はじめに
第1章 脳から見た成功と失敗の心理
ほめられるのが怖い?インポスター現象 B. スピナス
自分の成功は分不相応な物で,”できる人”という仮面がいつかはがれるのではないか——
インポスター現象に悩まされる人は,成功を自分の能力によるものではないと信じ込んでいる
成功の社会心理学 S. A. ハスラム/ J. サルヴァトール/ T. ケスラー/ S. D. ライヒャー
知能テストやスポーツの成績の良しあしは
自分が所属する集団に対して社会が抱いている固定観念を意識するかどうかで決まってくる
その束縛を克服する方法がわかってきた
ライバル意識が行動を変える F. ジャブル
好敵手と競い合うことで成績や記録が伸びる場合もあれば
過度な競争心が判断を狂わせてしまうこともある
なぜ人は他人の失敗を喜ぶのか E. アンテス
逆境は仲間を求めるともいわれるが,他人の逆境を楽しむ際にも,どうやら仲間が必要らしい
一件無害な感情が集団内では強まる性質があり
これを利用すれば,集団間の対立を煽ることさえできる
第2章 子どもの発達と学習
感覚トレーニングで学習障害を克服する B.フィッシャー
一部の学習障害は,脳が感覚入力を誤って解釈してしまう知覚上の問題と関連している
特定の知的技能に的を絞った訓練を行うと,この問題を解決できる可能性がある
間違いの効用 H. L.ローディガー/ B. フィン
教室で難しいテストを行う効用を調べた研究から
誰にでも学習に使える一風変わった勉強法が発見された
脳科学が教える 学び上手にする方法 G. スティックス
子どもの読み・書き・計算の能力を高め社会的スキルさえも改善する
新たな方法が脳研究から提案されている
子どもは象徴をどう理解するのか J. S. デローチ/写真:R. ハリス
「あるものが他のものを表すこともある」とわかるようになるまで
幼い子どもは絵や写真などで表された象徴と本物を混同してしまうことがよくある
これは象徴的な思考を身につけることの難しさを示している
第3章 うつの理解に向けて
うつの真犯人を追って E. カステン
身体の病気や体調不良が脳に影響を及ぼし,うつや不安,思考力の低下を招くことがある
ライフスタイルとうつ病 K. ランバート
現代人は,調理済みの料理を電子レンジで温め,既製服を買い,洗濯機を使う
便利な生活は,苦労することによって得られる報酬を奪い
うつを引き起こす原因になっているのかもしれない
うつ病,強迫性障害,PTSD…… 見えてきた脳の原因回路 T. R. インセル
神経科学からのアプローチにより精神疾患の根本的原因が
脳神経回路の誤作動にあることがわかってきた
第4章 生活の中の脳科学
前向き思考で成功できるか R. F. バウマイスター/ J. D. キャンベル/ J. I. クルーガー/ K. D. ボース
自信をもてない人は消極的で,学業や仕事も振るわない…
米国では自尊心の向上が青少年の非行防止などにつながると考えられてきた
だが自尊心を高めるだけでは,実は何の解決にもならないようだ
信頼のホルモン オキシトシン P. J. ザック
私たちは他人に信頼を置くかどうかを どのように決めているのか?
脳内の小さな分子が大きな役割を演じている
バブル崩壊を心の科学で読み解く G. スティックス
大恐慌以来最悪の経済危機がきっかけとなって
金融市場の機能と人々の意思決定に関する見直しが始まった
法廷に立つ脳科学 M.S. ガザニガ
裁判で脳スキャンや神経科学の知見が証拠として採用されることはめったにない
だが,いずれ,個人の証言の信頼性や責任能力について
司法判断が変わる日がくるかもしれない
こころと脳のブックガイド