本年度の北海道文化奨励賞を受賞した記念の個展。
50代の脂の乗り切った活躍を見せる作家が、新しい展開をみせた。
(会期が終わってからの紹介になってしまい申しわけありません)
谷口明志さんの近年の作品は「線を描く」ことに注目するとわかりやすい。
ふつうの画家は、四角形の紙や布に線をひく。
しかし、谷口さんの線は、そのような制約を飛び越えて、天井や床、さらには空中や床下までも走る。空間全体を線が自在に駆け巡るのだ。昨年の市立小樽美術館での個展も、そういう発想で生まれたものだと思う。
今回の個展では、線が実際に書かれたものではなく、すべて影で構成されている。昨年までも、一部に影による線が導入されてはいたが、今回初めて、影が主役になった。数センチから約20センチまで高さが異なる針金を、壁に垂直に取り付け、光源からスポットライトをあてる。その針金がつくる影のてっぺんの位置に針金を設置する。
その作業を何度も繰り返し、ひとつながりの影による線が、壁に書かれているように見えてくる。
針金の数は合計250から300はあるようだ。
光源が複数あるので、左からの光源の線と右からの光源の線で、壁には格子模様ができているようにも見える。
針金の突起は、数は多いとはいえ、小さいから、搬入は容易だろうし、使いまわしもできるだろうが、設置作業は何日もかかって大変だったときく。
おもしろいのは、今回の展示では、影という「虚」が主役で、実体のある針金のほうが脇役になっていたことだ。
また、これまで重力や壁面の制約を離れて3次元的な自由を獲得していた線が、壁にぴったりとはりつく形(影なのだから、あたりまえだが)になったことも、谷口さんの創作の系譜の中では先祖がえりしているようで、興味深い。
2016年2月21日(日)~3月13日(日)正午~午後6時(最終日~午後5時)、火休み
ギャラリーレタラ(札幌市中央区北1西28)
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