2009年の流行語は「エコカー」だったのではないだろうか。特に「エコカー減税」はCMでも強調されており、環境に配慮された自動車の税金が免除・軽減されるということで、これを機に車を買い換えた人も多いはず。

ただ、燃費が良いコンパクトカーだけでなく、大きな高級車が減税対象になっていたりと仕組みは複雑。「元々は減税対象外なのに、燃費が悪くなるグレードにしたら減税対象のエコカーになった」ということもあるとか……。いったいどういうことだろうか。

エコカー減税は、その正式名称(※1)が示す通り、購入時に課税される「取得税」と、購入・車検時に課税される「重量税」が軽減・免除される特例(※2)。
電気・燃料電池、天然ガス、プラグインハイブリッド、クリーンディーゼル車と、低排出ガス・燃費基準達成のハイブリッド車は、一部を除き、両税とも全額免除される。

そして、ガソリン車などが減税を受けるには、「排出ガスが綺麗」+「燃費が良い」という条件が必要。

具体的には「平成17年排出ガス基準75%低減」(いわゆる☆☆☆☆低排出ガス車)を受け、かつ燃費基準の達成度(燃費基準+15%、+20%、+25%)により、両税ともに50%もしくは75%軽減される仕組みである。

この燃費基準値は、車両重量ごとに定められており、軽いほど高い値、重いほど低い値が定められている。つまり一見燃費が悪そうな大型の高級車でも「重い割には燃費が良い」場合は、エコカーとして減税対象車になる。
ガソリン車の場合、(1)703kg未満、(2)703kg以上828kg未満、(3)……と、車両重量を9段階の区分に区切って、それぞれに燃費基準値を定めている。(1)は21.2km/l、(2)18.8km/lである。

このような仕組みのため、「元々は減税対象外の車種に、更に装備をつけて車重を重くしたら、燃費が少し悪くなったのに、1段階上の区分に変わり、エコカーになる」といったことが起こるのだ。


例えば、メルセデス・ベンツのEクラス(トヨタ「クラウン」クラスの高級車)の場合。
「E 250 CGI ブルーエフィシェンシー」は、☆☆☆☆で排ガス基準は達成。ただ、車重は1680kg、燃費は11.4km/l。区分は「(6)1516kg以上1766kg未満」で、燃費基準+15%値が12.1km/l。よって、減税最低基準の+15%値にはとどかず、エコカー減税対象外だ。
これに装備を充実させた「E 250 CGI ブルーエフィシェンシー アバンギャルド」というグレードになると、車重は1780kgと増加し、燃費は10.8km/lと下がるが、区分は「(7)1766kg以上2016kg未満」に変わり、燃費基準+15%値の10.2km/lどころか、+20%値の10.7km/lを上回り、減税対象のエコカーに変身してしまう。
これがいわゆる「減税グレード」と呼ばれるものである。
もっとも、後者(アバンギャルド)と前者の優遇金額の差は、エコカー減税、自動車税軽減、そしてエコカー補助金を合わせても約20~30万円ほどで、装備追加による割増額64万円の半額以下に過ぎない。
といっても、豪華装備を安く手に入れられるし、メーカーや車種によっては「サンルーフをつけるだけで減税対象となり、結果的に数千円の追加負担でサンルーフを装備でき、かなりお得」といった場合も。

上記の例のように各社、装備を追加して減税対象になる「減税グレード」をラインナップしている。同じ車でも、装備をつけて重く、燃費が悪くした方がエコカーとして優遇されるわけで、「環境性能に優れた自動車を優遇」という観点では、とても変な感じがするが、この制度の盲点を上手く利用して賢い買い物をするのと同時に、制度への問題提起とするのも、ありかもしれない。ただし、燃費が悪くなり燃料代(維持費)が高くつくことになるので、不要な装備の装着は賢い選択ではないということもお忘れなく。


※1 エコカー減税の正式名称は「環境性能に優れた自動車に対する自動車重量税・自動車取得税の特例措置」
※2 他にも優遇措置として、「自動車税のグリーン化(25%もしくは50%軽減)」と「エコカー補助金」がある

(もがみ)