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■第51回白日会北海道支部展(2017年5月31日~6月5日、札幌)と川村正男さんの遺作

2017年06月01日 22時22分22秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 白日会は1924年(大正13年)に発足した、日展系の団体公募展。道内では絵画部の会員や出品者が毎年、支部展を開いてきました。
 会場でお会いした小堀清純さんによると、東京以北では唯一の支部だそうです。
 また、札幌では、日本水彩画会や春陽展、自由美術などいくつかの団体公募展が支部展を開催していますが、白日会はその中でも屈指の古い歴史を持っています。
 ちなみに、昨年までは札幌時計台ギャラリーが会場でした。同ギャラリーの「常連」がさいとうギャラリーに移ってきたのは、初の事例だと思われます。


 道支部の発足に尽力し、1967年から97年まで実に30年間も支部長を務めた川村正男さんの遺作「優しい水の都」が展示されていました。

 川村さんは1920年(大正9年)小樽生まれ。
 小樽で宮崎信吉に水彩画を習い、当初は日本水彩画会に出品していました。
 その後、白日会に出品をはじめ、数年後に水彩から油彩に転じました。白日会では67年に会員、83年に委員となっています。
 また、戦前から続いていた洋画グループ展「方究会」にも出品していました。
 昨年7月に亡くなったそうです。

 「端正」「穏やか」とは川村さんの絵のためにあるような言葉で、やわらかな色調をたたえた写実的な風景画は、いつ見てもホッとするような気持ちになったものです。
 ギラギラした、思いがこもった絵や、造形に個性をこらした絵も良いですが、川村さんのような、とくに変わったところのない、適度に省筆のきいた絵も、あっていいのだなあと感じていました。
 今回は、水辺に建つ西洋の屋敷を題材にしています。
 光のあたり具合で建物の明暗が微妙に変わっているところなど、誠実な描写です。

 ご冥福をお祈りします。


 他の出品者についてもふれておきます。

 小堀清純さんは水彩で静物を描いています。
 今回の「タイプライターのある静物」は、古いタイプライターが中央に置かれて、味があります。手前右には欧文雑誌がななめに配され、手前から奥へと向かう運動感を引き出しています。

 中矢勝善さん「渓谷の細雪」。
 点描のように短いストロークが全面を覆うのが中矢さんの特徴。今回は山あいの川の風景ですが、雪の白と紅葉のオーカーの点が混じり合って、晩秋から初冬にかけての季節感がよく出ています。

 塚原貴之さん「冠雪十勝岳」。
 塚原さんがここまで細密な風景画を制作する人だとはうかつにも知りませんでした。小さく描かれた農家や、その奥の木々の、迫真の描写には舌を巻きます。細かさと同時に、大まかなスケール感も漂わせる作品です。

 芳賀文明さんはオホーツク管内美幌町でいつも山林の冬景色を題材にした風景画に取り組んでいます。
 広がりがある一方で、山々の標高が低くなだらかなのは、オホーツク地方らしいなあと思います。

 伊藤ひとみさんは初出品。
「fulfilment」は坐っている女性がモチーフで、画材はパステルですが、しっかりとした画肌です。


2017年5月31日(火)~6月5日(日)午前10時30分~午後6時30分(最終日~午後5時)
さいとうギャラリー(札幌市中央区南1西3 ラ・ガレリア5階)
※H&M の入っているビル



□白日会 http://www.hakujitsu.com/

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第43回白日会北海道支部展
第42回白日会北海道支部展(2008年)
第41回
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第37回(7月19日の項)
第35回

【告知】小堀清純 水彩小品展 (2011)
小堀清純個展(2004)

第16回アトリエせせらき展 (2003)
=小堀さん、川村さん出品。10・11日の項

第68回 方究會洋画展
第66回方究会洋画展
第65回方究会(2001)※15日の項
=川村さん出品
川村正男個展(2001)
 =以上画像なし


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