誰もが簡単にできると思っている「ご飯を炊いて、いただく」ということ。私たちの働き方や暮らし方が確実に変わり続けているのですから、炊飯だって昔のままということはありません。あなたの知っているご飯の炊き方、本当に正しいですか? ご飯の世界だって、常にアップデートしているのです。コラム「ライスハッカー」では、あなたの暮らしがちょっと楽しくなる、お米やご飯に関するアレコレをお話ししています。今回のテーマは、お米の選び方のお話。日本全国のおいしい新米が出そろった今だからこそ、お米の選び方や買い方を考えてみましょう。

あなたの知らないお米の世界

あなたはどれくらいお米の種類を知っていますか? まずは、コシヒカリ。誰もが知っている日本を代表するお米ですね。ササニシキ、あきたこまち、ミルキークイーン、つや姫、ななつぼし、ゆめぴりか、ヒノヒカリ、ひとめぼれ。スーパーマーケットでよく見かけるお米は、おそらく、このあたりの品種だと思います。これら以外の品種を答えられたなら、あなたはかなりのお米通ですね。日本のお米の品種は500種類以上。そのうち実際に栽培されている「うるち米」の品種は、およそ270種類程度と言われています。作付面積を比較してみると、コシヒカリが断トツの1位で全体の36%。上位10品種で7割以上を占めています。しかし、近年新しい品種が増えているのも事実。全国で圧倒的な作付面積を誇るコシヒカリをこえようと、日本各地でさまざまな銘柄が次々に生まれています。

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嗜好品としてのお米

「おいしさ」とは相対的なもので、ご飯をいただくシチュエーションで最適なお米も変わるはず。にもかかわらず、普段食べているお米はほんの数種類、もしかしたら1種類だけという人がほとんどではないでしょうか。これではお米に対する味覚は決して敏感にはならず、お米を楽しむ文化は衰退するばかりです。パンの消費額がお米の消費額を超えた現在、お米はすでに主食ではなく嗜好品とも言えるのではないか。自分の好みや料理にあわせてお米を選べば、食事の楽しみはよりいっそう広がります。

とはいえ、スーパーマーケットでお米を選ぼうとしても、米袋に書いてある情報だけでは、なかなか判断がつかないものです。ついつい、知っている銘柄や産地、価格を頼りに選んでしまいがちですね。「特A」ランクとラベルが貼ってあっても、それがあなたの好みのお米とは限りません。今でこそ日本各地でつくられているコシヒカリは、もともとは福井県生まれ。東北や北陸など寒冷な気候に適した品種です。気候や風土、田植えや稲刈りの時期が異なれば、そこで収穫されるお米の品質が違ってくるのは当然のこと。同じ銘柄だからといって同じ味にはならないのです。

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お米屋とコーヒーロースター

お米選びに迷ったときは、お米屋さんに足を運んでみてください。米の専門家であるお米屋さんには、さまざまな銘柄がそろっています。それぞれの銘柄についての情報はもちろん、産地の最新情報、おいしいご飯の炊き方や食べ方など、お米についてありとあらゆる情報を持っていますから、じっくりと相談しながら、自分好みのお米を探すことができます。たとえるなら、コーヒー豆と一緒。コーヒーロースターが、生産者から生豆を仕入れ、その特徴や傾向を理解したうえで、最適な焙煎のコーヒー豆を提供してくれるのと同じように、お米屋さんも産地と私たちの橋渡しをしてくれているコンシェルジュ的な存在なのです。

米選び5つのポイント

では、お米屋さんに行ったら、どんな風に好みを伝えたら良いのでしょうか? コーヒーであれば、「コクのあるもの」「酸味の強いもの」「果実の香りのするもの」などなど、味のイメージを伝える言葉はたくさんあります。しかし、味を表現する言葉が少ないのがお米の欠点。そこで覚えておきたいのは以下の5つのポイントです。

【食感】かんでから歯から離れるときの感覚が、「もっちり」か「あっさり」か。 【歯ごたえ】米粒とかんだ時の歯ごたえが、「しっかり」か「やわらか」か。 【味わい】口に含んだ時の味わいやのどごしが、「あまめ」か「さっぱり」か。 【炊き方】炊飯器、土鍋、羽釜、ホーロー鍋など、どんな鍋で炊くのか。 【食べ方】和洋中、どんな料理と一緒に食べたいのか。

これらの要素を目安に、お米屋さんに話をしてみると、自分の好みが伝えやすくなります。好みを伝えても、あいまいな答えしか返ってこないお米屋さんや、知名度の高いブランド米や価格だけですすめてくるお米屋さんには注意してください。もっと、大ざっぱに言ってしまえば、お米は「もっちりタイプ」「しっかりタイプ」「あっさりタイプ」の3タイプに分けられますから、これを覚えていれば、米選びの大きなヒントになります。もし可能ならば、3タイプの米を少量ずつ買ってみて、その日のメニューにあわせて、米を使い分けてみるのもおすすめです。食べ比べをしていくうちに「この米が好き」という自分なりの基準がわかってくるようになります。

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お米は生鮮食品

ひきたてのコーヒーがおいしいように、お米が一番おいしいのは精米したて。玄米から白米へ精米した瞬間から、お米の鮮度は落ちていきます。できれば2週間、少なくとも1カ月以内で食べきれる分量を少しずつ買い足していくのが、おいしいご飯をいただく秘訣です。お米の天敵は、「高温・多湿・酸素」。これもコーヒーとの共通点です。保存する場合は、できるだけ冷蔵庫に。密閉できるビニール袋に一度に使う量だけ詰めて保管しておくと便利です。お米は乾物ではなく「生鮮食品」と心得ましょう。現代の住まいは気密性がよく、暖房器具の進化もあって圧倒的に暖かくなっています。流し台の下に開封したままの米袋を置いておくのが、最も悪い保存方法です。新米とは、「収穫された年の12月31日までに容器に入れられ、または包装されたお米」のこと。新米だからといって、精米してから時間がたっていれば、残念ながら新鮮なお米とは言い切れません。

ごはん同盟/シライジュンイチ)

「おかわりは世界を救う」という理念のもと、日夜、ご飯をおいしくいただく方法を生み出し、その成果を多くのご飯好きのみなさんと共有するための活動を行います。合言葉は、もちろん「おかわり!」。美味しいごはんをいただくために、西へ東へと飛びまわります。