脱原発と脱化石燃料を目指し、あえて困難な道を歩み始めたドイツ。このエネルギー革命は、世界の国々のモデルとなるのだろうか。

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ドイツが挑むエネルギー革命

脱原発と脱化石燃料を目指し、あえて困難な道を歩み始めたドイツ。このエネルギー革命は、世界の国々のモデルとなるのだろうか。

文=ロバート・クンジグ/写真=ルカ・ロカテッリ

 ドイツは今、「エネルギーベンデ」と呼ばれるエネルギー政策の大転換に取り組んでいる。気候変動による惨事を回避するには、すべての国がいずれはこうしたエネルギー革命に取り組まなければならないというのが、科学者たちの見方だ。

 世界の工業大国の先陣を切り、大転換に着手したドイツでは、発電量に占める風力・太陽光など再生可能エネルギーの割合が急増。2014年には、10年前の3倍に当たる約27%に達した。

福島の事故で加速したドイツの「脱原発」

 この大転換に拍車をかけたのは、2011年に日本の福島第一原子力発電所で起きたメルトダウンだ。事故後すぐに、ドイツのメルケル首相は同国内にある17基の原子炉を2022年までに全廃すると宣言した。すでに9基が閉鎖されたが、それを補う以上の電力を再生可能エネルギーで確保できている。

 もっとも、世界が注目しているのは、ドイツが化石燃料依存からの脱却でも先陣を切れるかどうかだ。今後数十年で世界の温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにしなければならないと、科学者たちは警告している。世界第4位の経済大国であるドイツは大胆にも、2020年までに1990年比で40%の削減、2050年までには80%以上の削減を約束している。

 ドイツは今でも石炭火力発電に大きく依存し、その割合は再生可能エネルギーよりはるかに大きい。さらに、ドイツの輸送部門と暖房部門は、発電による排出を上回る量の二酸化炭素(CO2)を排出し、再生可能エネルギーへの転換が大幅に遅れている。

「もちろん、石炭の使用をやめる道を探らなければなりません。それは明らかです」と、ドイツ連邦環境省のヨッヘン・フラスバート事務次官は話す。「しかし、とても困難でもあります。資源にそれほど恵まれていないわが国で、褐炭は数少ない国産資源の一つですから」

【動画】ドイツ「エネルギー革命」の最前線へ行ってみた(解説は英語です)

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年11月号でどうぞ。

編集者から

 この特集でいちばん衝撃的だったのは、原発跡地を利用した遊園地の写真です。一度も本格稼働しなかったとはいえ、ここまでやってしまうのは何とも大胆ですね。ドイツにはもともと反原発の風潮があったそうですが、この写真はそうした風潮の象徴であるようにも感じます。
 2011年3月に福島で原発事故が起きたあと、なぜドイツはいち早く脱原発を表明できたのか。そして、再生可能エネルギーはどこまで導入されたのか。日本の読者にも最後まで読んでほしい内容です。(編集T.F)

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