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コラム

広告コピーの正しい悩み方 ~中村禎の場合~

「本を書く」と「コピーを書く」の共通点

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nakamura

『最も伝わる言葉を選び抜く コピーライターの思考法』
著:中村禎/発行:宣伝会議(2017/3/1発売)
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『最も伝わる言葉を選び抜く コピーライターの思考法』という本を書きました。その出版に合わせて、このアドタイにコラムを6回書く場をいただきました。さて、何を書こう。言いたいことはすべて本に書いたつもりなので、もうしゃべることはないなぁ。と思いきや、本を書きながら、頭を整理しながら、また気付いたこともありました。本に書ききれなかった、入りきらなかった広告コピーの話をこのコラムに書こうと思います。

本を書くにあたって、宣伝会議の佐藤匠さんから「この本を読むと参考になりますよ」という書籍を紹介されました。『職業、ブックライター。 毎月1冊10万字書く私の方法』『書いて生きていく プロ文章論 』どちらも、ブックライター・上阪徹さんの著書です。読んでみると、本の書き方と広告のつくり方、かなり類似点があることがわかりました。

「本屋に行って、どんな本が平積みされているか、どんな本を書店はプッシュしているか、観察する」「売れている本をヒントにするのではなく、どんな本が足りないか、どんな本がこれから求められていくかを考える」というのです。それ、マーケティングですよね。広告と同じです。

次に、上阪さんはこう言っています。「読者について考える」「どんな人に読んで欲しいのか、どんな人が読者になりうるのか。つまり、ターゲットについて考え続ける」「ターゲットはどんな課題を抱え、どんな悩みを持っているかを考える」「ぼんやり『世間一般』ではダメ。『絞り込んだ、この人』をターゲットに絞り込んだ方が、その周辺も興味を持つ」とある。これ、ボクが講座で話していることと、まったく同じでした。

考えてみれば、書籍も広告も、それを必要としている人(まだ必要だということに気づいていない人も含む)の心を奪うという目的は同じですから、考え方は同じなのは当然といえば当然なのです。でも途中で、いやらしい「欲」が顔を覗かせてきました。ボクは「おわりに」に、こう書きました。

この本は、「若いコピーライターのために書こう」と思って書き始めたのですが、途中から「これはコピーライターじゃない人にも読んでほしい話だな」と思うようになりました。

(中略)

早い話、初対面の人に何かを伝えないといけない職業の人みんなに読んでほしいと思っています。コピーライターとしての考え方、思考法は、広告コピーの話にとどまらず、あらゆる職業にも共通することです。だって、言葉で何かを伝えたいとき、相手の立場に立って、相手の気持ちを考えるでしょ。それはまさにコピーライターの思考法と同じなのです。

これは本心です。結果的にコピーライター以外の人にも読んでいただいて、役に立つ本になったと思っています。しかしこれが、原稿を書いている段階で、いろんな人に「ウケ」ようとして書くと、やっぱりダメだったんだろうと思います。中身がぼやけたり、エッジがきかなかったり。なんだか、フニャッとした文章になってしまったでしょう。

やはり、「コピーライター志望のあいつ」の顔を思い浮かべて書かなきゃダメだと気づいたのです。誰か一人に向けた情熱があるから、多くの人に届くんだということを実感できました。自分が本に書いた「『ひとり』に向けてコピーを書く」という話は正しい、ということを実感しました。

生まれて初めて本を書く。書籍という「商品」をつくるわけですから、売れたほうがいい。売れないと困る。どうすれば売れる本になるのか。その時、上阪さんの本にあった、この言葉が勇気をくれました。

「売れそうな本」ではなく、あくまで「いい本」を作ろう。

この言葉は、いろんなことに当てはまる。
「売れそうな商品」ではなく、あくまで「いい商品」を作ろう。
「売れそうな広告」ではなく、あくまで「いい広告」を作ろう。
「売れそうなコピー」を書こうとするのではなく、「いいコピー」を書こう。
ぜんぶ同じですね。

今回、生まれて初めて書籍というものを書く機会を得て、多くのことを学びました。320ページ、約10万字。今まで書いてきたすべてのボディコピーの文字数より確実に多い。この本はぜんぶ、ボクが書いた「コピーライターの思考法」の“コピー”です。

「いい本」になるように、何度も手直しをして書きました。
nakamura

最も伝わる言葉を選び抜く コピーライターの思考法
宣伝会議刊(2017年3月1日より全国書店・ネット書店にて発売)

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