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【速報】AppleがVoIPベンチャー買収を検討か → 携帯通話料が劇的に安くなる可能性

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数時間前に,Silicon Alley Insiderから興味深い買収報道があったのでご報告を。

Is Apple Buying VoIP Provider iCall? (2009/12/11)

AppleがiCall(ホームページはこちら)というVoIPベンチャーを50億円程度で買収しようとしているとの読者からの通報があり,iCallのCEOに確認したところ否定も肯定もしなかったが,可能性は十分あるのではとの内容だ。

詳しくない方のために補足すると,VoIP(Voice over IP)は,インターネットなどTCP/IPネットワークを使って音声データを送受信する技術だ。有名どころではSkypeがあり,VoIP技術を利用したサービスはインターネット電話とも呼称される。ユーザーにとっては電話がメールのように固定料金ないし無料に近くなる願ってもないうれしい話だ。そして通信キャリアが最も恐れるテクノロジーでもある。

Icall

iCallは,PCおよびiPhoneをプラットフォームとしたVoIPサービスを提供している企業だ。CEOによるとiPhoneユーザーだけで10万人を超えているようで,AppleからすればiCallというネーミングも欲しいはずだとSolicon Alley Insiderでは予想している。

なお,iCallの通話料金は米国およびカナダにおいては場所を問わず1分2.1セント(2円!),国際通話も約50ヶ国超に対応しており,かなり格安だ。ちなみに米国-日本だと,日本サイドが固定電話の場合は1分4セント,携帯電話の場合は1分13.7セント(他国と比較してかなり高い)となっている。

各国の料金一覧は こちら

無線LANとWiMAXの普及により,日本においても(理論的には)ある程度のエリアをVoIPの格安通話でカバーすることが可能となる。

ただし高額に設定された携帯通話料で儲けている通信キャリアとしては,VoIPの普及は強烈な価格破壊に繋がるだめ,できる限り普及ペースを遅らせたいというのが本音のところだ。

またAppleにしても同様。iPhoneの高収益は月額通話料金が大きく寄与しているため,できる限りVoIPの普及を先延ばししたい思いは変わらない。ちなみにiPhoneの収益構造を図式化すると次のようになる。

Iphone

これは米国AT&Tの例だがソフトバンクも同様の構図だろう。ユーザーは本体価格199ドルをAT&Tに支払うが,AT&TからAppleへは(販売補助金351ドルをプラスした)550ドルが支払われる。この販売補助金は当然ユーザーの月額電話料金から捻出されるものだ。iPhoneの製造原価は179ドルと予想されており,そのためAppleは68%もの高い粗利を得ることになる。

さらに詳しい情報は次のブログに丁寧に記載されているので参考にしてほしい。
絵でわかるiPhoneの数字 (iPhone 3G Wiki Blog, 2009/12/11)

Appleが無線LAN機能を持つiPodTouch(月額電話料金が不要)にマイク機能を搭載していないのは,VoIP端末として通話利用されることを防ぐためだろう。

ではなぜここに来てVoIPベンチャーの買収が噂されているのか?
それは最強ライバルGoogleの噂のVoIP専用機,Google Phoneの存在が大きい。

Google Phoneについてはこちらの記事にまとめたのでご参照を。
Google Phoneは2010年初頭発売。話し放題で月2000円か? (2009/11/19)

そしてこれは中長期的に熾烈な戦いになるであろうモバイルウォーズの幕開けでもある。

モバイル広告配信サービスAdmob買収ではGoogleに一敗地にまみれたAppleだが,逆に音楽ストリーミングサイトLala買収ではGoogleを出し抜き,今後の両社による買収合戦はさらに過熱していくと予想される。

モバイル市場規模はPCの10倍ないしそれ以上と見られ(モルガンスタンレー発表。詳しくはこちらへ),携帯電話やスマートフォンを超え,電子書籍リーダー,タブレットと無限のバリエーションで広がっていくはずだ。来年のIT業界最大の目玉はモバイルになる,これはほぼ間違いないところだろう。

なお,これらモバイル戦争の行方についてはこちらの記事で特集しているのでぜひご参照を。
iPhone vs Android vs SymbianOS。モバイル三国志の現状と未来予測 (2009/10/22)


【追記】
Twitterにてご指摘いただきましたので追記します。iPodTouchはサードベンターのマイク付きイヤフォンを接続するとSkypeなどが使える仕様になっています。ただし標準機能ではないのでVoIPフォンとして使用する場合に機能制約がある可能性があります。

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最新の筆者著書です。 『Twitterマーケティング 消費者との絆が深まるつぶやきのルール』

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