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■川上りえ 札幌文化奨励賞受賞記念 Plus1 Group Exhibition (~2013年8月18日、札幌)

2013年08月14日 01時23分45秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 
 川上りえ、千代明、谷口明志、ダム・ダン・ライ、藤本和彦の5人による、グループ「プラスワン(Plus 1)」の展覧会。

 プラスワンはもともと、道展で先鋭的な絵画を出品していた会員によるグループとして発足した。
 その後、メンバーや会場が増えたり、ゲスト作家や評論家を迎えたり、近年はベトナムや韓国にも発表の場を求めるなど、年を追うごとに大がかりかつ活発になってきたという印象があるが、今回は欠席したメンバーがおり、めずらしく5人という少人数の展覧会となった。

 しかし、コンチネンタルギャラリーの会場が手狭に感じられるほど、充実した内容になっていると思う。
 そして、発足当時の「平面のグループ」という属性は、ほとんど跡形もなく、変化したようだ。

 


 川上りえ「Form and Stance」

 ステンレスで輪郭をかたどった大小の台形が、さまざまに組み合わされた立体。
 送電線の鉄塔を思わせる中央の塔は、会場の天井高を計算してぎりぎりの大きさになっており、いつもながらパワフルである。写真ではわかりづらいと思うが。

 周囲の比較的小さな立体は、鑑賞者が自由に配置を変えられるという趣向。こういう、参加型の作品は、川上りえさんがわりとよくつくっている。




 谷口明志「Fun to Paint」。
 空間の中の「線」を純粋に追究してきた谷口さん。
 これまでは黒く細い板を会場に縦横にわせて支持体としてきたが、今回は段ボールが支持体で、それに細いアルミの針金で線をひいている。
 ユニークなのは、段ボールに細い線を描いているのだが、それが、スポットライトによるアルミ線の影と、直ちには区別がつきづらいこと。



 アルミの線と、その影と、段ボールの線。その3種の描線が交じり合い、2次元と3次元が交錯する。
 その意味では、谷口さんらしい作品だと思う。


 

 千代せんだい明「無からの誕生」

 カラフルな立体。
 ただ、これも、発想の源は、絵画の線なのではないか。

 幾何学的な形態は、宇宙とか地球などを聯想させる。





 藤本和彦「端緒・支柱」
 藤本さんは、これまで、知的なひねりをきかせたり、和とは何かという問題意識をひそませた作品を多く手がけてきているが、その流れでいうと、今作はやや難解である。
 鉄のさびが全面を覆っているのを見る限り、時間の経過にともなう変化が、作品テーマのひとつではないかと思われるのだが、どうだろうか。

 この作品も、鉄の板からひょろひょろと床に向かって突き出ている棒が、絵画における線の名残のようでもある。




 ダム・ダン・ライ「The genes of origin」
 ここ数年取り組んでいる、木の枝に青、黄、赤などさまざまな色をつけたインスタレーション。
 今作では長短14本の枝が床に置かれている。

 なお、壁に金属製の四角形が見えるが、今回は、金属彫刻の川上さんに敬意を表して、全員が素材として一部に金属を取り込んでいるのが、ミソだ。




 なお、この十数年の、川上りえさんの展覧会写真が、壁に並べて貼ってあった。
 現在、札幌彫刻の森美術館で継続中のインスタレーションの写真もある。
 また、米国や韓国での展示風景は、見たことのない人が多いだろう。
 あえて年代順に並べず、キャプションもないので、想像力がかえってかきたてられるコーナーといえるかもしれない。


2013年8月9日(金)~18日(日)午前11時~午後7時、月曜休み
コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11 コンチネンタルビル地下)。



・地下鉄東西線西11丁目2番出口から徒歩1分
・市電「中央区役所前」降車すぐ
・じょうてつバス「西11丁目駅前」すぐ


「プラスワン」関係の記事へのリンク
川上りえ●PLUS ONE THIS PLACE(2010年9月)
谷口明志■PLUS ONE THIS PLACE
ダム・ダン・ライ■PLUS ONE THIS PLACE
千代明■PLUS ONE THIS PLACE

PLUS 1 Groove (2009年8月)
PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 千代明 秋山一郎 齋藤周 (2009年8月)
two members of PLUS 1 千代明・坂東宏哉(2008年8月)
PLUS1 groove(07年8月)
グループ・プラスワン展(06年)
5th グループ・プラスワン(04年)

http://riekawakami.net/

 その他のおもな関連記事へのリンク
川上りえ個展 UNLIMITED LIFE ZONE (2013年6月22日~7月7日)
谷口明志・川上りえ Space Abstraction II (2012年)

ダム・ダン・ライ「風と色」 ハルカヤマ藝術要塞

藤本和彦「野槌(のづち)」 ハルカヤマ藝術要塞

千代明「ランドマーク N43°8'.E141°8'」 ハルカヤマ藝術要塞

【告知】タニグチアカシ + フジモトカズヒコ インタープレイ (2011)


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2 コメント

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観ていないこと (怜な)
2013-08-13 22:17:30
こんばんは。

ブログを読ませていただき、いつも、よく観てないことに気づかされます。
>全員が素材として一部に金属を取り込んでいるのが、ミソだ。
そうだったんですね。ただ、作品から圧倒される・・、面白い、楽しいと、見過ごしています。ブログを拝読してから、
良く味わった方がいいですね。
(谷口さんの作品も、いつもと少し違うと思うくらいで、3本の描線が交り合う・・が、線の流れとしか観ていない)
いつもありがとうございます。 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2013-08-13 22:49:14
怜なさん、こんばんは。
これはとくべつに小生の見方が鋭いのではなく、作者に聞いてわかったという部分もあります。
まずはブログなどは「ネタバレ」になるので読まないで出かけて、それからあとで読んだ方がいいのではないかと思います。

ブログの記事は「ネタバレ」になってしまうし、しかし早めにアップしたほうが告知になるし、いつアップするかはけっこう悩ましい問題です。

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