「パブリック」と「プライベート」を“いいとこ取り”したクラウド戦略の行方Weekly Memo(1/2 ページ)

NTTコミュニケーションズが企業向けクラウドサービスを大幅に機能強化した。狙いは「パブリック」と「プライベート」の両サービスの“いいとこ取り”にある。ただ課題もありそうだ。

» 2016年03月07日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]

企業向けクラウドサービス「Enterprise Cloud」を大幅に機能強化

 「基幹システムのクラウド化を強力に支援するとともに、デジタルビジネスにも対応する機能を備え、双方のニーズを満たすICT基盤を提供したい」――NTTコミュニケーションズ(NTT Kom)クラウドサービス部ホスティングサービス部門の栗原秀樹部門長は、同社が企業向けクラウドサービス「Enterprise Cloud」の大幅な機能強化を発表した会見で、その基本的な考え方についてこう語った。

 栗原氏は「双方のニーズ」について、従来のERPなどに求められるシステム性能や信頼性重視の「トラディショナルICT」と、IoT(Internet of Things)やビッグデータ解析など新しいビジネス創出に求められる俊敏性、柔軟性やAPIによる外部サービス連携などが前提となる「クラウドネイティブICT」と表現。これら双方の環境を効率的に構築・運用するクラウド基盤が求められていることから、他社クラウドサービスやネットワーク、コロケーション環境を含めた形で、今回大幅に機能強化したEnterprise Cloudを投入したと説明した(図1参照)。

図1:機能強化されたEnterprise Cloudのサービス概要(出典:NTTコミュニケーションズ資料)

 同社はこれまでも、トラディショナルICTに対応したホステッドプライベートクラウドサービスのEnterprise Cloudと、クラウドネイティブICTに対応したパブリッククラウドサービス「Cloudn」を提供してきた。今回のEnterprise Cloudの機能強化は、いわば両サービスの“いいとこ取り”を狙ったものだ。

 具体的な機能強化ポイントについては、まずトラディショナルICTへの対応強化に向け、専有型のホステッドプライベートクラウドをオンデマンドで従量課金に対応したベアメタルサーバと、VMware vSphereおよびMicrosoft Hyper-Vに対応するマルチハイパーバイザーで提供。これにより、既存のソフトウェアライセンスを維持しつつ、オンプレミスで利用していた既存の基幹システムを設計変更なく、クラウド環境へ移行できるようにしている。

 一方、クラウドネイティブICTへの対応に向けては、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアであるOpenStackを採用し、業界標準のオープンなAPIを具備した共有型クラウドを提供。さらに、オープンソースのPaaS基盤ソフトウェアであるCloud Fuundryを採用した業務アプリケーション開発運用基盤を提供している。

 これにより、エンタープライズレベルのサービス品質と信頼性を確保しつつ、アジャイル型・DevOps指向などの業務アプリケーションの効率的な開発・運用を実現。また、オープンなAPIで他のサービスと連携するなど、特定のクラウド基盤技術へのロックインの不安を解消し、IoTなどのデジタルビジネスを迅速に展開できるとしている。

 このほか、「SDN(Software Defind Network)技術を活用し、ホステッドプライベートクラウドと共有型クラウドをレイヤ2接続による同一ネットワーク上でシームレスに提供」「Enterprise Cloudのクラウド拠点間を10Gbpsベストエフォートの閉域ネットワークで無料接続」「他のクラウド基盤も含めてポータルサイトから一元的に運用管理できるクラウドマネジメントプラットフォーム(CMP)を提供」といった機能強化も図っている(図2参照)。

図2:Enterprise Cloud機能強化の構成(同)
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