北海道美術ネット別館

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■第27回一線美術会北海道支部展 (5月24日で終了)

2009年05月25日 00時46分08秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 1950年に、旺玄展にいた岩井弥一郎らが旗揚げした団体公募展。帝展で3年連続特選を果たした江別出身の画家上野山清貢(旺玄展、全道展の創立会員)や、紋別ゆかりの村瀬真治らが結成に加わっており、北海道にもかかわりが深く、毎年この時期に支部展をひらいています。

 すべて絵画で、抽象やシュールレアリスム的な作品は見当たりません。
 昨年の出品者のうち、水上佳奈子さんがいませんが、あらたに、永田このえさん(芦別)と堤千恵さん(札幌)がくわわりました。

 冒頭画像の手前は、長尾真規子(札幌)「幻想即興曲」。
 白い犬6匹が和装の女性を取り囲むという図柄で、女性の断髪が、昭和初期のモダンガールを思わせます。
 

           

 石山宗晏 (旭川)「茶飲み話」(左)「架線工事風景」
 石山さんの色彩感覚は独特です。ことしはまだ、おとなしいほうです。右の絵でも、緑にレモンイエローが混じり、輝かしい風景が現出しています。
 左は石山さんにはめずらしい人物画。帽子にサングラスをした中年男たちは、何を話しているのでしょう。


                 

 河瀬陽子(芦別)「想」
 明暗を強調して、人物とマリオネットのかかわりを描いてきた河瀬さんですが、ここ数年は、マリオネットが姿を消して、人物だけの絵も描かれています。
 今回も、赤いドレスの女性からは、迫力というか、生への意欲のような、充実したパワーを感じます。
 背後のカーテンは白の絵の具で描かれ、透明のようにも見えますが、これはこれで完成しているようでもあります。また、窓の外の緑は、室内に侵入して描かれていますが、それも不自然ではなく、むしろ絵に精彩をあたえていると思います。
 左手にあるひきだしの側面の描写に、ベテランらしい技術のさえが表れています。


           

 竹津昇(千歳)「杏 I」
 タッチを生かして、農村の倉庫内部などをモティーフに描いている竹津さん。
 牧草を移すフォークという農具が画面に変化を与えています。
 置かれた筆のリズムは、軽快というよりはむしろ執拗で重々しいものですが、そこに画家の、対象に向き合うときの粘り強さを感じます。 


           

 田中茂基(札幌)「悠久の翼」
 あれこれ欲張らずに、フクロウの飛翔にずばっと焦点を当てた構図が良いと思います。
 ただ、個人的には、ラベンダー色の帽子がかわいらしい、肖像画の小品「ジャンヌに捧ぐ」もすてがたい。


           

 湯浅工(札幌)「マリーナのある漁港」
 なぜ、この絵が筆者の目を引いたのか、考えてみました。
 ちょうど画面が、上から、3分の1ずつ三つの部分に分かれる構図となっていて、上3分の1は雲などの横線が、中央3分の1はマストの縦線が、そして下3分の1は、波模様による横線が、それぞれ優勢になっているためではないでしょうか。
 そして、マストの縦線の背後にも、鉄工所?のクレーンの横線などが走って、画面を引き締めています。
 計算された構図が、画面全体に安定感をもたらしているのだと思います。


                

 神林仁(旭川)「美瑛岳錦秋」
 遺作です。神林さんは1931年、旭川生まれ。丸井今井を定年退職後、1993年から一線美術への出品を始め、2002年に会員に推挙されています。
 オーソドックスな風景画ですが、空間のひろがる感じはさすが地元です。
 ご冥福をお祈りします。

 このほかにも、見どころのある作品がいくつかありましたが、このへんで・・・。


 出品作は次のとおり。
天野千恵子(石狩)「ベネチヤの夕日」120F 「風景」8F
石山宗晏 (旭川)「架橋工事風景」100F、「茶飲み話」60F
長内由美 (室蘭)「時」120F 「恋」8F 「凛」SM
川上直樹 (札幌)「風韻の碑-記憶-」100F 「記憶」30F 「追憶(ザクロ)」8F
河瀬陽子 (芦別)「想像100F 「想」50F
川西由峰 (札幌)「径(みち)」100F 「静物」12P
神林仁  (旭川)「(遺作)美瑛岳錦秋」80F 「(遺作)麦秋」12P
黒澤仁博 (滝川)「らふ」145×67 「らふ」183×63
木村好 (苫小牧)「倉庫群水映」全紙=水彩
小崎侑子 (札幌)「光陰」130F 「向日葵」6F
鈴木利枝子(札幌)「北の大地」120F 「北の大地」120F
竹津昇  (札幌)「杏I」100F 「杏 II」100F =いずれも水彩
田仲茂基 (札幌)「悠久の翼」130F 「サイロのある風景」8F 「ジャンヌに捧ぐ」8F
堤千恵  (札幌)「眠りの森の美女」80F 「白鳥の湖」80F
長尾真規子(札幌)「幻想即興曲」120F
中村国夫 (旭川)「鼓動『生命の在處』」130F 「毀れゆく象」40F
中村美恵子(旭川)「化石『生命への愛』」130F 「一円想(平和な日々)」50P
永田このえ(芦別)「馬」80F 「ポニー輓馬」40F
信岡成子 (登別)「光の中で(II)」100F 「風の路」30F
曳地敏行(苫小牧)「猫とのひととき」30P 「牧場の風景」30F
湯浅工  (札幌)「マリーナのある漁港」130F 「漁港の休日」50F
渡部泰子 (札幌)「夢」100F 「百合」20F


2009年5月20日(水)-24日(日)10:00-17:00(最終日-16:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)


□一線美術会 http://www9.wind.ne.jp/issen/

□アトリエかわせようこ http://www.geocities.jp/atelier_yoko_kawase/index
□TAKUMIの画室 http://www.geocities.jp/takumi7707/index.html
□竹津昇 水彩の旅 http://www.geocities.jp/madrid2002jp/
□個展deスカイ!(川上さんのブログ) http://kotendesky.exblog.jp/

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(以上画像なし)


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