自宅に近い、小樽市の梅ケ枝町附近から小樽港の方向を望んだ。
筆者はなにせ、手宮公園からの景色が世界で一番好きな眺めの一つという人間なので、とうてい客観的にこの絵を見ることはかなわない。この場所からは、一度も見たことがないのに、こんなになつかしく感じるのはなぜだろうと思う。
三宅さんはこのほか「チューリップ」も出品。
別府肇さんは、さまざまな画材を工夫して絵を描く方だが、花の絵は珍しい。もちろん、ボタニカルアートとはだいぶ違うが。
「テーマに沿ったものを、と必死になったんですが、みなさん意外と、ふだんの絵を出してらっしゃるようで」
と、別府さんは拍子抜けしていた。
今回、煎茶や番茶などを筆で何回も塗って、放散ナトリウムなども重ねて、淡い色を出している。
画面に、等間隔に打たれた茶色は、天井に貼られたポスターの画鋲をイメージしているそうだ。
出品作は「二つの粒子 UKに」「粒子 regia」(同題3点)、「限りあるもの」。
題の付されていない小品も。
左側は、林玲二さんの「連画ドローイング2014 In a landscape」。
支持体はいつもの、コンピューターのプリンタ用紙である。とはいえ、この、両端に等間隔でまるく穴が開いた用紙を覚えている人は、もはや少ないかもしれない。やわらかい支持体なのに、描き出される色彩の世界は強靭である。
奥に見えるのは、小川豊さんの「心のひだ」「ひだ」の連作。
青や緑のひだがどこまでも重なっていく。
この展覧会、日本画に力作が多かった。
伊藤洋子さん、手前は「向日葵(ひまわり)」。やさしさと神秘性が同居したような絵だ。
ヒマワリの群落のそばに立つ天使と少女のもとに、ツバメを従えた天使が飛んでくる。いったい、何を表す情景なんだろう。
ほかに、中欧のまちなみをやわらかいタッチで描いた「いつか見た街」、人形がモティーフの2枚組み「dolles」。
中野邦昭さん「エゾニューの咲く頃」。
図録では「あかり」となっている。
木造家屋を描いた中野さんの一連の作の中でも、筆者はいちばん好きになれる絵だ。いまの季節の、北国がいちばん良い気候であることが、絵の中に表現されているような気がするからだと思う。遠くに湾が望めるのも、この絵を、気分がたゆたうというか、駘蕩とした気持ちにさせるのだろう。
ほかに「コスモス」「風韻」。
「コスモス」の中で、右側にやってきている鳥はセキレイだろうか。
白崎博さんの風景画も渋かった。
ここには「野影 冬の聚富」(左)と「移り行く季節の中で 早春」が見えているが、いずれも、ひそやかで、人の気配の感じられない風景である。視線が低いというか、ひたすら風景を凝視し、対話している画家の姿勢が、絵からつたわってくるようだ。なお、「聚富」は「シップ」と読み、石狩市厚田の地名である。
もう1点、「河骨図」。
その左側には、小樽在住の絵本作家かつやかおりさんの、わりあい小さい絵が並ぶ。
「お茶の時間」「夕陽」「昼下がりのおしゃべり」「お姫様がお庭にいるとお月様がぐんぐん近付いてきました」「こんばんは」「おひる」「窓辺」「ぞうさん」
このほかのおもな出品作は、次の通り。
阿部正子 朝日のささやき 晩夢
末永正子 彷(同題2点) 冬長 風花 HO 景
菅原おりえ 恋文 作戦会議 歌うように
田中緑 ハマエンドウ咲く 1月 冬が行く頃 蕗の薹 潮騒
深山秀子 雪原 ゆきもよう 枯野行 ゆき叢
水戸麻記子 咲 竜 根 夢 月 吐
三宅さんによると、来年以降の開催については未定という。
なお、ツイッターで、三宅さんの名前が再三にわたって誤って記載されていました。申し訳ありませんでした。
2014年6月17日(火)~22日(日)午前10時~午後5時30分(最終日~5時)
市立美術館市民ギャラリー(小樽市色内1)