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  • 2018/05/21 掲載

日本も「キャッシュレス」4割へ、現金主義に挑む経産省5つの取り組み

連載:「東京五輪後」をどう生きるか

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現在、キャッシュレス化は世界的な流れとなっている。しかし、日本のキャッシュレスの水準は、先進国の中でも低いのが現実だ。今回は、経済産業省の「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」が発表した「キャッシュレス・ビジョン」を参考に、日本が抱える課題と現状、今後の取り組みについて解説する。

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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日本では現金が「強すぎる」
(©chombosan - Fotolia)


韓国のキャッシュレス決済比率は89.1%、日本は18.4%

連載一覧
 経済産業省の「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」はこの4月、世界のキャッシュレスの動向や日本の現状を踏まえ、日本のキャッシュレスの方向性を踏まえた具体的な方策(案)をとりまとめた「キャッシュレス・ビジョン」を公表した。

 日本は、少子高齢化や人口減少に伴う労働者人口減少の時代を迎え、国の生産性向上は喫緊の課題となっている。キャッシュレス推進は、実店舗などの無人化省力化や不透明な現金資産の可視化、流動性向上など、不透明な現金流通の抑止による税収向上につながる。

 さらに支払いデータの利活用による消費の利便性向上や消費の活性化など、国力強化につながるさまざまなメリットが期待されている。

 日本は、海外諸国と比較して、キャッシュレス化の進展が遅れている状況にある。世界銀行が2015年に調査した「各国のキャッシュレス決済比率の状況」によると、韓国が89.1%と最も高く、中国(60.0%)、カナダ(55.4%)と続いており、日本は18.4%と先進国の中でも低い比率となっている。

 こうした状況を受け、日本では「未来投資戦略2017」において、今後10年間(2027年6月まで)でキャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とする目標を掲げている。

 キャッシュレス化にあたっては、消費者ニーズが多様化し、従来型のカードではなく、以下の図のとおり、スマートフォンアプリやインターネットを活用した新たなキャッシュレス化を実現するサービスが多数登場していることも考慮する必要がある。

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主要なキャッシュレス・サービス一覧
(出典:経済産業省 キャッシュレス・ビジョン 2018.4)



日本でキャッシュレスが普及しにくい理由は?

 日本でもさまざまなキャッシュレス・サービスが登場しているが、なぜ、世界と比べて普及が遅れているのだろうか。「キャッシュレス・ビジョン」では、「社会情勢」「実店舗など」「消費者」「支払いサービス事業者」の4つの立場・視点から、その背景をまとめている。

 「社会情勢」では、以下の4点が指摘されている。

1. 盗難の少なさや、現金を落としても返ってくるといわれる「治安の良さ」
2. きれいな紙幣と偽札の流通が少なく、「現金に対する高い信頼」
3. 店舗などの「POS(レジ)の処理が高速かつ正確」であり、店頭での現金取扱いの煩雑さが少ない
4. ATMの利便性が高く「現金の入手が容易」
 このように、治安の良さや現金の信頼性、レジの正確性やATMの利便性といった日本の強みが、日本のキャッシュレスが普及しにくい要因となっている。既存の商品やモノが優れているがゆえに新興市場への参入が遅れる「イノベーションのジレンマ」そのものという状況だ。

 「実店舗など」では、キャッシュレス支払にかかる「導入」「運用・維持」「資金繰り」といったコストの観点で、キャッシュレスが普及しにくい状況にあるという。

 経済産業省が2016年に実施した「観光地におけるキャッシュレス決済の普及状況に関する実態調査」では、クレジットカード未対応の実店舗などでは、「手数料の高さ」「導入によるメリット感が得られない」「現場スタッフによる対応が困難」などが、クレジットカード導入のハードルとなっている。

 「消費者」では、キャッシュレス支払に対応していない実店舗などの存在が、キャッシュレス支払への移行を妨げており、「使いすぎ」や「セキュリティ」「購買行動を第三者にコントロールされてしまう」といったキャッシュレス支払に関する各種不安があることを指摘している。

 「支払サービス事業者」では、以下の2つを挙げている。

1. 現状の支払サービス事業者(クレジットカード会社、銀行、電子マネー事業会社など)におけるコスト負担
2. 世界的にも稀有なマルチアクワイアリング環境
 銀行がクレジットカード業務を推進している米国、欧州などの諸外国においては、1つの加盟店に対して1つのアクワイアラ(クレジットカード加盟店契約会社)とする「シングルアクワイアリング方式」 が一般的である。

 これに対して日本では、1つの加盟店に対して複数のアクワイアラが存在する「マルチアクワイアリング方式」が存在している。特に、取引規模が見込めない中小・零細事業者向けの加盟店手数料は、相対的に高止まりする傾向にあるという。

【次ページ】日本におけるキャッシュレス推進の意義と必要性

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