NASAのケネディ宇宙センター39A発射台から打ち上げられたサターンVロケットが人類を月に送り出してから、50年以上がたった。そして、この発射台は再び歴史の舞台となる。
順調に行けば、米国時間2月6日午後(日本時間7日未明)に米スペースX社のロケット「ファルコンヘビー」が打ち上げられる。今回の打ち上げは、今までにない風変わりな挑戦だ。というのも、ロケットに搭載されるのは米テスラ社の電気自動車、深紅のテスラ・ロードスターだからだ。
このスポーツカーは、打ち上げから6時間ほど飛行したのち、地球と火星の公転軌道を遷移する楕円軌道に向かい、半永久的に太陽を周回し続けることになる。その様子は、車に搭載されている3台のカメラがとらえることになるだろう。(参考記事:「火星移住 人類の挑戦」)
Webcast has ended!
— SpaceXUpdates (@SpaceXUpdates) 2018年2月6日
Still awaiting word from the core booster.#FalconHeavy #SpaceX pic.twitter.com/3R3C1G4d5k
計画が成功すれば、現在使われているもっとも強力なロケットの2倍の能力を持つロケットがデビューすることになる。地球の低軌道まで打ち上げることができる積載物の重量は63.8トン。やがては人を宇宙へ運ぶことになるかもしれない。ファルコンヘビーを超える重量の積載物を打ち上げた実績があるのは、アポロ宇宙船の月面着陸を支えたサターンVのみだ。
宇宙政策に詳しい米ジョージ・ワシントン大学のジョン・ログスドン氏は、「サターンVの初テストが行われた1967年以来、もっとも重要な試験飛行となるでしょう」と話す。(参考記事:「アメリカ初のロケット打ち上げ、1950年」)
日本時間の7日未明に打ち上げへ
打ち上げは、米国東部標準時2月6日午後1時30分(日本時間7日午前3時30分)以降に行われる予定だ。必要があれば、7日以降に延期される可能性もある。このイベントはスペースX社によってライブ中継されるので、興味がある方は見てみるといいだろう。
ただし、失敗する可能性も十分にある。その点については、打ち上げに先立ち、スペースX社CEOのイーロン・マスク氏も強調する。39A発射台でロケットが爆発するようなことにでもなれば、ファルコンヘビーだけでなく、サターンVやNASAの数々のスペースシャトルを打ち上げてきた発射台まで炎上することになる。NASAの宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運ぶというスペースX社の計画はすでに相当遅れているが、それが頓挫することにもつながるはずだ。
ログスドン氏は、発射台が爆発すれば、「歴史的遺産が破壊されるにとどまらず、人類の宇宙飛行を長いこと妨げることになるでしょう」と話す。「NASAはもうリスクを冒さないだろうと言われています。今回すでにリスクを冒しているのですから」(参考記事:「スペースXのロケット爆発、悲劇から学ぶ」)