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西鶴・近松に危機迫る、大阪・中之島図書館の空調故障

 井原西鶴の筆跡が残る懐紙や近松門左衛門の浄瑠璃本など、大阪府立中之島図書館(大阪市北区)が保管する古典資料が、危機にさらされている。

 劣化防止用書庫の空調機が10年余り前に故障したが、財政難の府が設備更新を認めないからだ。現時点で影響は見られないが、今後、損傷が出る可能性があり、担当者は「早く空調設備を取り付けてほしい」と嘆いている。

 貴重書庫と名付けられたこの書庫は1960年、温湿度を調整できるよう空調機を備えて5階に設置された。約70平方メートルで、直射日光などを防ぐため鉄の二重扉で窓のない構造だ。

 保存されている資料は約8000点。元禄5年(1692年)に刊行された井原西鶴の「世間胸算用」初版本全5巻を始め、西鶴が自筆で俳句を書き、知人に贈ったとされる「申年歳旦(さるどしさいたん)懐紙」、弘化4年(1847年)ごろ、近松門左衛門の浄瑠璃本などを個人がまとめた「往古梨園集」全3巻など希少価値が高い資料が多い。

 図書館側が空調機の故障に気付いたのは、1995年ごろ。保存資料をカビや乾燥から守る最適温度は20〜25度、湿度は50%前後だが、空調機が十分作動しないため温度が10度前後、湿度が70%近くになることもあるという。

 このため、府に空調機更新費として1350万円を予算要求しているが、府は「優先順位が低い」としており、新年度予算にも計上していない。

 約52万点の歴史資料を保管する京都府立総合資料館では、湿度が劣化の最大原因として除湿器で書庫の湿度を55%程度に調節している。和歌山県立図書館でも、約540点の貴重資料を24時間空調管理で保管している。

 東京文化財研究所の石崎武志・保存科学部長は「温湿度は資料保存に大きく影響を及ぼす。文化財などを保管する大半の施設で空調管理がなされており、劣化を防ぐためにも設置が望ましい」と話している。

2007年2月23日3時3分  読売新聞)
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