http://mainichi.jp/select/news/20150117k0000m040155000c.html

この記事を読んで、みなさん、どういう感想をお持ちになったでしょうか。

ツイッターやらフェイスブックを見る限り、弁護士は依頼者のためなら何でもやるんか~!という人が多数。
まあ、一般の方なら仕方ないと思います。

ただ、普段は「裁判や事件の報道は一面的だ。信用できない」と言う弁護士の皆さんが、こんな弁護士はひどい、品位を害する、懲戒だ~!と声高に叫んでいるのを見ると、何だかねえと思わざるを得ません。

中身をちゃんと読んでるのだろうか。
これで「懲戒しろ~!」なんて、少なくともネットに向かって吠えてる人は、橋下さんの懲戒煽りと同じことやってると思いますよ。
ってか、騒ぐんだったら、自分で申し立てればいいじゃん。

まずは最後の「否認している」という部分を見落としているんじゃないでしょうか。
「否認」である以上、現場「ビデオ」はかなり重要な証拠になる場合があります。
じゃあ、これを警察・検察に渡せばいいかというと、弁護戦略上、必ずしもそうとは言えない。
なので、このまま裁判になれば、法廷に提出することもあり得ますというのはそのとおりでしょう。

次は、「被害者」の言葉は「代理人(=弁護士)」を通しての伝聞であるという点です。
「伝聞」供述の信用性が低いというのは刑事訴訟法の基礎中の基礎ではないのでしょうか。
被害者の代理人弁護士が、弁護人の言葉に腹を立てて、大げさに伝えてしまったということもあり得るはずです。

弁護人の立場として、当該映像に被告人にとって有利な部分が含まれている(=「被害者」が嘘を言っている)と考えた場合に、代理人に対して「実は『犯行現場』を撮影したビデオがある。見た限り、『被害者』に不利な映像で、このまま裁判になれば法廷に出す必要がある。ここは穏便に取り下げてもらえないだろうか」と言うくらいのことはあり得ると思うのです。
弁護人が「選択肢の一つとして示した」とコメントしているわけですから、このくらいのニュアンスではないのでしょうか。

というか、弁護人は「告訴を取り下げてくれ」と言っているだけで、「示談金はゼロ」というのは、否認しているから示談金は払えないと言ったものと聞くべきでしょう。

記事の見出しとして「取下強要」というならまだしも、どうしてこれが「示談強要」になるのかもよく分かりません。不正確と思います。

それで、取り下げてもらったら事件として終了するわけですから、基本的には「証拠隠滅」にはならないわけで、逆に、弁護人としては証拠隠滅と言われる危険を冒して、「被害者」のために映像を処分すると言ってるわけじゃないですか。
ここが批判される意味も分かりません。

まあ、一般の方はともかく、弁護士がこの件について弁護人を批判するのであれば「被害者の証言のとおりなら」という一言を付け加えるべきでしょうね。
でないと、一般の方々の誤解を煽り、弁護士の品位を害することになりかねません。