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■いのこはるき作品展 (6月21日まで、北見)

2011年06月20日 23時44分33秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 昨秋、オホーツク美術協会展とNHKぎゃらりーでの個展で作品を拝見した北見のいのこはるきさん。
 その後も、画廊喫茶・薔薇館での個展、オホーツク美術協会春季展、さらに北方美術協会展にも出品しており、非常に精力的な制作・発表ぶりだ。ぜ

 前回は、ジャクソン・ポロックやヘレン・フランケンサーラーなど米国の抽象表現主義の「熱い抽象」を思わせる大作のアクリル画が目を引いた。
 今回の個展でも、紫の濃淡が織りなす画面に、白の色斑を配し、前進色と後退色のつくるイリュージョンが興味深い「湧いてくる 2」や、群青が美しい「生」など、抽象画の醍醐味だいご み を感じさせる絵が並んでいる。 




 アクリル絵の具を直接、ベニヤ板2枚にぶちまけた大作「湧いてくる 1」。
 一見デタラメに制作しているように見えて、実は構図や、色を重ねる順番などは、考えられている。ポロックのアクションペインティングが、構図を周到に考えた末のものであるのと同様だと思う。




 「てんてん 1」「てんてん 2」。
 左も右も、白い点が散らばっているが、右の「てんてん 1」は白を上から付けたのではなく、塗り残したもの。
 塗り残した絵のほうが、奥行き感が出ているように見えるのが、おもしろい。




 さて、今回の会場でいちばん目立っていたのが、小さな段ボール紙を支持体にして、それを会場でつなぎ合わせた作品だった。
 いずれも、スーパーマーケットやドラッグストアなどのレジの近くに、包装用に「ご自由にお持ち帰りください」と書かれて積まれている、清涼飲料水用の段ボール箱である。

 左側は「赤と青」。
 段ボールの文字などが透けて見えるように赤い塗料を塗り、その上から、青い絵の具で着色した紙を手でちぎって貼りつけたもの。49片からなる。
 
 右側の「毛糸」は35の部分をつないだ作。
 あらかじめ黒く塗っておいた段ボールの上に、解いたボンドに浸した赤い毛糸を置いたもの。
 完全な即興ではないが、10分もすればボンドが固まってしまうので、毛糸の配置は、すばやく行わなくてはならない。
 構図を引き締めるため、青い毛糸を横に張り渡している。

 「楽しいからやってるだけ。別にコンセプトとか、訴えたいものがあるということではないんです。ただ、職人的な『うまさ』に陥ることがないように、気をつけてますね」
と、いのこさん。



 「毛糸」の拡大図。
 毛糸は最初に適当な長さに切るので、例えば黒い紙の上で片方の輪を大きくすれば、反対側が引っ張られてしまう。かなり即興性の高い方法といえる。



 いずれも、これまでつくったうちの何割かしか、展示できなかったという。
 現場で考えながら接合し並べていくので、時間がかかるのだ。

 意味から切断され、純粋な線と色の遊びを追求するいのこさんの姿勢は、まさにモダンアートそのものだと、筆者には思われる。


2011年6月15日(水)~21日(火)9:30~5:30(最終日~2:00)
NHKぎゃらりー(北見市北斗町2)

いのこはるき作品展(2010年)



・「大通」から北海道北見バス「9 緑が丘線」に乗り「NHK」降車、すぐ。
・「大通」から北海道北見バス「7 若葉線」に乗り「北斗高校」で降車、350メートル、約5分
・JR北見駅から、目の前の通りを直進し1.2キロ、徒歩約16分


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