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■第11回サッポロ未来展 RENEWAL (2012年3月19~24日札幌、3月28日~4月1日小樽)

2012年03月28日 21時32分03秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
(敬称略。長文です)

Exhibition Sapporo Mirai
2012 March 19 - 24 at Sapporo Tokeidai Gallery
March 28 - April 1 at Otaru City Museum of Art

 40歳以下の道内在住・出身者によるグループ展で、毎年開かれている。
 昨年春は、道立近代美術館で10回目を記念した大規模な展覧会を催した。祭太郎のパフォーマンスなどもあり、絵画から現代美術までさまざまなジャンルにおよぶ、楽しい会場だった。

 それに比べると、ことしは第1~9回の会場に戻り、時計台ギャラリーの7室すべてを使っているのであるが、非常におとなしくなった感じがした。
 これまでこの未来展を引っ張ってきた札幌の波田浩司(正確には江別在住だけど)や東京の村山之都、渡辺元佳といった面々が「卒業」してしまったこともあるのだろう。出品者が少なくて地味な展覧会になったという印象は否定できない。

 そんな中で、絵画で光っていたのが、佐藤仁敬(冒頭画像の右側)。
 木の輪とふたりの女性が苦しげな格好で宙に浮かぶ「paranoid」シリーズもあったが、完全にモノクロームの「ツミキのニオイ」が新境地を開拓しようという苦闘を感じさせる。

 初期からのメンバーで、今回から事務局長を務める宮地明人は「Paradox」という題の作品を2点。



 宮地さんとは展覧会全体の話ばかりをして、肝心の、絵のことを尋ねるのを忘れていた。
 卓越した描写力は相変わらずなのだが、右側の女性は、どうして脚がないのだろう。

 宮地さんの絵は、単にリアルなだけではなく、画面のどこかで
「これは、絵に過ぎないんですよ」
ということをわざわざ表明しているかのように、筆者には思えてくるのだ。

 洋画(絵画)では、やはりこの2人が目を引いた。

 ほかに、神保光宏「海の見える風景」は、石狩・厚田の高台だろうか。
 どうしても北山寛一を思い出さずにはおれない。
(※追記。北山さんの名前が誤っていたので訂正しました。申し訳ございません。)


 全体的には、微細な描写よりも、わりあいおおまかなタッチの絵が多いようだった。

 日本画では谷地元麗子。



 「夢模様」は、金箔、アヤメなど、従来の日本画の伝統を踏まえている。
 ここでいう「日本画」とは、西洋画の導入の危機感にともなって誕生した絵画ジャンルではなく、それ以前から存在する作品である。
 彼女の絵には透視図法的な奥行きはつねに存在しない。その意味で「現代的」なのだが、「前近代的(=伝統的)」であることと何ら不自然さなく共存していることが、彼女の絵の真骨頂というか、おもしろみであると思う。 

 3階は、絵画以外の作品が集められている。
 コンセプチュアルな現代美術作品が減って、木工や陶芸など、従来はこの展覧会であまりなかったタイプの作品が散見される。

 澁木智宏「庭」はG室全部を使用した。



 単なる枯山水ではなく、すべて羊毛でできているのがこの作品のキモであろう。


 出品作は次の通り。
宮地明人 「Paradox」(同題2点)
手塚昌広 「ten.」「side」「corner.」
佐藤仁敬 「知性のハコ」「paranoid」「ツミキのニオイ」
藤井敦子 「History of Life Sciences」(同題2点)
田村美樹 「動じない日々」
谷掛幸恵 「業火 I」「業火 II」「業火 III」

谷地元麗子「夢模様」「寒椿」「カトレア」「蓮花」 「菊」(同題2点)
渡邊里美 「雪かき」「馳せる」「棲み処」
神保光宏 「回復」「海の見える風景」「無題」
高村宏奈 「白露」「芳」

風間雄飛 「tef-tef」「たられば」「だれかれかさん」
北岡依知子「progress」
若林啓  「組手」
佐々木ゆか「dress」
河野健  「トリケラトプス」
藤田遼子 「parallel」
中川治  「アクアリスト~希望の陽の中へ~」「アクアリスト~朝日の大輪~」
安居沙織 「MIRROR BALL」「曖昧な場所」

小川由佳 「windows」
戸倉彩音 「ぽこぽこころ」
齋藤一  「空空」
佐藤舞  「再生」
川内隼人 「twig」
佐藤誠  「内向系男子」「浸食-空-」「浸食-地-」「無機生命体-逆-」「魑魅魍魎-欲-」「人生紙風船~一期一会~」「神様の遊び~洋風魔人~」「消灯時間」「匿名希望」「地に足が付かない」「酒の酔い本性違わず」「一寸先は闇」
深瀬暢希 「around me」 「ツイッターからの抜粋」(4点)
澁木智宏 「庭」

2012年3月19日(月)~24日(土)10:00~6:00
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
3月28日(水)~4月1日(日)
市立小樽美術館(小樽市色内2)

□サッポロ未来展 http://www.sapporomiraiten.com/
□Facebook http://www.facebook.com/exhibition.sapporo.mirai
□twitter https://twitter.com/#!/miraiten

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