雪街音楽メモ

聴いた音楽、気になった音楽、音楽の話題など、音楽のある日常を書きました。

バーバラ・コナブル『音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』アレクサンダー・テクニークとボディ・マッピング(誠信書房)

音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと―アレクサンダー・テクニークとボディ・マッピング

音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと―アレクサンダー・テクニークとボディ・マッピング

体の適切な使い方と、自分の動作の悪い癖に気づける本 バーバラ・コナブル『音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』アレクサンダー・テクニークとボディ・マッピング片桐ユズル・小野ひとみ訳、誠信書房、2000年10月)


わたしはクラシックギターを弾いているのけれども、先週の演奏会のためにここしばらく練習時間を大幅に増やしたら、

  • 左の手首、親指の付け根が痛くなり
    • 腕のストレッチをして筋肉をほぐすと治るのだが、演奏中にまた痛くなる
  • 左腰が重くなる
    • 左足のほうを足台で高くする。なんとなく左側に重心がかかる。
  • 首の付け根、特に右側が痛くなってくる
    • 体が左側に開き気味になってくるんじゃないかと思う。
  • 背中全体が硬くなってくる

などの症状が出てなかなかつらかった。
で、「なんとか出来ないかなぁ」とネットを検索していたところ、ギター関連のいくつかのページや掲示板でこの本が紹介されているのを知り購入したのだった。


楽器演奏は細かい筋肉を動かす運動である—たとえばクラシックギターなら顕著に指、手、手首、腕を酷使する—、ミュージシャンは体の動かし方をアスリート並みに意識すべきだ……ということわたしはかねがね思っていた。この本はまさにそういったことを図入りで優しく基本的解説をしてくれている。
主要ページはざっと眺めていける絵本的なしつらえになっている。

内容

解説
音楽を演奏するすべての人のために、「人のからだはどのようにできているか」「どうすれば自然にからだを使って音楽ができるか」について、全頁わたりユニークなイラストを使ってわかりやすく図解する。からだの自由と技術の獲得のための感受性を高める基本原理を説明した興味深い入門書。


目次
1 音楽訓練に確実な身体的基礎をあたえる
2 体の中芯部と、バランスの起こる場所の地図をつくる
3 腕構造のマッピング
4 呼吸
5 脚のマッピング
6 実際的応用

http://www.seishinshobo.co.jp/40280a.html

特に重要なのは「首の筋肉を硬くしない、演奏中は首の筋肉を自由にする(首の筋肉が硬いと、からだ全体が硬くなる)」「首をらくにして、頭と脊椎の関節、座骨でバランスをとりなおし、中芯部からととのえていく」(P.96)といったこと。そのほか、体の各部分について解剖学的な解説・図版も加えながら、

  • 本来、からだはどういうふうに動くと自然なのか
  • どこかが演奏によって痛むとすれば体の構造について「思い込み」があって実際の構造とは違う無理な動かし方をしているからではないか
  • 動きや演奏スタイルを改善するためには実際の構造と自分の体の本来の動きをしり、そのうえで、どう動かしどういう姿勢だと楽でより自由に、自然に演奏できるかを自分の体にあわせて習得する、自分の体の動きを修正していく……

などが説明されていく。特定の楽器ごと(管楽器の各楽器、弦楽器の各楽器、ギター、ピアノなど)の、それぞれの楽器の特性にあわせた姿勢に関するアドバイスもある。

わたし自身への即効的・具体的効果

冒頭に戻れば、わたし自身に関しては、クラシックギターの演奏で左の手首や親指が痛んでいたのはこの本の「うでの使い方」のブロックを読んで即効的に解決した。自分でもびっくりするくらいの即効性だ。
わたしの場合の、痛みの改善につながった直接のポイントは

  • 「手と前腕が休止の関係にあるとき、小指は尺骨の延長線上にある」(p.62)

だった。腕の動かし方ともあわせ、

  • 「手は小指を中心に構成されている。小指は前腕の回転軸の線上にあるから、小指が軸であり、尺骨との関係に支えられて強い指になっている」(p.68)
  • 「演奏しながら胸鎖関節を自由に最大限に使う」(p.53)

これらを意識すると非常に楽に、力強く……まさにすぐその場で演奏の際の肉体的苦痛が消えたように思う。

逆に言えば、わたしのからだの痛みにつながっていて意識を修正すべき点のひとつは「親指が橈骨の延長線上にくるのではない」ということだった。親指は太く、また頻繁に使う指であるため、つい「軸である」と考えがちなのだが、先に書いたように小指が軸であるという意識を持つと、手や手首、腕の無理な緊張がなくなり、痛みは出てこなくなる。
また、首や背中の張りや硬さ、痛みの改善については、胴体の部位の「頭と胸部が腰椎のうえでバランスすることをしる」「胸部の重量を慢性的に背中にかけている音楽家はだれでも体重を腰椎の上でやさしく前に移してごらんになれば、腰部への負担はずいぶんかるくなるはずです」(p.20)が役だった。
ということで、今後も継続的に読んだり実際に試したりしながら、自然な体の動かし方を身につけていけたらと思っている。