福岡市は、2014年にオープンデータ・サイトを開設した。区役所でデータをオープンにしようという文化を醸成するために、情報を手軽に登録できるようにした。データサイトの横展開をにらみ、周辺の自治体と話をしながら可能性を探っている。

福岡市 総務企画局理事(CIO補佐官)<br>竹内 聡氏
福岡市 総務企画局理事(CIO補佐官)
竹内 聡氏
日本生命保険、ニッセイ情報テクノロジーなどを経て2013年から現職。福岡市のシステム刷新計画の策定、オープンデータ活用などを担当(写真:都築雅人)

 福岡市では、トップダウンでオープンデータを推進している。できることから手がけていき、成功事例を作りながら前に進んでいこうというのが基本的な考え方だ。

 2014年10月には、「福岡市オープンデータ」というウェブサイトを開設した。区役所でデータをオープンにしようという文化を醸成するために、まずは「カタログサイト」を作って、情報を手軽に登録できるようにした。担当部署がメールでデータを送ると、自動的に掲載される仕組みだ。現場から登録の負荷を排除することで、オープンデータが広がることを狙っている。

 こうした仕組みがあると、皆が「うちもやらなきゃいけないかな」という雰囲気になると考えている。今回のプレゼン資料を作った際には、公開データ数が137となっていたが、昨日は139だったので着実に増えている。このサイトには、週に一度更新するアクセスランキングも掲載している。これによって、利用者がどんなことに関心があるのかを把握できる。

福岡市がオープンデータを公開しているウェブサイト<a href="http://www.open-governmentdata.org/" target="_blank">「福岡市オープンデータ」</a>
福岡市がオープンデータを公開しているウェブサイト「福岡市オープンデータ」
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「オール九州」を目標にデータサイトの場を横展開したい

 現場から送られてくるデータは、だいたいがCSV形式だが、利用者が高度にデータを活用できるようにするために、「BODIK(ビッグデータ&オープンデータ研究会in九州)」という団体を通して、機械判読に適したデータベースを提供している。BODIKは、福岡市と外郭の福岡アジア都市研究所(URC)、九州先端科学技術研究所(ISIT)が共同で設立した、ビックデータとオープンデータに関する研究会だ。

 オープンデータは単一の自治体が公開したものだけでは使い勝手が悪い。そこで現在、複数の自治体にまたがって、データサイトの場を横展開していきたいと考えている。「オール九州」を目標として、周辺の自治体と話をしながら可能性を探っている。

 福岡市は、誰でも無料で使える公衆無線LANサービス「Fukuoka City Wi-Fi」にも力を入れている。2012年からサービスの提供を開始し、2015年10月時点で市内全域の83拠点で合計376カ所のアクセスポイントを設置している。これを整備した目的は、来街者の利便性向上、市の情報発信力の強化、災害時の活用の3つだ。

 このサービスにスマートフォンやパソコンを接続すると、市の観光情報サイト「よかなび」が表示される。災害発生時には、プッシュ型で情報を発信する仕組みもある。

 このサービスは、NTTグループと連携して実現している。これに限らず、福岡市は福祉や育児、環境、まちづくりなど多様な地域・社会課題の解決に向けて、企業との連携に取り組んでいる。セブン-イレブン・ジャパンやローソン、イオン、福岡ソフトバンクホークス、ぐるなび、福岡市内の郵便局などとも包括連携協定を結んでいる。企業との連携・協働を通じて、地域の活性化や市民サービスの向上に資する事業を推進することが目的だ。(談)