【KNOCK OUT】“事実上の決勝”に臨む宮越慶二郎 唯一無二の“忍者”スタイルで必勝誓う
「KING OF KNOCK OUT初代ライト級王座決定トーナメント」で森井洋介との1回戦に臨む宮越慶二郎 【写真:チナスキー】
ここで行われるのが“事実上の決勝”と目される宮越慶二郎(拳粋会)と森井洋介(ゴールデングローブ)の一戦。持ち前の激闘で「KNOCK OUT」においても“名勝負男”となっている森井に対し、変幻自在のフットワークで“忍者”と呼ばれる宮越はいかに戦うのか。今回は宮越に、そのルーツと思いを聞いた。
記憶と歴史に残るような試合をしたい
所沢のジムではキックボクシングの先生も勤める宮越 【写真:チナスキー】
キックをスポーツとして幅広い人に知ってもらいたいと思って、始めてちょうど1年になります。知り合いが知り合いを呼んで、飲食店やサービス業をやっている人のところへ僕がベルトを持って行ったら喜んでもらえて、また知り合いが増えて。そうやって繋がりがバーッと広がった1年でした。レッスンが仕事にもなるし、レッスンを終えたら練習に向けてご飯を食べて休んで夜の練習に備えるっていう良いリズムができています。いいこと尽くしですね。去年NJKFで年間MVPを受賞できたのもその影響だと思います。周りの方がすごく協力してくれるので、感謝しかないです。
メインイベントに選ばれたからには記憶と歴史に残るような試合をしたいです。今は調子よく追い込めています。それに期待もされて過去最高ぐらいにモチベーションも高いです。
――今回宮越選手のことを初めて見る方もいると思うので紹介をしてもらいたいと思います。まず運動歴から教えてください。
はじめは小学2年生ぐらいでサッカーと空手を始めました。父親が空手家でキックボクサーだったので、父がジムを作ったのを機に当然の流れのように兄弟で始めました。(※父は内藤武のリングネームで“怪鳥”ベニー・ユキーデとも戦った名選手、兄・宗一郎はWBCムエタイ・インターナショナル・スーパーウェルター級現王者)
――サッカーではどのポジションを?
ディフェンスで、当時からよく走っていました。あの頃はほとんど家にいなくて、ランドセルを置いたらすぐ学校に戻って、バスケとかサッカーをやっていました。小5からはさらにバスケも始めて、やっぱりバスケでも走っていたので、もう小学校はずっと動いていました(笑)。
――今も機動力が持ち味の宮越選手ですが、幼少期からすでにその片鱗があったと。
そうですね、そこで養われたのかもしれないです(笑)。3つを同時にやっていたのは小学校までで、中学からはサッカーを辞めてバスケ部に入って、そこからはもう部活が忙し過ぎてあまり空手をやれなくなりました。もう朝・昼・夜とずっと練習で。
――では中学以降はバスケが中心だった?
でも高校の時に、兄がキックでデビューしていたので、練習相手になったり、高校からはキックとバスケを並行してやっていました。
アマチュアだと消化不良でプロの道へ
兄とは違いセンスが無いと思っていたが、プロになってからは徐々にスタイルも確立 【写真:チナスキー】
“あの舞台に立ってみたい”という気持ちはあったんですけど、当時僕はめちゃくちゃ弱くて。試合でも全然勝ったことがなかったし、小学生のとき空手の試合に2回出たんですけど2回とも負けました。それで僕にはセンスが無いなと。兄は当時、優勝・優勝・優勝だったので、俺じゃ無理だろうなって思ってました。
でも高3の時にアマチュアキックのトーナメントに出て準優勝だったんです。決勝で今K−1の渡部太基選手に負けて、でもその時ちょっと手応えがあって、もう少しアマチュアで出てみようかなって思いました。ただその後も勝ったり負けたりで、そんなにずば抜けて強いっていう感じではありませんでした。
当時から僕はヨーイドンで行くのが苦手で、相手を見たい時間もあるのに、アマチュアでは時間も短いから当たった者勝ちになってしまって、ツマらないなって思うところがありました。当時からカウンターとかが好きだったんですけど、アマチュアだとなかなかそういうのができないし“もう1ラウンドあったら勝てたのに”“3ラウンドぐらいあったら絶対勝てるな”っていう試合がいっぱいありました。それでプロでやってみようかなっていう気持ちが出てきたんです。
――宮越選手は試合が進むにつれ、良さの出るタイプですが、キャリア的にも2008年のデビューから最近になってより強さを増してきた印象があります。
最初は自分のスタイルがまだ確立できていなかったんですけど、いろんな人のスタイルをどんどん真似していって、ここ1、2年ぐらいから自分のスタイル、やりたいことというのが分かってきました。あとは兄の対戦相手の真似をしながら対策をして、それでサウスポーになったりもしていたんです。でも、そのおかげでいろんな幅が広がったし、やれることが広がったんですよね。
――苦心、苦闘して現在のスタイルに辿り着いたと。
でも、無駄じゃありませんでした。ようやく自分の中で開花じゃないですけど、何かひらめきがあります。
――“忍者”と言われるそのスタイルについて、ご自身で説明をお願いします。
普通の人は大体前後に動くんですけど、僕は左右にも動くので、前後左右で立体的に動く、他の人にはないスタイルです。そこからさらにスイッチしてサウスポーにも変わるので、相手は分かり辛いし読み辛い、加えてこちらがどこを狙っているのか相手には読まれにくい、そういうことを意識して編み出した動きです。元々は対ムエタイに合わせた戦法で、そこから誰にでも対応できるようにしていきました。
過去最高の自分が見せられる
NJKF昨年の年間最高試合賞を受賞した羅紗陀戦よりもいい試合を見せると誓う 【写真:チナスキー】
羅紗陀選手みたいなムエタイスタイルというか、ジッとして1発1発の強い選手に対して、ああいう動きはすごく有効です。あの試合では僕も不思議なぐらいゾーンに入っていたというか、野球で言う「球が止まって見える」じゃないですけど、動きの次の手が分かるみたいな感じがありました。相性が良かった、スタイルが合ったっていうのもあるんですけど、今はそれをさらに研ぎ澄ませています。
――今回の対戦相手の森井選手もよく動く選手なので、好勝負の期待が高いです。
同じ階級では僕のスピードについてこれる人はいないかなっていう自負があるんですけど、森井選手は元々下の階級なので、パワーは無いかもしれないけどスピードは今まで僕が経験した中で1番速いと思います。ただ森井選手は前後の出入りはメチャクチャ速いんですけど、左右にはあまり動かないので、横の動きは行けるんじゃないかなと思います。
――この試合が“事実上の決勝”と見る向きも多いです。
僕と森井選手だったらそう言ってもらえる、歴史に残るような試合ができるって感じています。なので楽しみだし、怖さもあるけど、盛り上げる自信もすごくあります。“今年これが1番面白かった”っていう試合がしたいです。KOとか1発で倒すっていうのもそれはそれで盛り上がると思うんですけど、もう5ラウンドをバチバチやって終わった後は相手も僕もフラフラの状態、そういう試合もいいんじゃないかって感じます。
――2月の森井選手の試合がそうでしたが、たしかにノックアウトだけでなくそうしたお互いが死力を尽くす戦いもキックボクシングの魅力としてあると思います。
お互いスタミナも持ち味としてあるので、そうなるんじゃないかっていう予感もあります。
――分かりました。そんな試合へ向けファンの方にメッセージをお願いします。
他の選手にはない、唯一無二の僕のスタイルっていうのを見てほしいです。忍者スタイル、「これが宮越慶二郎だ」っていうものを見せます。期待値が高いのでメチャクチャ追い込めているし、たぶん過去最高の自分が、羅紗陀戦以上の自分が見せられると思います。
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