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■山下康一作品展―生生(しょうじょう)無辺 (2014年5月26日~6月4日、北広島)

2014年06月03日 03時03分03秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 山下さんは長野県在住の風景画家。
 北海道が好きで、取材旅行とともに個展を開くことも多く、これで12回目となるそうだ。

 以前は、どこかドイツロマン派を思わせる、静かなたたずまいの風景画を描いていた。

 今回は黒一色で表現。
 墨のみを使っているという。白い部分は、塗り残している。

「強さを出したかったが、水彩だとどうしても優しい絵になってしまう。そこで、墨を使ってみた。和紙に描いたりもしたが、どうしても日本画や水墨画のようになってしまうので、紙は水彩画につかうものを使っています」




 左から「安曇野幻月」「有為夢幻(白馬浅春)」「凍(鹿島槍ケ岳)」。

 いずれも、山下さんの家からそれほど遠くない山だ。

 水を使って墨をぼかしている部分と、細部まで山肌を描いている部分とのメリハリが効いている。
 水墨画を手がけている人は多いが、こういう山下さんのような風景画は、ほとんど見たことがない。
 写実でありながら、ただそれだけで押していくのではなく、おおまかなところはあっさり描いているのだ。



 今回で最も大きい作品「厳と慈(戸隠厳冬)」。
(写真が曲がってしまって、すみません)
 写実的に描かれていた手前の森を、ほぼ黒で塗りつぶしているのが目を引く。

 山の絵は、スケール感を出すのが意外と難しい。
 遠くから見て山容をそのまま描写することはできても、大きさ、高さ、聳え立つ感覚といったものを、限られた大きさの支持体に表現することに成功している人は少ない。
 この山下さんの絵は、見ていると、山容の大きさが伝わってくる。ただ遠くから眺めているだけの山ではない。墨一色で、偉大な山々らしいスケール感にあふれていると思う。

 色は黒と白だけになっても、心を落ち着かせてじっと風景と向き合うという山下さんの根っこのところは、変わっていないような気がした。

 墨の絵はほかに「光の川」「鎮守の森」「雲湧く(爺ケ岳)」「雨」「ヒマラヤ杉と雲」「原野」「月と鳥海山」。
 また、竹ペンと水彩による「番所の桜」「二反田の桜」「小川村早春」の3点もある。竹ペンの線が軽妙で、軽いタッチのスケッチといった趣。これまで描いていた、写実的な風景画とはかなり雰囲気の異なる作品だ。


 それにしても、山下さんの北海道好きは筋金入りで、今回も知床に行ってきたという。
「連日天気がいいので、羅臼岳などもよく見えましたね」
 知床は遠い。筆者は北見に住んでいたときも、遠くて日帰りではなかなか行きづらいのであった。なのに、札幌から車を走らせるのだから、すごいなあ。


2014年5月26日(月)~6月4日(水)午前10時30分~午後3時30分(最終日~午後2時30分)、木金土日休み
黒い森美術館(北広島市富ケ岡509-22)

etotabi.exblog.jp

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・地下鉄東豊線「福住」駅か、JR北広島駅から、中央バス「広島線」に乗り「竹山」降車、約560メートル、徒歩7分


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