「緑のダム」へ、100年の計 針葉樹を間伐、保水力高い広葉樹植える

2023/6/1 12:30
数十年単位で樹木を育てている水源涵養林。針葉樹の間に落葉広葉樹を植えて複層林化を目指している=山形市上宝沢

 水源の維持に向け、山形市は蔵王連峰の一部で水源涵養林を管理している。基礎自治体が担っている事例は珍しく、目標は森林による「緑のダム」整備だ。先に植えたスギなどの針葉樹を間伐し、保水力が高い落葉広葉樹を植え、長い年月をかけて複層林の形成を目指している。市の水道事業は今年5月に通水100周年を迎えた。6月2日には記念式典を予定しており、同市は涵養林の重要性を一層、市民にPRしていくとしている。

 市の水道事業は1918(大正7)年に馬見ケ崎川の伏流水を水源とする浄水場の建設工事を始め、23年に給水を開始した。その後、山林は戦前戦中の乱伐で荒廃し、戦後は木材不足を補うため市が所有者や国の意向を受けてカラマツやスギを育てた。

 森林がダム効果を発揮するには保水力が高い広葉樹林が望ましく、昭和期に植えた針葉樹は定期的に間伐するなどして払い下げ、30年前からは広葉樹を植えるようになったという。針葉樹の林に広葉樹を交ぜた複層林にし、最終的に手入れをほとんど必要としない自然の状態に持っていくのが目標だ。

 だが、広葉樹の生育は長い年月を要するため、複層林化しているのは全体のわずか4%にとどまっている。4年前にブナなど広葉樹約300本を植えたエリアは針葉樹を全て切り倒したことで日陰がなくなってしまった。広葉樹はあまり光を必要としない「陰樹」なため、苗木の2~3割は根付かなかったという。

 針葉樹を植えた一帯を、自然の森に近づけるには長い歳月を必要とする。担当者は「100年後を見据え、森林が持つ本来の機能を生かせる水源涵養林にしていく」と力を込めた。

 記念式典は同市内のホテルメトロポリタン山形で行われ、佐藤孝弘市長が式辞を述べるとともに、水道事業100年の歴史を振り返る。

水源涵養(かんよう)林 水源地の周辺にあり、森林の雨を蓄え、土砂の流出を防ぎ、落葉などで水を浄化する機能を発揮する。山形市の水源涵養林は馬見ケ崎川上流の不動沢周辺にあり広さは73ヘクタール。このうち4割ほどが天然林。

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