1973年に渡辺伊八郎らが旗揚げした北海道抽象派作家協会は昨年、第40回の記念展を開き、新しい時代に入った。
かつては年2度の展覧会を開き、そのうち春の本展は、市民ギャラリー1階の3室を10日以上借り切って開かれていたことを思えば、いまは展覧会は年1度だけで、それも1週間、1部屋だけという規模にスケールダウンしたといえるのだが、一方で、この手のグループがほとんどの場合、メンバーの高齢化や脱退で歴史に終止符を打つことを鑑みれば、若い世代を入れてしぶとく長続きしているのは、むしろ大健闘しているというべきなのかもしれない。
以下、作品を紹介する。
会場で配布していた図録(カラーを無料で、という太っ腹!)の記載と、実際の展示が若干異なっていたので、実際の方を記録しておく。
佐々木美枝子(特陳)
作品A~E。ただし、AからEまで順に並んでいるわけではない。
いずれもF60号。
図録に記されている作品Fと作品Gは、スペースの都合で展示されなかった。その代わり、小品が3点。
ピンクや赤で画面を覆いながらも、微妙な塗り残しや筆勢にいったん目がとまると、もう彼女の絵画世界にはいりこんでしまう。
しかし、その微妙な塗り残しやタッチを「味」と表現してしまうと、それもなにか違うような気がする。
機械的な完成を回避するところに立ち現れる無限の世界、とでもいうべきなのだろうか。
宇流奈未「未知」180×180センチ。
宇流さんは新同人。
昨秋の新道展の大作も話題になった。モノクロームという点では変わらないものの、黒い部分が増えてかなり変化を見せた。
入り口附近に小品が3点。
今荘義男「古里 イ」「古里 ロ」いずれも120×180センチ。
佐々木さんとともに、この会のオリジナルメンバーの大ベテラン。
もう何度も書いているが、日本的な情緒や意匠に頼ることなく、日本的な風土を色彩の組み合わせだけで表現しえている稀有の画家だと思う。
それは、ロスコがキリスト教の重さを抱えているのと対照的に、ずっと私たちの血肉に近いところにあるように感じられる。
ほかに小品3点。
後藤和司「緑のscene'14」。S20×16枚。
図録には「Wind of May」、S20×15枚とあった。
遠目でも美しいが、近くで見ると、手作業の積み重ねに驚かされる。
能登智子「響」S100
図録にはもう1点、F100の「響」の記載があったが、会場には並んでいない。
ほかに「タイムラグ」と題した小品2点。
能登さんも新同人である。
林教司「種子と道標」 180×180センチ
ほかに版画の小品2点。
林さんの作品は、重厚という形容がよく似合う。その重さは精神性をはらんで垂直にどこまでもおりていく。
三浦恭三「連鎖 1」「連鎖 2」「連鎖 3」
連鎖2はF60、ほか2点はF100。小品2点も出品。
三浦さんは、年を重ねるごとにむしろ軽快さを増している。
小川豊「心のひだ14-1」 F130
ほかに小品4点。
小川さんは推薦作家。
これまで赤系の色が多かったひだの重なりに緑を用いた。
田中季里「long long ago」182×210センチ
3連画の構成。同じように見えて、3枚は微妙に濃淡などが異なる。
田中さんも推薦作家。
柿崎秀樹「埋める」「葬送」91.5×182.5センチ
柿崎さんは2点出品。写真はいずれか一方なのだが、メモの字が汚くて、どちらだったかわからなくなってしまった。すみません。
いずれもモノトーンで、平面からはみ出す作品である。
名畑美由紀「緑青」 F100
この青は美しいと思った。
ほかに「若菜」F100。
宮部美紀「流れる」F60
図録には2点記されているが、このように3点あった。
田村純也「縷 伝(ルイ)」 300×300×140センチ
この立体の大作が、会場全体を引き締める大きな役割を果たしている。
鈴木悠高「'14-4-15」156×1000センチ
これまで黄色や緑のほぼ単色の色面による絵画を制作してきた鈴木さんが、一転して即興的な線の動きによる作品を出してきた。
画面には靴の痕もいくつか見られ、従来の禁欲的な画面とは全く異なるのが興味深い。
2014年4月15日(火)~20日(日)午前10時~午後5時(初日午後1時~、最終日~午後4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
関連記事へのリンク
■北海道抽象派作家協会秋季展 (2013)
【告知】第39回北海道抽象派作家協会展 (2012)
・2011年の告知
■第37回(2010年) ■続き
■第三十三回北海道抽象派作家協会秋季展 (2009年10月)
■北海道抽象派作家協会 同人と2009年展推薦者による小品展 (2009年7月)
■第36回北海道抽象派作家協会展 ■続き ■続々 (2009年4月)
■第32回北海道抽象派作家協会秋季展(2008年9、10月)
■第35回展(2008年5月)
■第34回
■第33回
■第32回
■第31回
■03年秋季展(画像なし)
■第30回(画像なし)
■02年の秋季展(画像なし)
■第29回
■01年の秋季展
■第28回
かつては年2度の展覧会を開き、そのうち春の本展は、市民ギャラリー1階の3室を10日以上借り切って開かれていたことを思えば、いまは展覧会は年1度だけで、それも1週間、1部屋だけという規模にスケールダウンしたといえるのだが、一方で、この手のグループがほとんどの場合、メンバーの高齢化や脱退で歴史に終止符を打つことを鑑みれば、若い世代を入れてしぶとく長続きしているのは、むしろ大健闘しているというべきなのかもしれない。
以下、作品を紹介する。
会場で配布していた図録(カラーを無料で、という太っ腹!)の記載と、実際の展示が若干異なっていたので、実際の方を記録しておく。
佐々木美枝子(特陳)
作品A~E。ただし、AからEまで順に並んでいるわけではない。
いずれもF60号。
図録に記されている作品Fと作品Gは、スペースの都合で展示されなかった。その代わり、小品が3点。
ピンクや赤で画面を覆いながらも、微妙な塗り残しや筆勢にいったん目がとまると、もう彼女の絵画世界にはいりこんでしまう。
しかし、その微妙な塗り残しやタッチを「味」と表現してしまうと、それもなにか違うような気がする。
機械的な完成を回避するところに立ち現れる無限の世界、とでもいうべきなのだろうか。
宇流奈未「未知」180×180センチ。
宇流さんは新同人。
昨秋の新道展の大作も話題になった。モノクロームという点では変わらないものの、黒い部分が増えてかなり変化を見せた。
入り口附近に小品が3点。
今荘義男「古里 イ」「古里 ロ」いずれも120×180センチ。
佐々木さんとともに、この会のオリジナルメンバーの大ベテラン。
もう何度も書いているが、日本的な情緒や意匠に頼ることなく、日本的な風土を色彩の組み合わせだけで表現しえている稀有の画家だと思う。
それは、ロスコがキリスト教の重さを抱えているのと対照的に、ずっと私たちの血肉に近いところにあるように感じられる。
ほかに小品3点。
後藤和司「緑のscene'14」。S20×16枚。
図録には「Wind of May」、S20×15枚とあった。
遠目でも美しいが、近くで見ると、手作業の積み重ねに驚かされる。
能登智子「響」S100
図録にはもう1点、F100の「響」の記載があったが、会場には並んでいない。
ほかに「タイムラグ」と題した小品2点。
能登さんも新同人である。
林教司「種子と道標」 180×180センチ
ほかに版画の小品2点。
林さんの作品は、重厚という形容がよく似合う。その重さは精神性をはらんで垂直にどこまでもおりていく。
三浦恭三「連鎖 1」「連鎖 2」「連鎖 3」
連鎖2はF60、ほか2点はF100。小品2点も出品。
三浦さんは、年を重ねるごとにむしろ軽快さを増している。
小川豊「心のひだ14-1」 F130
ほかに小品4点。
小川さんは推薦作家。
これまで赤系の色が多かったひだの重なりに緑を用いた。
田中季里「long long ago」182×210センチ
3連画の構成。同じように見えて、3枚は微妙に濃淡などが異なる。
田中さんも推薦作家。
柿崎秀樹「埋める」「葬送」91.5×182.5センチ
柿崎さんは2点出品。写真はいずれか一方なのだが、メモの字が汚くて、どちらだったかわからなくなってしまった。すみません。
いずれもモノトーンで、平面からはみ出す作品である。
名畑美由紀「緑青」 F100
この青は美しいと思った。
ほかに「若菜」F100。
宮部美紀「流れる」F60
図録には2点記されているが、このように3点あった。
田村純也「縷 伝(ルイ)」 300×300×140センチ
この立体の大作が、会場全体を引き締める大きな役割を果たしている。
鈴木悠高「'14-4-15」156×1000センチ
これまで黄色や緑のほぼ単色の色面による絵画を制作してきた鈴木さんが、一転して即興的な線の動きによる作品を出してきた。
画面には靴の痕もいくつか見られ、従来の禁欲的な画面とは全く異なるのが興味深い。
2014年4月15日(火)~20日(日)午前10時~午後5時(初日午後1時~、最終日~午後4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
関連記事へのリンク
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【告知】第39回北海道抽象派作家協会展 (2012)
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