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■石垣渉 水彩画の世界展~10周年記念展 (2014年5月20~25日、札幌)

2014年06月05日 01時01分01秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 札幌の石垣渉さんが、会社勤めをやめて水彩画家、イラストレーターとして独立して10年になるのを記念した個展が開かれた。
 新作以外に、昔の作品も展示されており、「画風の変遷を感じ取ってほしい」とのことらしい。
 また、これまでの個展のテーマと合わなかったため、未発表だった「大地の中の小宇宙」といった作品もある。土の中のミミズや、大根を描いた異色の絵だ。

 もっとも、写実を基調とした石垣さんの画風は、それほど劇的に変化を見せているわけではない。
 ただ、写実の超絶技巧を誇るというよりも、なにげない風景とじっと向き合い、そこに内在する精神を感じ取れるような、そんな絵が多いと思うし、そこが筆者の、石垣さんの絵の好きなところなのだ。

 たとえば、「朝の表情(帯広)」と題された1枚。
 雪の積もった朝、トラックを逆光でとらえている。
 農村地帯ではどこでも見られる光景だが、そこに美を感じとり、あらためて提示しえた画家は、少ないのではないか。

 あるいは「夕日を浴びて(フィンランド)」。
 2階建ての家と木々、青空を描いた、何の変哲もない風景画。でも、松の木のてっぺんに、あざやかな黄色い光があたっている。低い高度から差し込む冬の夕日である。
 わたしたちはそこに、北国の光を、もっというと北方の風景の本質を、見るのだと思う。

 


 最新作「green shower(黒松内)」。
 緑を生かすため、あえて周辺部をモノクロで処理した。ブナの北限林があるマチとして知られる後志管内黒松内町の豊かな森林が題材だ。
 よく見ると、手前に、水の粒をたたえたクモの糸が何本も左右にはられている。
「描き終えて、神秘的すぎて人が入り込めない雰囲気だと思ったんです。人が作ったものを入れるわけにもいかず、最後にクモの糸を描き入れることで、絵の世界に入りやすくなるようにしました」
 クモの糸は、あちら側(絵の世界)と、こちら側をつなぐ役割を果たしているのだ。




 左手前の作品は、ノボシビルスクに行った際に取材した「朝再び(ロシア)」。
 針葉樹林に囲まれた野に、咲き乱れる花がたくさん点在している。明るい黄色で描かれた花々は、ひとつひとつは小さいけれど、たしかに生きている―、そんなことを実感させる作品。

 けっして有名でも絶景でもない、何気ない風景と、じっくり対話するように、描いていく石垣さんの姿勢に、あらためて静かな感銘を受けた個展だった。


2014年5月20日(火)~25日(日)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5 大五ビル)

□行雲流水 石垣渉 水彩画の世界 http://www.ishigaki-w.com/

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