たかゆうの読書日記

本が好きです。読んだ本を中心に、映画・マンガ・テレビなどについても言及できればと思います。

勉強になったオウンドメディア運営のおすすめ本12冊

そもそもメディアって何なのか? そしてメディアはどこへ向かうべきなのか? 「メディア」のあり方を考える上で、参考になりそうな本をまとめて紹介していこうと思います。

オウンドメディアおすすめ本

企業が運営するオウンドメディアのおすすめ本を紹介していきます。

『オウンドメディアのつくり方』

オウンドメディア入門書でありながら、立ち上げから運用まで全体的な流れを把握することができます。

著者が数々のオウンドメディアを立ち上げてきたからこそ、どのようなスタッフが必要なのか、どのくらいの費用がかかるのか、現場感のある内容になっています。

『オウンドメディアのやさしい教科書。』

もう1冊、入門書を。オウンドメディア運営でつまずきやすい課題から、どうやって分析すればいいのかまでが網羅されています。やはり分析と改善をしなければ、オウンドメディア成功まで導くことはできません。

知っておきたい失敗するオウンドメディアについて解説しています。

『四葉幸のハッピーオウンドメディア』

マンガでわかるオウンドメディアの入門書!

食品会社のマーケティング企画部に所属している四葉幸が主人公。マスメディアでのマーケティングから、オウンドメディアに転換したときの難しさが物語から伝わります。営業部の反発など内側を巻き込む方法をポイントしているのがリアルです。

『現場で使える Web編集の教科書』

メディア運営では絶対に必要な「編集」にフォーカスした一冊。

まず本書前半でまとまっている、Web編集の基礎知識が、歴史やビジネスモデルに触れていて、読み応えがあります。そして後半は具体的なメディア運営者の話になっていきますので、かなり実用的。

「北欧、暮らしの道具店」「ジモコロ」「弁護士ドットコムニュース」など、いま成功しているメディアの運営術が詰まっています。

商業メディアおすすめ本

メディア自体で収益化を考える商業メディアのおすすめ本になります。

『ブランド「メディア」のつくり方』

まずは、メディアにとって至難の技とも言えるブランドの作り方から。本書は、ウェブや紙のメディアからヒアリングして、メディアのブランド構築の仕方を探っていきます。

登場するのは、Yahoo!、ライブドア、R25、ブルータスなどなど。発刊されたのは2010年ですが、今もって参考になる内容です。メディアのブランディングってめちゃくちゃハードル高いので。

Yahoo!(奥村倫弘)

Yahoo!は、ニュースを起点に、ユーザーに有益な情報を提供することを目指しているわけですね。面白い記事が呼び水で、知っておくべきニュースを読ませる。このバランスを意識している。PVだけを狙っていると、クソ記事が乱立するとハッキリ言っているのが印象的です。

ライブドアニュース(田端信太郎+中川淳一郎)

王者Yahoo!ニュースがいるなかで、ライブドアニュースは下世話感を出していこうとしている。テレビ局のやらせ疑惑などを含めて、マスメディアのチェック機能も担っていて、今もその色は出ているのかなと。新聞や雑誌が一次情報を発信しているなかで、ネットメディアが二次加工だけでいいのか、といった問題点も言及しています。PVは稼がないといけないけど、世の中への価値提供も大事。やっぱりPV至上主義に警鐘を鳴らしています。

R25(藤井大輔)

無料で雑誌が読めることで一世を風靡した「R25」は、主に記事広告について。「商品情報」×「編集力」=エンタメコンテンツにする。広告主・編集部・読者のトライアングルのバランスがとれているかを考えているそうです。

ブルータス(西田善太)

めっちゃ好きな雑誌です。「少人数制・ちょっと先・すべてを過剰に」がキーワード。広告への意識も高い!

星海社(柿内芳文)

現在は株式会社コルクに所属する柿内さん。タイトルは、身近度、中身度、対話度、衝撃度があるかで吟味する。すでにあるキーワード×編集力=ちょっと気になるキーワード に転換することも考えているとのこと。

『メディア・メーカーズ』

地に足のついたメディア論。田端信太郎さんの著書です。アーキテクチャにより、情報発信の仕方は劇的に変化しなくてはいけない。でもユーザーに尊敬されるメディアでなければ、ついてきてくれないのは、その通りだなぁと。

最古のコミュニケーションメディアは、洞窟壁画だったとしています。何かを伝えたいという発信者の思いがあるときに、それを伝達する「媒体・媒質」となるものこそがメディアの定義。メディアは必ず受け手を必要とするわけですね。

宇宙には無数の星があるが、天文学者が見つけなければ、多くの人にとってその星はないものと同じ。メディアの役割ににている。

ほか、メディアの分類やコンテンツを分類する三次元マトリックスもまとめられていて、参考になります。

メディアの分類

  • Media型 ヤフーニュースなど
  • Community型 送信者と受信者がいる、フェイスブックなど
  • Toll型 GメールやRSSリーダーなど

コンテンツを分類する三次元マトリックス

  • ストック 賞味期限が長いコンテンツ、源氏物語やウィキペディア
  • フロー 鮮度が命のコンテンツ、新聞テレビやツイッター
  • 参加性 食べログ、コントロールできないので責任がない。コントロール範囲を事前にユーザーに対して明確にすべき。やらせは起きにくい。
  • 権威性 ミシュラン、編集者の明確な意図があり、コントロールし、責任が発生し、権威が生まれる。やらせがあり得る。
  • リニア はじめから終わりまで見てもらえる。映画など。少人数から高課金。
  • ノンリニア デジタル上ほとんど。実用コンテンツ向き。多人数から小課金。あるいは広告モデル。

『メディア化する企業はなぜ強いのか?』

出版社の編集と、現状Webで起こっていることの対比がなされていきます。企業はメディア化して、情報発信していかなければならないわけで刺激を受けました。

本書での編集の定義は、「編集はゼロベースでも、新しいものを生み出せる」というもの。多くの人の理解を得るための手助けになるので、広報や宣伝にも援用でき、かなり汎用性が高いスキルだとしています。

物語とそれを形作るコンテンツ発信力

「出版社がコンテンツ制作能力の高さを保持したままで、デジタルマーケティングの能力を引き上げたらどうなるか?」というテーマでも語っていて、アメリカでは雑誌で知られる「ハースト社」がデジタルマーケティング大手の「icrossing」を買収するなど、その動きがあると指摘しています。これは今後、日本の出版社でも起こり得るかなと個人的にも思っています。

本書でも語られている通り、要はコンテンツ力なんですよね。コンテンツに力がなければ、その先がない。「物語とそれを形作るコンテンツ発信力」によって、ブランド力が生まれるとしています。

『メディア論-人間の拡張の諸相』

メディア論といえば、本書を外さないわけにはいかないでしょう。マクルーハン(1911―1980)はカナダの英文学者で、本書は1964年に刊行。メディア論のバイブルとも言えます。

メディアはメッセージである

マクルーハンで有名なのは、「メディアはメッセージである」という言葉ですね。これは、メディアにとって重大なのはその内容ではなく、メディアそれ自体であるということを意味します。すなわちテレビで放送される内容が低俗かどうかは本質的な問題ではない。メディアの形式こそが本質、というわけなんですね。

メディアとはあらゆるテクノロジー

マクルーハンの定義するメディアは幅が広いです。人間の機能が拡張されたあらゆる技術・テクノロジーを〝メディア〟としています。アルファベットも言葉もメディア。だから本書の目次には、貨幣、時計、印刷、写真も項目として並んでいます。

当時はテレビが隆盛を誇る時代で、インターネットはまだ一般的ではありませんでした。だが本書のはしがきに以下の文章があります。

われわれはその中枢神経組織自体を地球規模で拡張してしまっていて、わが地球にかんするかぎり、空間も時間もなくなってしまった。

先見性を感じさせる内容で、1964年にしてネット時代の到来を予言しているとも言えます。

マクルーハンの文章はかなり難解なのですが、チャレンジする価値はあると思います。

『ナタリーってこうなってたのか』

エンタメサイト「ナタリー」の裏側を赤裸々に綴ってくれます。サイト立ち上げ期の苦悩や記事の作り方など、ここまで明かしていいの?ってくらいの大盤振る舞い。ナタリーについて「早いね!」「遅いよ!」「ありがとう!」といったようにネット上では人格化されているんですね。ネット時代のブランド確立の目安だなと思います。

とにかくファン目線

ナタリーは、ほかには載ってないけれど、ファンなら知りたい情報を掲載するそうです。例としては、「笑っていいとも」のテレフォンのゲストなどは、まさにファン目線。ゴシップはやらないそうで、ファンがネガティブ情報を求めていないという信念から。ゴシップはファン以外が喜んでいるだけではないかという考えで、確かにそうかもしれません。

記事の作り方

記事の作り方もかなり細かく記載されています。朝10時に出勤、1人あたり数百件のウェブサイトをチェックしていく。アーティストや漫画家、事務所、出版社、レコード会社などTwitterアカウントもリストで巡回して、1人あたり十数本の記事を書いていく。朝から晩まで電話取材。ネタ帳が共有されていて、そのネタに最初に反応した記者が記事を書き始める。企画会議はしないそうです。

『5年後、メディアは稼げるか』

NewsPicks編集長である佐々木紀彦さんの著書で、刊行当時は東洋経済オンライン編集長。現状のメディアが苦悩し、試行錯誤している状況を、アメリカとの比較を交えながらまとめています。

佐々木さんもブランディングについて語っています。例に挙げたのはミシュラン。もともとはタイヤを売る会社で、料理ガイドにより知名度が上がった。編集の力が大きいんですよね。ハフィントン・ポストでも「トップ記事を決めるのはあくまで人間。情報があふれる中で、編集者の必要性はこれからむしろ増す」と言われているそうです。

メディア企業の3つの機能

  • 1.コンテンツを作る(調達、生産)
  • 2.コンテンツをパッケージ化する機能(編集、統合)
  • 3.コンテンツを届ける機能(流通、販売)

メディアはこれまでは出版において、しっかりとした仕組みがありました。だけど今後は“マネタイズ力が問われる”というのが、本書で何度も繰り返される主張となります。

編集者の役割は、キラリと光るタレントを発掘し、マネジメントすることに比重が移っています。いわば、芸能事務所のスカウトとマネジャーを一緒にしたような仕事です。編集者はこれまで以上に“目利き力”が問われるようになっているわけです

編集は目利きが大事ということですね。

起業家的ジャーナリズムにおいては、記者や編集者は、コンテンツクリエーターであり、プロデューサーであり、プログラマーであり、マーケターであり、プロモーターであり、そのすべてができなくてはいけない

ただコンテンツ作ってるだけでは厳しい時代に。

これからのメディア人が優先すべきは、自分の属する媒体の利益最大化ではありません。最終目標に置くべきは、「読者満足度の最大化」であり、「収益機会の最大化」です。

佐々木さんが考えるメディア界の救世主は、新しいビジネスモデルを創る「起業家ジャーナリスト」。マネタイズとメディア運営はセットということでしょうか。

マネタイズのモデルは8つ

  • 1 広告
  • 2 有料課金
  • 3 イベント
  • 4 ゲーム
  • 5 物販
  • 6 データ販売
  • 7 教育
  • 8 マーケティング支援

広告は収入としてデカいけど、それに頼りすぎもNG。読者第一主義を守りきるのと、顧客データを得るためには、独立採算を目指すべきなんですよね。アメリカのメーター制(一定量の情報は無料提供、より多くのコンテンツを閲覧するためには対価を支払う必要がある方式)も紹介していました。

福沢諭吉はメディア人だった

福沢諭吉をメディア人だと見たことがなかったので驚きました。福沢諭吉は時事新報を設立して、そこにテレビ欄を掲載したり、イベントを開催したりしていたそうです。『新聞人 福澤諭吉に学ぶ』、『文章読本』(谷崎潤一郎)、スティーブ・ジョブズのプレゼン本が、文章を書く上で参考になると紹介しています。

『米ハフィントン・ポストの衝撃』

ハフィントン・ポストの戦略が考察されています。ネットメディアとして権威を持たせる手法は、今なお日本のメディアでは参考になることばかり。

理念としては「公益サービス」である事を打ち出しているそうです。報道機関の利益ではなく公共の利益のために行われる報道。データマイニング(データを処理する)ではなく、ストーリーテリング(人間の物語を語る)を重視しているようで、事実を報じるだけでは人々を感化できない。物語にこそインパクトがあるというわけです。

ピューリッツァー賞受賞

ピューリッツァー賞を受賞したのが、2012年4月で創刊7年目だったんですね。ネット新聞の受賞は初めてでした。この受賞作は連載企画「戦場を越えて」。イラクやアフガニスタン戦争で重傷を負い、身体障害者になった人々についてレポートした記事で、デビッド・ウッド氏(当時66歳)が取材していて、ハフポスの正社員だったんですね。このデビッド氏は8ヶ月かけて書いた記事は10本のみ。ビジネス度外視の哲学がなければ、成り立ちません。

『計画と無計画のあいだ』

ミシマ社は大好きな出版社です。1冊1冊を丁寧に作っていて、販売も取次を通さないで直接書店とやり取りしているんですね。すべては読者に届けるために。業界を新陳代謝するべく、試行錯誤を繰り返していて、その姿勢にシビれます。

時代のルールを作る

ミシマ社からは、信念が感じられます。「乗っかるのではなく、自分たちでその次の時代のルールを作る」。そのために大事にしているのが原点回帰の出版社であることなんですね。

  • 読者とまっすぐつながる

このことを大事にしている。そして「編集と営業は二つで一つ」という姿勢にも共感してしまいます。その関係を「車」で表現しています。出版社が車のボディ、編集というタイヤと営業というタイヤで、両輪が機能的に連動することを目指しているわけです。

マーケティングはしない

読者ターゲットは「老若男女」としています。「どうしたら売れるか」は問い自体が違うとしていて、「どうしたら喜んでもらえるか」、これを考えているそうです。カッコいいです。

すべての出版社は、1冊の積み重ねでしかない。そうである以上、安定など幻想でしかないのは明らかだ。無計画線と計画線のあいだが自由

さいごに

というわけでメディアの本質を考える上で参考になりそうな本を紹介しました(他にもいろいろあると思いますが)。これからのメディアは、コンテンツを誠実に作ることをより問われてくるのかなと。結論としては、ものすごく当たり前のことだけど、これがものすごく難しい。メディアのブランド化には時間がかかるし、マネタイズしないと継続できない。いろいろな試行錯誤をしていく必要がありそう。