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■野口秀子個展 (2016年6月14~19日、札幌)

2016年06月19日 01時01分01秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 野口秀子さん(北広島在住)は道展会員だし、もうかなり以前から作品を拝見しているはずなのだが、恥ずかしながらその良さがわかったのは近年のこと。一昨年におなじ会場で開いた個展で、その軽やかで楽しい画面、入念さと即興性とが両立した絵画のすばらしさに遅まきながら気づき、今回ようやくご本人ともお話ができて、うれしい限りだ。

 しかし、なんでも自分を基準にして考えるのは良くないが
「わー、この絵、写真みたいだね。すご~い!」
が判断のモノサシになっているような人も含めて、一般の美術好きにとって、野口さんの真価は容易に分かってもらえるものなのだろうか。ちょっと不安にならないでもない。

 野口さんの作品は独特だが、強いて系譜を挙げればパウル・クレーだろうか。
 抽象といっても、米国の抽象表現主義のように大きさや迫力で見る者を圧倒するのではなく、小さい画面にさまざまな心地よい線や色面を組み合わせているからだ。

 私見だが、画面に視線を引きつけて離さない巧みさは、画風は異なるが山川真一さんと並んで道内屈指ではないかと思う。




 右手前は「春が来た」。
 黒い線が、ときには輪郭線のようで、ところによっては地の色からは独立して自在に画面を駆け回る。
 色面は風景画を思わせる広がりを感じさせつつも、平面性を保っている。
 何より、見ている側も楽しくなってくる、明るい色調が良い。




 「道ばた」。

 この絵にかぎらず、野口さんは、絵の具のほかにオイルパステルや墨などさまざまな画材を使っている。
 筆よりも、刷毛をちょんちょんと置いたり、技法もさまざま。
 コラージュの材料として、自分の古い案内状を用いたりもしている(ただし、英字新聞の安直なパピエコレがないのはさすがだと思う)。
 「下地を8割ぐらいまで完成させた後、そこから墨でさっと書いたりして仕上げるときの緊張感と楽しさがたまらないんです」
と野口さん。
 確かに、入念にマチエールをつくりこんだ下地と、即興の喜びであふれる線との対比が、作品のミソかもしれない。


 40点弱で、立体の小品もある。
 タイトルも「私まいご」「はっぴい」「たんぽぽ」「おはよう森」「飛行機雲」などと楽しい。
 「月はどこ」という絵があったので
「どこにあるんですか?」
と聞いたら、はぐらかされてしまった。どこにもないのだろうか。たしかに、すぐに分かって、それで絵を理解したつもりになって、絵の前を立ち去ってしまったらつまらないですからね。
 ずっと、視線を泳がせていたい空間。それが野口さんの絵だと思う。


2016年6月14日(火)~19日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階)

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