ザ本ブログ

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七人の侍(1954年) / 黒澤明監督

■戦国時代。不作など貧しい生活に苦しむ百姓だけの村に、野武士の集団が現れ、僅かな収穫でさえも奪おうとする。長老の決断で、侍を雇うことが提案され(当時はそういうことが本当にあったようだ)、近隣の町で侍を探すこととなる。報酬は、村にいる間、飯を腹たらふく食わせることのみ。名誉も何もない。

 

当然仲間集めは難航するが、たまたま町で起きた強盗事件を鮮やかな手腕で解決した島田勘兵衛を雇うことができたことを皮切りに、彼を中心に侍達が集まった。リーダー格の勘兵衛、その元同士七郎次、元百姓の菊千代、まだ少年の勝之助、凄腕の久蔵、お調子者の林田平八、参謀役の片山五郎兵衛。彼らが七人の侍となって、野武士から村を守ることになった。■

 

古い映画なので、音声は少し聞き取りづらいですね。映像の迫力は白黒を忘れさせるほどの凄み。カラーだったらどれ程だったろうかと想像してしまう。

 

セットの時代考証の緻密さもさることながら、百姓の表情が、本当にその時代から飛び出してきたかのようだ。音楽も控えめで、映像も白黒なだけに、風の音や、川のせせらぎの音が効果的に使われていると感じた。

 

野武士との戦闘シーンは、この時代にどうやって撮ったのか。暴れ馬に乗った武士など、ケガをせずに撮影するのは不可能と思われる。騎馬の蹄の音もすさまじい。

 

村をバリケードで囲い、先頭の騎馬を敢えてスルーし村に囲い入れ、狙いを付けた一騎を取り囲んで仕留める作戦がメインなのだが、解説の描写もないのに、素人にもよく分かる。百姓も団結してよく戦うが、やはり侍の活躍がカッコいい!実力ある侍も、種子島(火縄銃)の餌食になってしまうのがリアル。

 

策略家で武芸にも秀でた勘兵衛や、実力派久蔵も捨てがたいですが、推しメンは、やはり三船俊郎演じる菊千代ですね笑。元百姓なので、侍と百姓の間の橋渡し役になったり、奇行で人を笑わしたり。百姓が武士の甲冑を盗んでいたことが露見しても、彼らの身になり百姓を弁護する。合戦の最中に両親を失った赤子を抱きしめ、「こいつは俺だ!」と号泣する。菊千代の奔放な立ち振舞いが、侍と百姓という身分に囚われた村に、自由の風を吹かせているように思えました。

 

最後には野武士を追い払うことはできたが、七人いた侍は三人まで減ってしまった。百姓の豊穣の祭りを眺めながら、「勝ったのは百姓だった」とつぶやく勘兵衛の胸中は伺い知れない。武芸での出世は潰えて、村を守る合戦を通じて初めて百姓と交わったことで、自然に生き、大地の恵みを得る百姓の生き方が愛おしく思えたのか。とにかくストーリーが秀逸。リメイクとかしないのかなぁ。