米Google社では、社員の経費節約の意欲を高めると共に社員自身にも利益をもたらすプログラムが採用されています。

ほとんどの社員は出張となると会社のお金を節約することはそれほど考えない傾向があります。むしろ何でも経費で落としてしまいます。それが社員にとっては気にならないことだからです。だから、ぎりぎりまで出張手配をしないでいるかもしれず、飛行機やホテル等の料金が高くなっているかもしれません。社員に会社のお金を倹約したくなる動機を与えるのは意味のあることです。Google社はずいぶんこれに早く気づき、会社のお金で料金の安いフライトやホテルを予約した社員には報奨金を出すプログラムを制定しました。Google社の社員は、価格のパラメーターが出てくる自社製作のツールを使って出張の予約をします。旅行代理店も使っており、社員専用のクレジットカードも提供していますが、社員には必ずそれらを使う義務があるわけではありません。

Google社の海外出張マネージャーであるMichael Tangney氏は、出張に関するこの新しいコンセプトが生まれた背景にいるひとりです。彼は次のように語っています。

誰でも、さまざまなツールを使って調べてから飛行機を予約します。旅行代理店が提案してきたプランより、自分が調べた条件が優れているとわかれば、自分で直接フライトを予約してしまいます。社員はこれで会社のお金を倹約することになるから、自分は正しいことをしていると思っています。

問題は、これが悪循環を引き起こす点です。社員が自分で予約すればするほど、航空会社や旅行代理店と交わす法人契約の条件は悪化します。それで、社員はますます自分で予約するようになってしまいます。これが続けば、ますます法人契約の条件は悪化し続けるのです。

節約するインセンティブを与える

Tangney氏は、「会社は出張に関するポリシーを書き直して社員にもっと自由を与えるべきである」と主張しています。しかし同時に、社員が経費をどのように使っているか会社として把握しておきたくもあります。そういうときこそ「Rocketrip」のような褒賞システムが役に立つのです。Rocketripは現時点での市場価格データと連動させて、あなたの会社の出張規則に基づいた出張予算を社員に提示します。そして、もし社員がその予算内に出張をおさめられたら、社員はAmazonなど20社以上で使えるギフトカードを褒賞としてもらえるのです。

Rocketrip from Rocketrip on Vimeo.

お金の節約する文化を育てる

RocketripはGoogle社のプログラムに刺激を受け、Tangney氏が戦略アドバイザーとしてその立ち上げに関与しました。

「会社にとっては出張費が削減され、コストを気にする社内文化が生まれるので一石二鳥です」とRocketrip社CEOのDan Rush氏。「そもそも、社員に倹約を奨励するのはとても難しいのです。出張したくてしているわけではなく、家族と数日も離れていなくてはなりません。だから出張社則を都合よく使おうとします。そうしない理由が無いからです。ビジネスクラスで飛ぶことができるのに、わざわざエコノミーを選ぶ人がいるでしょうか?」

Rocketripによると、Glenn Beck氏の経営するTheBlaze社は90日単位でRocketripのプログラムを試してみることにしました。その期間中に、社員は240もの出張を予約し、TheBlaze社は44,769ドルを節約しました。このうちの42%はフライトの倹約から、55%はホテル代の倹約から出てきた数字です。これで年間29%の出張費が節約できるということになります。

会社にデータを残す

しかし、これは節約以上のことにつながるとTangney氏は力説します。Rocketripのような制度を使うよう社員が動機づけられると、会社は社員がどのように出張の予約をしているかもっとよく把握することになるのです。

完全に何をするのも自由となると、やりたいことは何でもやれるということで、可視性が一切無くなります」とTangney氏。「誰かが飛行機のチケットを入手しても、その出張について会社は何の情報も得られないのです。フライトに97ドル使ったことはわかりますが、そのフライトの詳細は一切わかりません」

それなら、社員に倹約を奨励し、同時に、会社のお金がどのように使われているかもモニターするにはどうしたらいいのでしょうか。社員に自分で検索してベストなお買い得プランを見つけるように奨励すること、「自分はこれを選びます。なぜならば、目標額より200ドル安いからで、さらに(自分にとって)○○の価値も得られるからです」と説明させることだというのがTangney氏の見解です。

Rebecca Borison(原文/訳:春野ユリ)

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