遺産相続、離婚問題…静岡県警への相談者を司法書士に紹介 全国初、「受け皿」期待

 「遺産相続でもめている」「離婚したいが相手が応じてくれない」-。日々警察に寄せられる、犯罪とは直接関わりのない相談。県警は20日、県司法書士会と連携し、警察署や交番で相談者を司法書士に紹介する全国初の取り組みを開始した。昨年県警が受理した約5万8千件の相談のうち、こうした相談は7件に1件ほどを占め、警察業務を圧迫。一方で、相談者も悩みを解決できないままとなるケースも多く、県警の取り組みに関係者の注目が集まっている。

 静岡市葵区の県警本部では同日、県司法書士会の杉山陽一副会長らが田中和生・県警生活安全部長に情報提供用のパンフレットを贈呈した。金銭トラブルや家庭内でのトラブルのうち、「消費者金融やローンの返済が苦しい」「夫から言葉の暴力を受けている」といった事件性のないものについて例示し、常設の無料相談窓口「司法書士総合相談センターしずおか」(電)054・289・3704(平日午後2~5時)を併記。県内の各警察署や交番などに置かれ、相談者に手渡すことで司法書士を紹介する。

 県司法書士会では、平成14年から「司法書士総合相談センターしずおか」で常設の無料面談を実施。18年からは電話での無料相談も開始し、これまでに延べ4万件を超える県民からの相談に応じている。昨年10月に県警から「犯罪に絡まない相談を司法書士会の窓口で受けられないか」と提案があり、警察への相談者を司法書士に紹介する全国初の取り組みが実現。杉山副会長は「慰謝料の請求や離婚調停の申し立てなど、司法書士が活躍できるケースは多い」と話す。

 県警警察相談課によると、昨年県警に寄せられた相談件数5万7826件(110番通報を除く)のうち、直接犯罪に関わりのないものは約8千件と全体の1割強を占めている。ただ、ドメスティックバイオレンスなどの被害がなく、「家にお金を入れてくれない」といった家庭内の相談については、「旦那さんとよく話してみたら」とアドバイスする程度に留まるのが実情だ。また、相談を受けた際には調書の作成など事務作業が増えるため、「司法書士を紹介することで、相談時間の短縮など警察業務の負担減にもつながる」という。

 同課の内田成美課長は「警察では『解決できない』で終わってしまう相談でも、今後は司法書士会が受け皿になることでより適切な対応ができるのでは」と期待を込めた。

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