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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



――デザイナー出身で、ビギグループのような大きい組織で社長業に就かれている方にお話を聞く機会はなかなかないのですが、クリエーションと経営のバランスというかプライオリティーについてはどうお考えですか?

武内一志「クリエーションが先だと思ってます。数字が先にあってのものづくりは、やはりどこかで失敗すると思っています。素敵だな、とか、夢を見るような、まだ世の中にない、こうやったら面白いと思ってくれるとか……そういう感性の部分があって、それをビジネスにするにはどうしたらいいだろう?っていう順番で考えるようにしてます」

久保雅裕「本来はそれがあるべき姿だと思います。課題解決型でないといけないですよね。それが正解だとわかっていても実行できない経営者の方が多いような気はしますが……どうしてもマネタイズの方が優先されちゃってますよね」

武内「売れているとこれでいいんだとなりますよね。みんな同じことを繰り返そうとするんですけど、結局飽きられるわけで。何か次に挑戦したり進化させたりしないといけないんですけど、どうも同じことを繰り返したがる傾向がある。新鮮じゃないと思っても、売れるからやっちゃうっていう発想ではもうやっていけなくて。やっぱりどこかでそれを変えていかなきゃいけないんですけど」



――そういうフィロソフィーってビギグループ、メルローズ社内にもともとあったものですか。それとも武内さんが経営に就かれるようになってから、そういうマインドが醸成された?

武内「もともとビギグループは卸と販売が別運営になっていたんです。まずそこをひとつにして、意志の疎通を図ってきました。何がいちばん大事かと言うと、やはり服はお客様のためにあり、感動を与えるんだと。まずそこを出発点にする。情報もあふれている時代なので、同じことを繰り返したら飽きられる、新しいものや角度を変えた提案ができるようにしなきゃいけないってことを言うようにしてきています」

久保「ファッション業界は、製販一体、製販分離が10年サイクルくらいで繰り返されてますよね。製販分離したときに、売れているときは営業が強く、利益も出てくるから、まあいいやってなるんですけど、売れなくなるとやっぱり売れるブランドをメインに扱ったり、売れないブランドはやらないってことになる。そうすると、新しい芽が育たないですよね。製販一体の考えのもと、啓蒙活動もあるでしょうし。たとえば最前線のショップスタッフのマインドの変化っていうのは目に見えるものですよね」

武内「そうですね。ずいぶん変わってきたと思います。ブランドが目指すものやメッセージが、関わるスタッフの意識下で統一されてきていると感じますね」



――今日お邪魔したサードマガジンは、ショールーミングの機能をいち早く取り入れた存在だと思いますが、どういった経緯で生まれた業態なのでしょうか。

武内「もともとマルティニークのデザインに携わっていたスタッフが新しいコンセプトのブランドをやろうかという話をしてる中で、販売形態自体も新しいもの――いずれECを始めるのではなく、ECから始めるというブランド――があってもいいのではないかと。ECは安いものとかそういうイメージが強いんですけど、ここはきちんとファッションをやっていこうと。そのためにはやはりひとつショールームがいるし、来てもらった人にちゃんと伝えることが大事だよねと。ECサイトにはコーディネートの提案とか、そういうことをきちんと載せるようにして。まあそれが始まりです。これからのEC 時代において、ロープライスだけじゃなくて、レギュラープライスで売っているブランドを作りたい。そのためにどうしたらいいかっていうところでショールームの機能を持った店舗が生まれたということです」



――ショールームのロケーションとしてはどうでしょうか。

武内「スタイリストさんが来やすいという部分ではよいのですが、お客様の買い物となるとちょっと不便かもしれませんね(笑)」

――それでもご近所の方のお買い物にはいいですよね。散歩がてら立ち寄ったり。

武内「そうですね、犬の散歩ついでに寄っていただける方もいらっしゃいます。ショールーミングをコンセプトとしたお店というのは一見して分からないので、商品を持って帰るつもりで来たお客様でご要望の商品の在庫がない場合は、お店のコンセプトを説明して、翌日にはご自宅に届きますのでとご案内させていただくと、"持って帰らなくていいのは便利ですね"というお声もいただくようになりました」



――海外ではそういう買い物のスタイルがあり、機能としては近いものがありますよね。

武内「サードを始めたきっかけのひとつにNYなど海外ではショールーミング・ショップが成功している、という背景がありました。日本でもこういうスタイルが徐々に浸透していくというところでしょうか。新しいことをやっていかないと、おっしゃるとおり、ブランドは陳腐化するし停滞しますよね。大きな組織の中で、経営含めてのクリエイションを推し進めていくというのは大変なことであり、一方で新しい局面が見えてきて楽しいことでもありますから」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき

※2020年11月の「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」番組収録後インタビューより



■武内一志(たけうち かずし)
ビギホールディングス・メルローズ代表取締役社長。1985年にビギ(現ビギHD)にデザイナーとして入社。92年にグループ会社のメルローズに移籍し、「マルティニーク(MARTINIQUE)」、「ティアラ(TIARA)」など主力ブランドを立ち上げ、商業施設への出店を果たした。2000年に常務取締役に就任、07年から現職。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。



■第39回のゲストは株式会社ビギホールディングス/株式会社メルローズの武内一志さん!







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