<社説>朴前大統領逮捕 韓国政治の変革進めよ


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 韓国検察が前大統領、朴槿恵容疑者を収賄や職権乱用などの容疑で逮捕し、拘置所に収監した。検察は今後、取り調べを本格化させる。

 韓国憲政史上初となった大統領職からの罷免を受け、今後は起訴され、刑事被告人として法廷に立つことになる。検察は疑惑を解明し、真相を明らかにしてほしい。
 朴前大統領は親友の崔順実被告と共謀し、韓国最大の企業集団、サムスングループから約298億ウォン(約30億円)という巨額の賄賂を受け取るなどした疑いが持たれている。さらに検察などは、大企業に資金拠出を要求した強要や職権乱用、公務上の秘密漏えいなど計13件の容疑で崔被告らとの共謀を認定している。
 韓国で大統領経験者の逮捕は盧泰愚、全斗煥両氏に続いて3人目だ。軍人出身の大統領として、収賄罪のほか内乱罪などにも問われた2人と朴前大統領を単純に比較することはできない。ただ根底にあるのは強大な大統領権限と、そこから恩恵を受けようとする財閥との癒着の構図だ。
 今回の事件もそうだが、韓国政治は大統領が権限を私物化する悪弊を繰り返してきた。これを機に権力が集中する大統領周辺の不正防止に向けた制度改革を実行する必要がある。腐敗の温床となってきた政治風土を変革できるのか、韓国民主主義の真価が問われている。
 まずは「帝王的」とまでいわれる大統領権限の抜本的な見直しを考えるべきだ。このままでは保革どちらの候補が大統領になっても、権力型スキャンダルの構図から抜け出すことは困難だ。類似事件が数年後に起きてもおかしくない。
 1987年に改正された現行憲法は強い大統領権限を認めている。権限を分散させる改憲の必要性についての国民的な議論が求められる。
 今回の事件で、保守と革新の対立が韓国社会の広範囲に拡大した。容易には修復することができない亀裂を社会に残している。この分断状況を克服することも課題だ。対立が続けば政局の混乱は長期化する懸念がある。
 政治と財界のもたれ合いの関係を絶ち、公正な社会を目指す機運を高めていく必要がある。今回の試練を乗り越え、韓国民主主義の深度を上げる絶好の機会として捉えたい。