調書の講義使用は「不可」 検察庁と法科大学院が対立

http://www.asahi.com/national/update/1104/TKY200611040289.html

コメント欄でご指摘があり知りました。ありがとうございます。

2地検の言い分は、法科大学院生に捜査記録などを見せるのは証拠の目的外使用にあたるというもの。司法試験に合格した司法修習生にはアクセス可能とはいえ、それは司法修習生には守秘義務が規定され、違反すれば罷免もありうるから。それがない法科大学院生は同列に扱えないという。

やれやれ、検察庁の杓子定規にも困ったものだ、というのが第一印象ですね。
刑事訴訟法が改正されて、下記のような規定ができています。

第281条の3
弁護人は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等(複製その他証拠の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう。以下同じ。)を適正に管理し、その保管をみだりに他人にゆだねてはならない。
第281条の4
1 被告人若しくは弁護人(第440条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
1.当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理
2.当該被告事件に関する次に掲げる手続
イ 第1編第16章の規定による費用の補償の手続
ロ 第349条第1項の請求があつた場合の手続
ハ 第350条の請求があつた場合の手続
ニ 上訴権回復の請求の手続
ホ 再審の請求の手続
ヘ 非常上告の手続
ト 第500条第1項の申立ての手続
チ 第502条の申立ての手続
リ 刑事補償法の規定による補償の請求の手続
2 前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする。

上記の条文を、形式的にあてはめてしまえば、法科大学院生は事件記録を見られない、ということになりそうですが、それを言い始めれば、司法修習生への交付等も目的外使用になってしまうでしょう。記事では、司法修習生の「守秘義務」を理由に可能、とされていますが、司法修習生も、事件の関係では単なる部外者ですから、検察庁お得意の杓子定規をあてはめれば、記録を見ることはできず、また、接見に行っても弁護士とともに立会人なしで被疑者・被告人に接見できないはずです。
守秘義務があるので可能、というのであれば、検察庁や裁判所と法科大学院生の間で、秘密保持契約でも締結すれば(違反した場合は法科大学院を退学すると約束するとか)、同じことでしょう。
さしあたっては、当該弁護人の、法科大学院生に対する教育という「正当業務行為」として(これが正当業務行為ではない、という人がいれば、お目にかかりたいですね)、違法性が阻却されると考える、というところでしょうか。
法科大学院に教員を派遣しておきながら、何を考えているんでしょうね、検察庁は。
刑事法に関する法令の改正が、法務省検察庁の思惑通りに(裁判所や一部の御用学者の協賛も得て)進んだ時に、その先に何が待っているかということを考える上で(特に共謀罪など)、格好の参考事例と言えるでしょう。

追記1:

記事の中にある「法務省関連の雑誌の6月号に「検察官から開示された証拠を法科大学院生に見せるのは違法」との解釈を示した東京高検検事の文章が掲載され」という、その「文章」を読んでみましたが、司法修習生にできることが、なぜ、法科大学院生にできないのか、その根拠が極めて不十分にしか書かれていないことが明らかでした。司法修習生には、修習に法律上の根拠があるなどと主張されていましたが、それを言うなら、法科大学院も法律に基づいて設置されたものであり、正に「五十歩百歩」でしょう。司法修習生については、最高裁がああ言っている、こう言っている、などと、最高裁を引き合いに出してもいましたが、ロッキード事件最高裁が出した「不起訴宣明」が、最後に最高裁自身によって否定されたことにも見られるように、法律上の根拠がないことについて立法機関ではない最高裁が何を言っても、こういったつまらない論文のネタにはなっても根拠不足が充足されることにはならないでしょう(当たり前のことですが)。
法科大学院生に記録を見せたくないと強弁するあまり、司法修習生の修習の根拠が薄弱であることを露呈してしまっており、まず結論ありきの内容貧弱な論文だと思いました。そういうことを言い出せば、検察庁における「取り調べ修習」も、何の法律上の根拠もないのに被疑者取り調べという極めて権力的な行為を、修習生が行うなど到底許されない、ということになるでしょう。そういった根拠をあげて取り調べ修習を拒否する修習生に対し、検察庁が歴史的に何を言い、どういった対応をしてきたかを考えるだけでも、この論文の二枚舌的性格、くだらなさがわかると思います。
結局、「あれもできない、これもできない」という方向で議論するのではなく、司法修習生にしても、法科大学院生にしても、法律上の根拠を伴った上で勉強し、そのために一定の範囲内で事件記録に接したりする必要性もあるわけですから、適宜、法律上の根拠を考えつつ、指導担当の裁判官、検察官、弁護士の責任を明確にし、また、指導を受ける側の義務も明確にした上で、そういった行為が可能になるように、法を杓子定規ではなく目的的に解釈すべきということだと思います。
こういう論文まで発表し、上記の記事のような措置を講じるということは、検察庁という組織自体が、法科大学院つぶしへと組織的に動いている現れなのかもしれません。検察庁から法科大学院へ派遣されている教員の方々も、そろそろ梯子がはずされようとしている、ということで、救命ボート探しなどを始めたほうがよさそうです。
また、こういった検察庁の「スーパー杓子定規」な姿勢、二枚舌を平気で使い分けるという点は、現在、問題となっている共謀罪が成立した場合の運用ということを予測する上でも極めて参考になるように思います。

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20061029#1162088101

でもコメントしたように、この組織は、本当にもう終わっているな、と、しみじみと思います。早くやめておいて正解(大正解)でした。
これからこの組織へ入ろうかと考えている人は、こういうことを言ったりやったりする組織であるということを、よく覚えておいたほうがよいでしょう。

追記2:

日本語能力が低い方の、誤解、曲解に基づくコメントであっても、基本的に消さない方針で臨んでいますが、無制約、無制限に、法科大学院生に事件記録を見せてもよい、などと言っているわけではなく、エントリー中で、

結局、「あれもできない、これもできない」という方向で議論するのではなく、司法修習生にしても、法科大学院生にしても、法律上の根拠を伴った上で勉強し、そのために一定の範囲内で事件記録に接したりする必要性もあるわけですから、適宜、法律上の根拠を考えつつ、指導担当の裁判官、検察官、弁護士の責任を明確にし、また、指導を受ける側の義務も明確にした上で、そういった行為が可能になるように、法を杓子定規ではなく目的的に解釈すべきということだと思います。

と、それなりに「建設的に」言っているあたりも読み取っていただきたいですね。

追記3:

「批判」を「悪口」としかとれない、ヤメ検検察庁礼賛しかしないと思い込んでいる程度のレベルの方は、このブログは読まないほうが良いと思いますね。

硫黄島元米兵士 メディアに続々 イラク戦行き詰まり影響

http://www.sankei.co.jp/news/061104/kok011.htm

父親たちの星条旗」は、2000年に出版された同名のノンフィクション(邦題=硫黄島星条旗)が原作。10月20日から全米で公開され、生々しい戦闘描写の一方、強い反戦メッセージも込められている。

父親たちの星条旗」は、先日観ましたが、なかなか心に残る、良い映画だったと思います。ネタバレになるので、ストーリーは言いませんが、静かな(「強い」と言うよりも)反戦メッセージ、といったものが感じられました。
人には戦うべき時がありますが、戦うことの虚しさということも、また事実であり、無用な戦いは避ける必要もあります。
映画を通じて、いろいろと考えてみるのも有益だと思います。次は「硫黄島からの手紙」です。

六本木プリンス売却、Xマスで営業終了

http://www.nikkansports.com/general/p-gn-tp0-20061105-112834.html

六本木プリンスは84年、旧麻布プリンスホテル跡地との等価交換で入手したフィンランド大使館跡に完成した。建築家の黒川紀章氏が設計し、地上9階、地下1階建てで客室は216室。吹き抜けの中庭にはシースルー・プールがあり、囲むように配置されたレストランから泳ぐ人の姿が眺められる、未来的な都市型ホテルと注目された。

バブリーな時代の六本木の象徴だった。しかし、バブル景気がしぼむと流れが変わった。交通の便がやや悪く「陸の孤島」と呼ばれた。施設の老朽化が進んで収益力が低下。西武グループのホテル事業再編の一環として、東京都内に10あるプリンスホテルの中で、最初の売却対象になった。

人の世の栄枯盛衰を、しみじみと感じますね。今は古ぼけたホテルになってしまいましたが、颯爽と屹立し、多くの人々の愛や夢を集めた時期が、懐かしく思い出されます。
今、脚光を浴びているいろいろなものも、時が経てば、こういった末路をたどることになるのでしょう。諸行無常ということですね。

フセインに死刑判決、シーア派住民148人殺害事件で

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061105-00000012-yom-int

今後、懸念されるのは、親フセイン勢力をさらに刺激するなどして、イラクの治安がますます悪化し、収拾がつかない泥沼状態(既にそういう状態になっているようですが)に陥るということでしょう。
ハードランディングを狙って失敗し、周辺も巻き込み、機体も乗客も粉々に砕け散る航空機にようになりつつあるようで、極めて憂慮すべき事態です。
今さらながら、ソフトランディングできなかったのか、という疑問が出てくることは避けられないでしょう。