電力小売り、全面自由化で一致 経産省の専門委
経済産業省の電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大教授)は18日の会合で、電力の小売りを家庭まで含めて全面的に自由化する方針で一致した。家庭向け料金の規制もなくす方向で大筋合意した。
政府は早ければ電気事業法の改正案を来年の通常国会に提出する見通し。ただ、移行期間を設けるべきだとの声もあり、実施は2014年度以降になりそうだ。
電力小売りの自由化は2000年以降、段階的に拡大。契約電力50キロワット以上の工場やオフィスビルでは、新電力(特定規模電気事業者、PPS)の参入を認めているが、一般家庭には地元の電力会社しか供給できない。
委員会では「絶対に自由化すべき。いまのままで良いと言う人はいない」(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の辰巳菊子理事)などと、家庭向けの参入規制を撤廃する方針で一致。自由化が実現すれば、再生可能エネルギーの電気だけ売る会社などが登場する可能性があり、家庭の選択肢が広がる。
家庭向けの料金は燃料費や人件費などの原価に利潤を上乗せした「総括原価方式」で決める規制が残る。小売り自由化では料金規制を撤廃するかどうかが焦点となるが、委員の間では「(料金規制もなくさなければ)自由化とは呼べない」(中央大の安念潤司教授)との意見が目立った。
電力会社に契約を断られた家庭に誰が電気を供給するかも焦点となった。現在は電力会社は家庭への供給を拒めないが、自由化でその義務が外れるからだ。委員会では安全網としていずれかの事業者に最終保障サービスを提供させる方向でほぼ合意した。
松村敏弘東大教授は「競争が働くかどうか心配。自由化した企業向けも十分に競争が働いていない」と指摘した。電力会社同士の競争を促すため、送配電部門の中立化なども課題となっている。