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■第17回池上啓一油絵個展 (5月30日まで)

2009年05月29日 23時49分56秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 池上さんの個展の会場に入る。
 壁に並んでいるのは、ごくふつうの油絵である。
 静物画が何点か。あとは、道内の何気ない風景をとらえている。

 省筆の度合いが心地よい。
 細かく描きすぎず、といって省略しすぎていない。

 ふつうの絵だなあと思って、つい足早に通り過ぎたくなる。
 でも、足を止めてじっと眺めていると、じわじわと良さがしみてくる。

 日高管内様似漁港を描いた「早春漁港」。
 エメラルドグリーンの水面が深い。
 岸壁の残雪にこぼれる微妙な光の調子は、いつまでも見飽きない。白にもいろんな白があるのだ、ということを、あらためて思わせる。

 「藤野残雪」は、自宅に近い南区の山を描いたもの。
 空気遠近法に沿って、遠景がわずかに青紫がかっている。
 しかし、いかにもラベンダー色を使ってますよ、というわざとらしさはみじんもない。

 「真栄の秋」にいたっては、清田区の何の変哲もない新興住宅地と小河川が描かれているだけ。
 それでも、見ていると、秋の日のやわらかさが、実感として伝わってくる。

 そうなのだ。
 池上さんの絵を見ているうちに、北海道内をドライブしていてふと感じた春の気配や、秋の空気感などが、よみがえってくるのだ。
 描かれた特定の場所を思い出すというのではない。もっと普遍的というか、北海道のどこででも抱くような感覚の追憶が、じわーっとわいてくるといってもいい。

 ことばにしづらい感覚だが、池上さんの絵を見ることは筆者にとって、絵はがきのように或る特定の場所を思い出すのではなくて、季節の微妙な移ろいを思い出すことなのだ。


 池上啓一さんは札幌在住の道展会員。 

 出品作は次の通り。
伊達早春 F4
静物 F6
日高山並み F4
枯花 F10
果物 F10
港の春 F50
有珠山遠望 F20
藤野残雪 F20
運河の春 F15
羊蹄の春 F30
早春漁港 F100
壮瞥 P12
藤野ダム F15
初夏 M50
浅春の山 F50
蘭越 F10
早春山脈 F80
時計 F10
早春 F50
富良野展望 F10
日高早春 F8
トッカリショ F10
壺の静物 F8
福住展望 F20
青い布 F8
柿と瓶 F8
陽春山脈 F8
真栄の秋 F6
水差し F8
秋色 F6
千年の森 F6 


2009年5月25日(月)-30日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A

第9回グループ環絵画展・小品展併催 (2008年6月)
第8回“グループ環”絵画展
第15回池上啓一油絵個展(2007年)
第11回個展(2003年)
2002年の個展
第9回個展(2001年、画像なし)


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