昨秋、オホーツク美術協会展とNHKぎゃらりーでの個展で作品を拝見した北見のいのこはるきさん。
その後も、画廊喫茶・薔薇館での個展、オホーツク美術協会春季展、さらに北方美術協会展にも出品しており、非常に精力的な制作・発表ぶりだ。ぜ
前回は、ジャクソン・ポロックやヘレン・フランケンサーラーなど米国の抽象表現主義の「熱い抽象」を思わせる大作のアクリル画が目を引いた。
今回の個展でも、紫の濃淡が織りなす画面に、白の色斑を配し、前進色と後退色のつくるイリュージョンが興味深い「湧いてくる 2」や、群青が美しい「生」など、抽象画の醍醐味を感じさせる絵が並んでいる。
アクリル絵の具を直接、ベニヤ板2枚にぶちまけた大作「湧いてくる 1」。
一見デタラメに制作しているように見えて、実は構図や、色を重ねる順番などは、考えられている。ポロックのアクションペインティングが、構図を周到に考えた末のものであるのと同様だと思う。
「てんてん 1」「てんてん 2」。
左も右も、白い点が散らばっているが、右の「てんてん 1」は白を上から付けたのではなく、塗り残したもの。
塗り残した絵のほうが、奥行き感が出ているように見えるのが、おもしろい。
さて、今回の会場でいちばん目立っていたのが、小さな段ボール紙を支持体にして、それを会場でつなぎ合わせた作品だった。
いずれも、スーパーマーケットやドラッグストアなどのレジの近くに、包装用に「ご自由にお持ち帰りください」と書かれて積まれている、清涼飲料水用の段ボール箱である。
左側は「赤と青」。
段ボールの文字などが透けて見えるように赤い塗料を塗り、その上から、青い絵の具で着色した紙を手でちぎって貼りつけたもの。49片からなる。
右側の「毛糸」は35の部分をつないだ作。
あらかじめ黒く塗っておいた段ボールの上に、解いたボンドに浸した赤い毛糸を置いたもの。
完全な即興ではないが、10分もすればボンドが固まってしまうので、毛糸の配置は、すばやく行わなくてはならない。
構図を引き締めるため、青い毛糸を横に張り渡している。
「楽しいからやってるだけ。別にコンセプトとか、訴えたいものがあるということではないんです。ただ、職人的な『うまさ』に陥ることがないように、気をつけてますね」
と、いのこさん。
「毛糸」の拡大図。
毛糸は最初に適当な長さに切るので、例えば黒い紙の上で片方の輪を大きくすれば、反対側が引っ張られてしまう。かなり即興性の高い方法といえる。
いずれも、これまでつくったうちの何割かしか、展示できなかったという。
現場で考えながら接合し並べていくので、時間がかかるのだ。
意味から切断され、純粋な線と色の遊びを追求するいのこさんの姿勢は、まさにモダンアートそのものだと、筆者には思われる。
2011年6月15日(水)~21日(火)9:30~5:30(最終日~2:00)
NHKぎゃらりー(北見市北斗町2)
■いのこはるき作品展(2010年)
・「大通」から北海道北見バス「9 緑が丘線」に乗り「NHK」降車、すぐ。
・「大通」から北海道北見バス「7 若葉線」に乗り「北斗高校」で降車、350メートル、約5分
・JR北見駅から、目の前の通りを直進し1.2キロ、徒歩約16分
その後も、画廊喫茶・薔薇館での個展、オホーツク美術協会春季展、さらに北方美術協会展にも出品しており、非常に精力的な制作・発表ぶりだ。ぜ
前回は、ジャクソン・ポロックやヘレン・フランケンサーラーなど米国の抽象表現主義の「熱い抽象」を思わせる大作のアクリル画が目を引いた。
今回の個展でも、紫の濃淡が織りなす画面に、白の色斑を配し、前進色と後退色のつくるイリュージョンが興味深い「湧いてくる 2」や、群青が美しい「生」など、抽象画の醍醐味を感じさせる絵が並んでいる。
アクリル絵の具を直接、ベニヤ板2枚にぶちまけた大作「湧いてくる 1」。
一見デタラメに制作しているように見えて、実は構図や、色を重ねる順番などは、考えられている。ポロックのアクションペインティングが、構図を周到に考えた末のものであるのと同様だと思う。
「てんてん 1」「てんてん 2」。
左も右も、白い点が散らばっているが、右の「てんてん 1」は白を上から付けたのではなく、塗り残したもの。
塗り残した絵のほうが、奥行き感が出ているように見えるのが、おもしろい。
さて、今回の会場でいちばん目立っていたのが、小さな段ボール紙を支持体にして、それを会場でつなぎ合わせた作品だった。
いずれも、スーパーマーケットやドラッグストアなどのレジの近くに、包装用に「ご自由にお持ち帰りください」と書かれて積まれている、清涼飲料水用の段ボール箱である。
左側は「赤と青」。
段ボールの文字などが透けて見えるように赤い塗料を塗り、その上から、青い絵の具で着色した紙を手でちぎって貼りつけたもの。49片からなる。
右側の「毛糸」は35の部分をつないだ作。
あらかじめ黒く塗っておいた段ボールの上に、解いたボンドに浸した赤い毛糸を置いたもの。
完全な即興ではないが、10分もすればボンドが固まってしまうので、毛糸の配置は、すばやく行わなくてはならない。
構図を引き締めるため、青い毛糸を横に張り渡している。
「楽しいからやってるだけ。別にコンセプトとか、訴えたいものがあるということではないんです。ただ、職人的な『うまさ』に陥ることがないように、気をつけてますね」
と、いのこさん。
「毛糸」の拡大図。
毛糸は最初に適当な長さに切るので、例えば黒い紙の上で片方の輪を大きくすれば、反対側が引っ張られてしまう。かなり即興性の高い方法といえる。
いずれも、これまでつくったうちの何割かしか、展示できなかったという。
現場で考えながら接合し並べていくので、時間がかかるのだ。
意味から切断され、純粋な線と色の遊びを追求するいのこさんの姿勢は、まさにモダンアートそのものだと、筆者には思われる。
2011年6月15日(水)~21日(火)9:30~5:30(最終日~2:00)
NHKぎゃらりー(北見市北斗町2)
■いのこはるき作品展(2010年)
・「大通」から北海道北見バス「9 緑が丘線」に乗り「NHK」降車、すぐ。
・「大通」から北海道北見バス「7 若葉線」に乗り「北斗高校」で降車、350メートル、約5分
・JR北見駅から、目の前の通りを直進し1.2キロ、徒歩約16分