森の下草で土砂流出97%減 琵環研センターが論文

奥平真也
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 森の下草は土砂流出を97%減少させる――。滋賀県琵琶湖環境科学研究センター(大津市)などが、森林の下草が雨による土砂流出を食い止めていることをデータで証明した。鹿の増加や間伐不足による下草の減少が、土砂災害のリスクを高めている可能性があるという。

 論文が世界的学術出版「シュプリンガー・ネイチャー社」のオンライン学術誌に掲載された。まとめたのはセンター主任研究員の水野敏明さん、専門員の小島永裕(ながひろ)さん、京大大学院地球環境学堂助教の浅野悟史(さとし)さんの3人。

 水野さんによると、2014年秋から調査を始め、2015年~19年のデータを元に論文にした。滋賀県内の比叡山(大津市)と鏡山(野洲市)の2カ所で、降雨時に土砂がどれぐらい川に流出するか測定を続けた。県による永源寺ダム(東近江市)の土砂データも加え、年間の量を統計分析。3カ所はほぼ同緯度で、植生に大きな差が出ないと考えた。

 調査のきっかけは、水野さんが釣り人から「昔はイワナがたくさんいたのに減ってしまった。土で淵が埋まってしまったためでは」という話を聞いたことだ。森からの土の出方が変わったのではないか。原因と考えられたのが鹿や間伐不足による下草の減少だ。下草の有無によって土砂流出に差が出るかどうかを調べることにした。

 「こんなにきれいにデータが出るとは思っていなかった」。調査結果に水野さんは驚いた。森林の地面が下草に60%以上覆われている場所は、30%未満の場所と比べて土砂流出量が97%少なかった。30~60%の場所では63%少なかった。72時間雨量が100~200ミリ程度の雨でも、400ミリを超える豪雨でも、同じ傾向が見られた。

 水野さんによると、下草が水の流れを邪魔し、土砂流出を防いでいると考えられるという。下草が減少するのはなぜか。日本は杉などの人工林が多いため、間伐をしないと日光が地面に届かず下草が生えない。また、鹿が増えると下草が食べられてしまう。これらが原因という。

 下草があれば97%も土砂の流出を減少させるということは、重大災害が生じるか生じないかの重要な要素となる。水野さんは「裸地だと大変なことになる。例えばソーラー発電の太陽光パネルを作る際も、下草の効果を考えて開発することが重要」と話す。

 論文は英語。ウェブ(https://www.nature.com/articles/s41598-021-93906-1別ウインドウで開きます)で読むことができる。(奥平真也)

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