オブジェクトストレージは多様なデータを大量かつ安価に保存する用途に適していますが、その特性から注意すべき点もあります。今回は使う前の基礎知識を解説します。
前回解説しましたように、オブジェクトストレージは多様なデータを大量にかつ安価に保存する用途に適しています。デジタルデータの永久保存時代にマッチしたストレージ技術と言えます。しかしその特性から、導入時、運用時に気を付けなければいけない点が幾つかあります。今回はオブジェクトストレージを活用する前に知っておくべきことや利用でのヒントについて解説してみたいと思います。
まず、オブジェクトへアクセスするAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)の確認です。オブジェクトアクセス用のAPIには、RESTfulおよび独自APIなど、複数存在します(表参照)。使用するアプリケーションがどのAPIをサポートしているかを確認しましょう。業界標準として浸透しているRESTful APIには「Swift」「S3」「CDMI」があります。
CDMI:(The Cloud Data Management Interface)SNIAが標準化しているクラウドストレージ互換仕様
オブジェクトを直接サポートしていないアプリの場合は、クラウドゲートウェイを使います。オブジェクトストレージへのアクセスはRESTful APIが好ましいですが、実際にはアプリケーションがサポートしていないケースが多いのです。
それではアプリケーションに手を加えればよいかというと、それもライセンスやサポートの観点から現実的ではありません。そんな場合に便利なのが、ゲートウェイの利用です。多少のオーバーヘッドの増加はあってもアプリケーションに手を加える必要がないのでリスクが少なく、すぐ使えるので非常に便利です。ポイントは以下の通りです。
1.プライベートまたはパブリックオブジェクトサービスに対するNFS/CIFSおよびブロックはクラウドゲートウェイを使用する
2.クラウドゲートウェイは物理アプライアンスまたはソフトウェアインスタンスがある
3.ゲートウェイはアプリケーションごとに異なる
オブジェクトストレージでは容量と冗長度の要求度により、レプリケーションとイレージャーコーディングを選べます。一般的にオブジェクトストレージと言えば、同じデータの複製(=レプリカ、レプリケーション)を異なるゾーンに複数配置することで、データの冗長性を保つ仕組みが実装されています。その場合、データの読み書きが非常にシンプルである反面、容量が3倍、4倍になってしまい、容量効率が悪いというデメリットがあります。
一方、最近よく聞かれるようになったイレージャーコーディング(消失訂正符号)技術を使うことにより、データの冗長性を保ちつつ、ストレージ容量を格段に低減することも可能です。イレージャーコーディングの場合、消失訂正符号(パリティ)生成によってコンピュータワークロードが発生するというトレードオフがあります。
オブジェクトストレージにおいてリアルタイムの同期は期待できません。と言うのも、拡張性を重視した設計であるため、更新直後のデータにアクセスすると、更新前のデータが読み出されることもあり得ます。ですから、リアルタイムでの同期、データの一貫性を求められるアプリケーション、データベースには不向きです。
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