高橋英生さんは、70歳を迎えた2003年、故郷の稚内にアトリエを構え、札幌を引き払った。
筆者は一度もおじゃましたことはないが、訪れた人はだれもが
「いいところですよ」
と口をそろえる。カフェが併設され、目の前に、海を隔てて利尻富士が望まれるのだという。
前回の三越札幌店での個展から2年。水彩画ばかりの個展は初めてだと思う。
三越での個展や、北海道銀行の各店に掲げられた複製画を見て、筆者は
「かつては前衛美術家だったエイセイさんも、自然の豊かな故郷へ戻り、その自然を素直に描いた絵で、画家人生を締めくくるのだろうか」
などと、漠然と考えていた。
もちろん、その軌跡を単なる後退と総括することがいかに皮相な見方であるかということは、前回の個展の際にも述べておいた。
そしたら、今度の個展を見ていささか驚いた。
70代半ばにして、実験精神がまたむくむくと頭をもたげてきているようなのだ。
可憐な野の花を描いても、紋切り型の透視図法に乗っかった風景画はあまり描いていなかった英生さんだが、今度の個展には、緑色の連なりを抽象的に処理したような作品などがならぶ。
あざやかな黄緑色の画面は、たしかに稚内市の上勇知地区に広がる実際の野原に想を得たものではあるのだろうけど、表層的な写実を超えて、絵画として自立していることは言うまでもない。
そして、さらにびっくりしたのは、これだ。
シラカバ林を、マスキングで表現している。紙の白を、生かしているのだ。
この若々しい遊び心には、脱帽するしかない。
稚内のアトリエにますます行きたくなってきた。
でも、遠いんだよなあ。
今回はおよそ20点を出品。
2009年10月2日(金)-15日(木)10:00-18:00(最終日-17:00)、火曜休み
GALLERY創(中央区南9西6 地図F)
・市電「山鼻9条」徒歩1分
・地下鉄南北線「中島公園」から徒歩5分
・じょうてつバス「南7西11」から徒歩7分
・中央バス「中島公園入口」から徒歩9分
(ト・オン・カフェからだと徒歩6、7分)
□あとりえ華 http://blog.livedoor.jp/hanadono/
■高橋英生油彩画展(2007年)
■03年の個展
■02年10月の個展
■02年6月の個展(旭川)
■01年の個展
(いずれも画像なし)