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■米澤邦子展 (2016年10月10~15日、札幌)

2016年10月14日 20時14分20秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 札幌の全道展会員、米澤邦子さんの絵は、技法的にはコラージュである。
 ただ、道内でこの技法を用いている人の大半が、情緒的に英字紙などを貼り付けている程度なのだが、米澤さんは違う。美濃紙という薄い和紙のしわを、マチエールとして生かしているのだ。
 最初に絵の具で描き、その上に貼った紙を布やスポンジ、ばれん(版画で用いる)でのしていく。障子を貼るのに使う刷毛で生じる際に偶然にできるしわが、画面に表情を与える。

「筆やナイフでは飽き足らないんですね。意図を伝えきれない」
と米澤さんは話す。




 左の作品は「焔 I」(2014)。
 こちらはトイレットペーパーも貼っているというから驚きだ。
(右側の白い帯の部分)

 右側は「情景」。6枚のキャンバスを横につなげた作品。
 深い緑色が印象的だ。

 2014~16年と、長い時間をかけて製作された「水の器」。
 こちらも薄めのビリジヤンが、画面に深みを与えている。

 数年前の米澤さんは、ガーゼを貼ったり、インクとペンで細かい模様を描きこんだりしていた。
 今回の個展ではガーゼはほとんど貼られていない。インクの描きこみも減っているようだ。

 筆者が解説するまでもないが、かつての透視図法による奥行きとイリュージョンの描写が20世紀以降の絵画では重視されなくなり、画家は構図や筆勢、筆触などで、絵画ならではの奥行き感を模索せざるを得なくなった。
 その意味では、米澤さんも、現代の画家なんだなあと思う。
 もちろん、画家の精神的なものが画面から伝わってくるから、いい絵なのだが。
 言い換えれば、技法のおもしろさや独自性にとどまっていない絵なのだ。


 右は「水の器」の拡大図。

 画面に近づいて、緑や紺色の濃淡に見入っていると、米澤さんの資質は存外ロマン派的なものではないかと感じられてくる。
 そこに、なにかを象徴するような具体的なモティーフな何も描かれていないのだが、それでも、北方的なきびしい精神のありかをそこに感じるのだ。

 出品策は次のとおり。
火閻植物(同題2点)
焔 II (同題2点)
花―縄文―
果花
樹・脈
流々草花(同題2点)
流景―いのち―
流景
焔 I
夜の座



2016年10月10日(月)~15日(土)午前10時~午後6時(最終日~5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)


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