囲碁AI「AlphaGo」や「DQN」の開発元DeepMindが「スタークラフト2」で最強のAI構築に挑戦中

人工知能(AI)はいつどの分野で人間を追い抜かしていくのか？という研究の中では、「スタークラフトは2018年頃から2033年頃にかけてAIに追い抜かれる」という予測が出ているのですが、実際に「スタークラフト2」を人間よりも上手にプレイできるAIを開発すべく、DeepMindとBlizzardが動き出しています。

DeepMind and Blizzard open StarCraft II as an AI research environment | DeepMind
https://deepmind.com/blog/deepmind-and-blizzard-open-starcraft-ii-ai-research-environment/

Blizzard and DeepMind turn StarCraft II into an AI research lab | TechCrunch
https://techcrunch.com/2017/08/09/blizzard-and-deepmind-turn-starcraft-ii-into-an-ai-research-lab/

Googleの親会社であるAlphabet傘下のAI研究企業がDeepMindです。DeepMindといえば、中国の最強棋士を打ち負かした囲碁AI「AlphaGo」やゲームを自ら学んで人間以上のプレイをするAI「DQN」などを開発してきた企業です。

そんなDeepMindは、ゲーム開発企業Blizzardが2016年に開催した「Blizzcon 2016」の中で、SF戦略ゲーム「スタークラフト2」とコラボレーションしてオープンなAI研究環境を構築するという計画を発表しました。

囲碁チャンピオンを打ち破ったGoogleの人工知能チーム「DeepMind」が次に挑戦するのはゲーム「スタークラフト2」 - GIGAZINE

この計画が実際にスタートしており、DeepMindとBlizzardは機械学習APIや大規模なゲームリプレイデータセット、オープンソースのDeepMindツールセットなどを含む最新のツールを提供しています。

以下のムービーはAI研究のために提供されているツールのひとつ「PySC2」の動作をムービーにしたもの。PySC2はAIがゲームをプレイするための柔軟で使いやすいインターフェースを提供するというツールで、ゲームの基本的な視覚的および空間的要素を維持しながら、ユニットタイプ、状態、地図の視認性などの要素を互いに分離した「フィーチャレイヤー」に表示しています。

DeepMind open source PySC2 toolset for Starcraft II - YouTube


さらに、Blizzardは最新のスタークラフト2APIで、クラウド上で実行できるように作られたLinux・Windows・Mac向けのパッケージを提供しています。また、オフラインでAI対AIのバトルが行えるようになったり、人間のプレイヤーから匿名でゲームのリプレイを提供してもらったりすることで、AIが自己学習するためのデータを着実に増やしているそうです。

スタークラフト2は基本的にAI研究にとって非常に有用な環境だそうで、これはゲームの複雑さと多様性、そして個々の試合において勝利への道筋が複数存在するといった部分が影響しているとのこと。また、プレイヤーは資源の管理や生成、軍隊の指揮、防御施設の建設などさまざまな要素を同時に進めていく必要があり、加えて、ゲームに関する全ての情報がすぐに利用できるわけではないので、プレイヤーは前提と予測に基づいた行動をとる必要があるため、これまでDeepMindのAIがチャレンジしてきたものよりもはるかに複雑なタスクを要求されるというわけです。

ただし、すべてを同時にこなすAIを開発することはあまりに困難なことであるため、タスクを分解して研究を進めている模様。資源を回収したり設備を構築したりと、ゲーム内でのアクションを細分化してそれぞれを実行可能にし、最終的には人間のプレイヤーに勝てるようなAIを作成するというわけ。


DeepMindの目標は人間のプレイヤーよりもスタークラフト2を上手にプレイするAIの作成です。DeepMindはこれが既存の研究の推進に役立つことを望んでおり、そのために研究コミュニティやツールをオープンソースでリリースしています。